2b. 連載:「旅のしりとりエッセイ」 吉田友和  2015/3/10号 Vol.043


2b.「旅のしりとりエッセイ」 吉田友和

Profile
プロフィール

吉田友和(よしだともかず)

1976年千葉県生まれ。出版社勤務を経て、2002年、初海外旅行にして夫婦で世界一周旅行を敢行。旅の過程を一冊にまとめた『世界一周デート』で、2005年に旅行作家としてデビュー。「週末海外」というライフスタイルを提唱。国内外を旅しながら、執筆活動を続けている。その他、『スマートフォン時代のインテリジェント旅行術』(講談社)、『自分を探さない旅』(平凡社)、『LCCで行く! アジア新自由旅行』(幻冬舎)、『めざせプチ秘境!』(角川書店)、『3日もあれば海外旅行』(光文社)など著書多数。
旅行作家★吉田友和 Official Web

しりとりで旅する 第41回 吉田友和

つ ツアー

 一昨日、台湾の天燈へ参加してきた。元宵節に合わせて開催される伝統行事のひとつで、夜空に向かって一斉に熱気球を放つ。美しい光景には大いに感動したのだが、祭りそのものとは別に気になったことがあった。会場内でやたらと日本人の姿を見かけたのだ。前後左右から日本語が聞こえてきて、ここは日本なのではないかと錯覚したほどである。台湾は元から日本人に人気の旅先ではあるものの、別格というか、ちょっと異常な事態に思えた。
 調べてみると、天燈を観に行くツアーが多数企画されていたことが分かった。大手旅行会社の多くが実施しており、日本からだけでなく台北発着の(日本人向け)現地ツアーも見つかった。以前はそれほど知名度のない祭りだったはずだが、いつの間にかブームになっていたらしい。
 祭りが開かれる平渓までは、ツアーに参加せずとも個人で簡単に訪れることができる。列車があるし、台北市内から会場へ直行する臨時バスも運行している。バスの運賃はたった五十元だ。熱気球の打ち上げ自体も、当日配られる整理券を手に入れれば無料で誰でも参加できる。外国とはいえ、ほぼ日本語オンリーでも何ら問題はない。だから、ぶっちゃけツアーで行くメリットはあまりなく、金額的にもかなり割高なのだが、そういうことを言うときっとまた怒られるのだろうなあ。
 まあでも、こういう目的が明確なツアーはまだいい。人によっては利用価値があるだろうし、むしろ理想形のひとつとさえ言える。
 いい機会なので、ツアーについて僕の考えを少し紹介する。別に個人旅行ばかりを礼讃するわけではないし、ツアーを毛嫌いするわけでもないのだ。これは過去にも何度か書いてきたことだが、問題は内容が漠然としたツアーが多いことである。具体的には、ただ単に安さだけをアピールしたようなツアー。
 旅行会社の宣伝広告を見ると、「ハワイ39,800円!」「香港29,800円!」といった感じで金額がやけに強調されている。肝心の内容には触れず、数字だけがとにかくドカンと大きく掲載されていることも珍しくない。まるでスーパーの特売チラシのようなレイアウトの広告を前にしたら、どうしても値段で選んでしまうのが消費者心理だろう。
 ところが、安いツアーには安い理由がある。罠が潜んでいると言ってもいい。フライト時間が非効率だったり、ホテルが場末だったり、免税店に無理矢理立ち寄らされて時間を無駄に浪費したり。そういうことを承知のうえで割り切って利用するならいいが、期待を裏切られた人は「こんなものかな」と海外旅行の魅力に気がつかずに終わってしまう。よく言われる「海外旅行離れ」の遠因にもなり得る気さえするのだ。ツアーを選ぶ際には、価格にばかり囚われるのは止めた方がいい。
 振り返れば、初めて台湾を訪れたのは、まさにそんなツアーでだった。学生時代の旧友と二人で、安さに目が眩んで参加したのだが、以来その手の格安ツアーは一度も利用したことがない。やはり不満を感じたのだ。身勝手なのかもしれないが、団体行動が苦手だったし、少なからずストレスがたまった。
 自分の好きなように旅を組み立てて、行きたいときに行きたい場所へ行きたい。航空券を手配したり、ホテルをどこにするか選ぶという一連の準備にこそ、旅の醍醐味が詰まっている。ワガママなのだろうか。すべてを自分の思う通りにしたい発想で臨むと、どうしても個人旅行になびいてしまう。
 僕もしばしばツアーも利用する。でも、それは特定のシーンに限定される。個人では行きにくい場所や、時間効率を優先する旅などではツアーの利点が生きてくる。
 たとえば、ある年に年末年始をサハラ砂漠で過ごした際には現地でツアーに参加した。世界中から旅行者が集まるトップシーズンのため、個人ではホテルがまったく取れなかったからだ。いずれにしろ、砂漠のような辺境の地を旅するとなると足の問題も出てくる。レンタカーもアリだが、道に迷うリスクを考慮し、あえてツアーを選んで正解だった。
 ほかにも、南米のウユニ塩湖からアンデス山脈を南下してチリへ抜けるツアーも有意義なものだった。同じルートに公共の交通手段がないため、ツアーしか選択肢がなかったせいもある。険しい高地の旅を共に過ごしたガイドさんやほかのツアー参加者には戦友のような仲間意識を抱き、仲良くなったのはいい思い出だ。旅の行く末がメンツに左右されるのもツアーならではと言えるだろうか。
 実はいま台湾の本を書いていて、ほぼ三ヶ月連続で同地を訪れている。天燈の顛末はそちらで詳しく書くつもりだが、取り急ぎ撮りたてほやほやの写真だけでも本稿でご紹介して今回は締めくくりたい。

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※ツアー→次回は「あ」がつく旅の話です!