3a. tabinote旅行記 ベトナム旅行5~6日目 【サラバ越南!】
前々々号、前々号、前号に引き続きキムラリュウジさんのベトナム旅行記(5~6日目)を掲載します。
内容は2015年5月の体験にもとづいています。
5日目【今日も元気に(たくさん)飲んでます】
のんびり10時頃に起床。
サクッと筋トレ。腕立て腹筋スクワットを。この旅行中、自重トレだけだが一応コンスタントにトレーニングしている。
洗面所で靴下の洗濯。洗剤を入れ過ぎるとすすぎにやたらと時間がかかる。泡立たないとちゃんと汚れが落ちているのか不安になるので、ついつい洗剤を多めにいれてしまうのだが、泡立たない割には意外とすすぎの時になかなかヌメリが取れない。そんな気がする。
泡立たないように思えるのも、ヌメリが落ちないように思えるのも自分の思い込みなのだろうか。
完全にヌメリが取れた気はしないまま、いつもどっかしらの段階で切り上げる。手洗いの時はいつもそれの繰り返し。固く絞って部屋干しして洗濯完了。洗剤の量とすすぎの回数は死ぬまでに最適解を見出したい永遠のテーマだ。
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11時半を回るあたりでホテルを出る。ホテルの近場のフォー24へ。フォーの有名チェーン店。鶏肉入りのフォー・ガーを注文。ビールは止めておいた。特に理由はない。あっさり味のスープがかなり美味いんだが、もうちょいスープが熱々でもよいかなと思う。まあ、ベトナムは外気が暑いからあんまり熱々のスープが好まれないのかもしれないな、なんて思ったり。
フォーッ!!
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フォーを食べ終え、歩いて戦争証跡博物館へ。ホテルから15分くらいの道のりか。あんまり早歩きで攻めると汗だくになって消耗するのでゆっくりと歩く。途中通りがかった公園では大学生くらいの若者たちが草むらに座って、路上でおばあちゃんが売っている剥きパイナップルやマンゴーをかじっている。のどかな風景だ。
戦争証跡博物館へ着くも、不運なことに12時から中休みに入るらしく残念ながら入場できず。13時半再開とのことで近場のピザハットで時間を潰すことに。大好きな為末大さんの本を再読する。好きな本を繰り返し読むと毎回違った気づきがあるものだ。
それにしても旅行とKindleの相性は抜群だ。数年前であれば、旅行の際にいつも重たい本を何冊も持ち歩かねばならなかったものだが、今はKindle一つで事足りてしまう。好きな本をいつでも選べるし、いいことこの上ない。
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13時半の開場時間に合わせて再度戦争証跡博物館へ。一階から三階へ順に見て行ったが、ここのハイライトは二階だろう。米兵に連行され拷問にかけられるベトナム兵の姿、命を落とす直前のベトナム一般人の写真などが数々展示されている。全ての写真にはベトナム語と英語で解説があり、単語以外は平易な英語で書かれているのでだいたいの大意が読み取れる。英語文が平易かつ簡潔に記されているので、逆にそれが詩的な印象につながり強く胸に響いた。
“その老人は「助けてくれ」と叫んだ。私(カメラマンのこと)がその場を離れてすぐ、ライフルの銃声が視界の端から聞こえた”
朧げな記憶だが、こんな解説文。命を落とす直前のシーンの描写が多かった。
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他にも、枯葉剤の影響で四肢に大きな障害を持って生まれてきた方々の写真も数多く展示されていた。戦争当時の瞬間のダメージだけでなく、後世にまで及ぶ甚大な被害を被った現地の方々の気持ちを慮ると言葉を失った。観覧客の中には多くの西洋人がいたが、彼らもどのような気持ちでこれらの展示を見ていたのだろうか。
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体力を吸い取られたような思いに駆られながら重い足取りでホテルの近くに戻ってきた。
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この辺りには日本人観光客を相手にした土産物屋が多い。そろそろ各所への土産物を物色しておこうか、ということでいくつかのお店をめぐる。
日本人は重要顧客と見なされているのだろう、どこのお店にいっても日本語で親しげに接客してくれる。サービスって意味では確かに助かる部分はあるしありがたいのだが、つまるところ「たくさんたくさん買って行ってね」ってことを過剰に期待されている気がしてすごく居心地が悪い。
そんな逡巡をしながら品選びをしていたら、ツアーの提携立ち寄り場所になっているのだろう、ベトナム人ガイドさんが多くの日本人観光客を連れて入店してきて、「ハイ、ココデハ30分カイモノシマース」とかのたまわっている。ああ、ただでさえ居心地悪いのに混雑の中での買い物になってしまって余計テンションが下がる。
値札を見てみても大勢の客が押し寄せるから自然と強気な値段だ。売り手が優位なこの空間・・・。
