3b. 世界一周ノート 青木大地

仕事をやめ、2013年10月から1年間の予定で世界一周の旅に出ました。

Profile
aoki_s

青木大地(あおき・だいち)

1986年生まれ。日本大学 芸術学部 卒業。
卒業後、大手レンタルビデオメーカーに勤務。店舗、営業を経て世界旅行のため退社。
念願のフリーライターとしてとりあえず1年は過ごせそうです。
同名義のFacebookもよければ見てください。

Facebook

第26回:ギリシャ・ブルガリア・ハンガリー

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アテネ港からギリシャに入り、通貨はとうとうユーロに変わった。財政破綻に揺れるギリシャにあっても、その物価の高騰は明らかだった。
西欧文明の一大拠点ギリシャは観光客で賑わい、洒落たカフェが並ぶ一方で、15時にもなれば商店が軒並み店じまいを始めるちょっと異質な国だった。17時にもなれば街はがらんと空洞のようになっていた。
それでも宝くじやビンゴやサッカークジなどを売る店だけは常に人で埋まっていて、ギリシャの抱える業のようなものが垣間見えた。

安価な深夜の列車で僕は巨大な岩の上に建つ教会群メテオラを見るためにアテネを北上した。駅で夜を明かし、バス・タクシー代金をケチって歩いて観光をした。
メテオラの雄大さに感動はしつつ、日本で雑誌を見ながら思い描いた風景とはどこか違うと感じていた。それは、僕の旅がいつしか観光に重点を置かないものへと変容していた証でもあった。
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メテオラは少し寂しく、夕日に染まるその景観を後に僕はギリシャを北上した。再び深夜、列車が着いた先はテッサロニキという街で、僕はそこでそのままブルガリアの首都・ソフィアへと向かう深夜バスに乗り込んだ。
ブルガリアに向かった目的は特になく、単にhostel worldで安ホテルが幾つかあるという情報を得たからだった。
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意外にもヨーグルトの国、ブルガリアはヨーロッパ恐怖症になった僕を癒してくれた。清潔で安いホテル、何を食べてもセットで付く飲むヨーグルト、大盛りの中華屋、これといって面白くもない観光資源、ちょっと安い物価が、僕の緊張を和らげてくれた。
旅人が東欧諸国を好きになる理由が判った。それはアジアを巡る旅人が口を揃えてラオスが好きだという理由と同じだった。
のんびりと旅の疲れを癒す場所、何もせずに日々が過ぎることに窮屈にならないこと、物価が安いこと。これらは旅人の心を惹き付けて、その場所が理想的だという錯覚を抱かせてしまう。東欧にはそんな魅力があった。

ブルガリアでの沈没をなんとか回避し、僕はハンガリー・ブタペストへの深夜バスに乗った。ブダペストもまた、安ホテルが充実していた。ヨーロッパの安ホテルではキッチンが基本的に使えて、パスタやお米を持ち歩いて自炊する日々が続いた。
IMG_0262

トマトソース缶に野菜を1つだけ買って入れる質素なパスタが僕の定番になっていたけれど、西欧人がパスタにケチャップを直接かけて食べているのを見た時はさすがに日本人の食に対する感覚の豊かさに感謝した。
ブダペストは温泉が有名で、僕も例に漏れず出かけた。中心から少し離れた安いローカルの温泉だったけれど、久しぶりの大浴場はトルコでの垢擦りの不完全燃焼を払拭させてくれるほど快適だった。
市場では名物のフォアグラを買ってきて、ステーキにして食べた。夜景を見に散歩に出て、「川・橋・城」というヨーロッパの基本構造を眺めると、誰とも感情を共感し得ないことを後悔した。美しい景色ほど、より孤独を際立たせた。
IMG_0261