お金を払わされている感に抗いたく、値引きの交渉をしてみたが気持ちいいくらいにあっさり断られた。もうええわ、早く欲しいもの買いきっちゃおう。
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荷物を置きがてらホテルへ。疲れがどっと出たのでベッドに寝転び仮眠。
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18時頃に起きだし、夜の活動スタート。今日はレタントン通り方面へ。この辺りは在住外国人が多く集うところで、とりわけ日本人向けの日本食レストランが多い。和食居酒屋、焼肉屋にはじまり、お好み焼き屋、ラーメン屋などバラエティ豊かである。
ベトナムにおける日本食のクオリティ感がどんなもんなのかをリサーチするのも悪くないかなと思いつつも、異国情緒を味わうほうが楽しいかなと思い入店は踏みとどまった。レタントン通りの終わりまで辿り着き、トン・ドゥック・タン通りへ右折。このまま右折右折と繰り返せば元いた場所に戻るだろうと軽い気持ちで歩いていったのだが、トン・ドゥック・タン通りを右折してからがやたらと長い。改めて地図を見なおしてみるとここの区画はきれいな正方形にはなっておらず台形に近い地形になっているのだった。
歩けど歩けど繁華街から離れていく・・・。ここから戻っても先に行っても同じくらいの距離なので覚悟を決めて先を行くことに。
台形の地形をぐるっと回ってようやくレタントン通りに戻ってきた。ほとほと歩き疲れたのでさっき目星をつけていたオープンテラスの居酒屋へ。地元民っぽい人も多いし、他の国籍の人も多く集っており楽しそうだ。
僕の左となりの席はフラン人の老夫婦、右となりの席は韓国人の夫婦だった。
メニューには英語の表記もあるのでありがたいのだが、やはり写真がないとイメージが湧かないものである。単語をネットで調べたりしながら、鍋物があることに気づく。以前から食べたいと思っていたのでこれに照準を絞りつつも、最初から鍋ってのも乙じゃないと思い、最初はBBQを頼むことに。昨日とおんなじじゃねーか。まあいいや。
牛肉とエビをオーダー。それぞれいい感じの味付けがされており、特にエビは炭火の七輪で焼くと香ばしい香り漂わせて食欲をそそる。
サイゴンビアからスタート。ビールは一本100円くらい。牛肉が800円くらい、エビは500円くらいで十数匹盛られている。このリーズナブルさと美味しさを噛みしめていたら嬉しくなってきた。今日はここに腰を据えて飲もう。
店員さんも気さくで居心地が良い。仕事があるときはキビキビ動いているが、一旦落ち着くと客席に座り込んでスマホをいじり始める。客に呼ばれればまたキビキビと動く。勤務中にスマホをいじるっていう光景は日本においてはかなり稀有であるが、これがお国柄なのであろう。ベトナムでは警察官も勤務中にスマホいじりしてたし。
名所旧跡を巡って旅を満喫するのも良いが、個人的にはこうしてできるだけ地元の人の行動に溶けこんで、違和感ありつつも「その場の背景」になれる瞬間が一番好きだ。もちろん、異国人なので違和感なく溶け込むなんてことは難しいが、そのような気持ちになれる瞬間が好き。後で旅を振り返った時に、「ああ、あの居酒屋で何をするでもなくビールを飲みながらボーっとしたなあ」ってのが意外と印象に残っていたりする。ベトナムの滞在時間も後僅か。「いまここにいること」をボーっとしながら噛みしめる。
ボーっとするだけじゃなくてちゃんとビール飲んでます。四本目。フォーッ!!
地元の人たちはこぞって原付きで店にやってくる。ニケツ三ケツあたりまえ。ってか、バイクで来たら帰りはどうするの?なんてことを思ったが、まあ気にしないでおこう。
気がつけばビール7本。結局お腹いっぱいになって鍋には辿りつけなかったけど大いに満喫。ホテルに戻って気絶就寝。
6日目【サラバ越南!】
さて、最終日。
6時半ころ起床し、7時頃ホテルの朝食会場へ。旧館(?)の屋上に位置しており、サイゴン川が見通せて気持ちが良い。せっかくなんで見晴らしの良い席に陣取った、のだが失敗だった。早朝とは言えベトナムは朝から暑い。直射日光をまともに受ける席だったので、瞬く間に汗が噴き出してくる。食べるどころじゃなくなってきたので席を移動。それでも暑いのでささっと片付けて早々に退散することになった。朝からバイン・ベオやフォーを食べられたのでそこそこ満足。
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さて、と。
部屋に戻って…
二度寝…zzzzzz。
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11時頃に起きて、身支度をして12時過ぎにホテルをチェックアウト。ガイドさんが迎えにくるのが21時15分なので、その時間までホテルで荷物を預かってもらうことに。ありがたや。
まずは軽く昼飯食べようかなってことで、三日目に行った中華屋さんを再訪。タイガービアを飲みながら福建炒飯、つまることろあんかけチャーハンをいただく。具沢山であんかけのお味もいい感じ。美味いなー。デザートでココナッツプリンも平らげて店を出る。
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今日のこの後決まっている予定としては、21時15分にホテルに迎えに来てもらい、その足で空港へ。24時15分発の飛行機で日本に帰るというスケジュール。いろいろ歩きまわって汗だくになったとしても日本に帰るまでシャワーを浴びられないので、おとなしくしていることにした。
チェーン店風の喫茶店に入って旅ブログを下書きする。清潔で涼しい店内。電源も所々にあるのでパソコンのバッテリーを気にする必要もない。日本でスタバやドトールにいるのを何ら変わりない環境に、ホーチミンは便利な都市だなあと改めて感じた。
店が面しているドンコイ通りは、外国人観光客を対象にしたマッサージ店の客引きが朝から晩まで絶えない。喫茶店の前を縄張り?に客引きを続けるお姉さんの姿が見える。
結局僕はこのお店に4~5時間いたのだが、途中スコールがあったり、打って変わって強烈な日差しになったりする中、そのお姉さんはずーっと客引きを続けていた。僕がこのお店にいる間、一体何人のお客を捕まえられたのであろうか。おそらくいかがわしい系のマッサージ店ではないのであろう、男性客のみならず女性観光客にも声をかけていたが、そのほとんどが全く相手にもされていない様子だった。日本人、西洋人問わず声をかけているがほとんどの場合詳しい話を聞くまでもなくスルーされている。この過酷な気候の中で立ち仕事、というだけで疲れるであろう。なおかつ声をかけてもかけてもスルーされるようでは気が滅入りそうな仕事だなと思った。と同時に、「何か他に上手い営業の仕方はないものなのか」とか「この人は一日に何人客を引っ張れるのだろう。この人の人件費と売り上げを考えた時にちゃんとペイするのかな」とか余計なことまでいろいろ考えた。
喫茶店の席から客引きのお姉さんがウロウロしている大通りを臨む
だいたいのマッサージ店は「オキャクサン、マッサージイカガデスカ?」と声をかけてくる。日本語を使ってくれるので何を言わんとしているかは伝わるのでその部分としては良いが、どうしても「マッサージイカガデスカ?」攻めに辟易している日本人としては、めんどくさいもの、煩わしいものくらいにしか思えず逆効果のようにも思える。最初の一言二言くらいでもう少し気の利く言葉を言えると、立ち止まるきっかけになるんじゃないかなー、なんて思ったりした。アポ電と同じ考え方。
いくら見てても一向に客が捕まらないので、いっそのこと自分で行ってみようか…とは思わなかったが心の中ではいつしか応援するようになっていた。夕方くらいに一組の西洋人女性二人が彼女に連れられてお店の方に向かっていった時は、何故か安堵感があった。
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18時近くになったので喫茶店の近くのビアホールへ。タイガービアのドラフトを頼む。冷たく冷えていて美味い。ビールを飲みながらもパソコンを開き、再度ブログの下書き。程なくして「Somewhere Over The Rainbow/What A Wonderful World」が流れてくる。店内でギター弾き語り二人による生ライブをやっているようだ。映画「小説家を見つけたら」のエンディングで使われている、イズリアル・カマカヴィヴォオレのカバー。オリジナルがとても好きなのでグッときた。
調子に乗ってタイガービアのドラフトを3杯。酔いが回ってくる。今夜はこのまま日本に帰るのでちゃんと正気を保っておかねば。ってことでチェイサーをがぶ飲み。
ベトナム最後の食事ってことで昼間に行った中華屋へ。結局この旅行中3回も行ってしまった。排骨あんかけかた焼きそばを堪能。何度も来たくなる美味しさ。近所に欲しくなる感じだった。
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21時15分にホテルに着くとガイドさんに声をかけられ、混載車へ。日本人が十数人の乗り合いバス。だいたいが二人以上のグループで、一人旅は僕だけか。まあ、だからなんだってわけでもないのだが。
人は死に向かって生きている、と言うが、旅というものには始まりがあり、一度始まったら後は、終始終わりに向かって時間を過ごしている。いよいよこの旅も「帰路」が始まった。終わりは近い。感慨に浸るまもなく、乗合バスのなかは日本語が飛び交い、さながら日本だ。今回のベトナム旅行で通算18カ国目。これまで訪れた国は、訪れた後に全部好きになった。ベトナムも、例に漏れず好きになった。どんな国でも、行ってみればだいたい好きになる。どんどん好きな国が増えていくのは嬉しい。今年中にあと何ヶ国好きな国を増やせるだろうか。バスの車窓から街のネオンを見ながら思う。
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成田行きの飛行機は24時15分にホーチミンの空港を飛び立ち、定刻通り8時に成田に降り立った。一週間ぶりの日本は暑すぎず寒すぎず過ごしやすそうだ。自分の匂いの染み付いたタオルケットにくるまって寝たら気持ちよさそうな気候。自宅のベッドの寝心地が待ち遠しい。日本のよーく冷えた濃い目のビールを飲みつつ、和食を食べたい。ビールの後には日本酒だ。
好きになった18ヶ国もいいけど、やっぱ何だかんだ言って、日本も全然、大好きだ。