それでも貪欲に観光を続ける僕はここで手詰まりになってしまった。予定していたポーランド・クラクフへの足が見つからなかった。バスは向こう1週間満席、列車は高過ぎて手が出なかった。
アウシュビッツを諦めるなんて考えられない、そう思った僕はアジアで培った勘(人が居て、動く限り何かしら道があって交通機関がある)を頼りに賭けに出てみた。
ルートはブダペストからポプラド(スロバキアの田舎)を経由してザコパネ(ポーランドの避暑地)を抜けてクラクフに入るものだった。電車とバスを乗り継ぐことになり、時刻表の情報もどこにもなかった。それでも僕はブダペストからの列車のチケットを買っていた。ポプラドへのチケットは比較的安価で余っていた。
果たしてヨーロッパはアジアのようには行かないのか、行き当たりばったりに胸を躍らせつつ、僕は列車に乗った。

次回はポーランド・弾丸東欧周遊・そしてイタリアへ、を記します。


世界一周ノート
とりあえずの予定コース:上海→杭州→南寧→ハノイ→ホーチミン→シェムリアプ→チェンマイ→ルアンパバーン→バンコク→パンガン島→ペナン島→マラッカ→スマトラ島→ジャワ島→マニラ→シンガポール→ジョホールバル→シドニー→チェンナイ→ムンバイ→アグラ→デリー→バラナシ→ブッダガヤ→コルカタ→ダージリン→ポカラ→ルンビニ→ガヤ→カトマンズ→ポカラ→トルコ→ギリシャ→ブルガリア・・・以降ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、南米と巡る予定

3b. 世界一周ノート 第26回:ギリシャ・ブルガリア・ハンガリー


3b. 世界一周ノート 青木大地

仕事をやめ、2013年10月から1年間の予定で世界一周の旅に出ました。

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aoki_s

青木大地(あおき・だいち)

1986年生まれ。日本大学 芸術学部 卒業。
卒業後、大手レンタルビデオメーカーに勤務。店舗、営業を経て世界旅行のため退社。
念願のフリーライターとしてとりあえず1年は過ごせそうです。
同名義のFacebookもよければ見てください。

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第26回:ギリシャ・ブルガリア・ハンガリー

IMG_0269

アテネ港からギリシャに入り、通貨はとうとうユーロに変わった。財政破綻に揺れるギリシャにあっても、その物価の高騰は明らかだった。
西欧文明の一大拠点ギリシャは観光客で賑わい、洒落たカフェが並ぶ一方で、15時にもなれば商店が軒並み店じまいを始めるちょっと異質な国だった。17時にもなれば街はがらんと空洞のようになっていた。
それでも宝くじやビンゴやサッカークジなどを売る店だけは常に人で埋まっていて、ギリシャの抱える業のようなものが垣間見えた。

安価な深夜の列車で僕は巨大な岩の上に建つ教会群メテオラを見るためにアテネを北上した。駅で夜を明かし、バス・タクシー代金をケチって歩いて観光をした。
メテオラの雄大さに感動はしつつ、日本で雑誌を見ながら思い描いた風景とはどこか違うと感じていた。それは、僕の旅がいつしか観光に重点を置かないものへと変容していた証でもあった。
IMG_0266

メテオラは少し寂しく、夕日に染まるその景観を後に僕はギリシャを北上した。再び深夜、列車が着いた先はテッサロニキという街で、僕はそこでそのままブルガリアの首都・ソフィアへと向かう深夜バスに乗り込んだ。
ブルガリアに向かった目的は特になく、単にhostel worldで安ホテルが幾つかあるという情報を得たからだった。
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意外にもヨーグルトの国、ブルガリアはヨーロッパ恐怖症になった僕を癒してくれた。清潔で安いホテル、何を食べてもセットで付く飲むヨーグルト、大盛りの中華屋、これといって面白くもない観光資源、ちょっと安い物価が、僕の緊張を和らげてくれた。
旅人が東欧諸国を好きになる理由が判った。それはアジアを巡る旅人が口を揃えてラオスが好きだという理由と同じだった。
のんびりと旅の疲れを癒す場所、何もせずに日々が過ぎることに窮屈にならないこと、物価が安いこと。これらは旅人の心を惹き付けて、その場所が理想的だという錯覚を抱かせてしまう。東欧にはそんな魅力があった。

ブルガリアでの沈没をなんとか回避し、僕はハンガリー・ブタペストへの深夜バスに乗った。ブダペストもまた、安ホテルが充実していた。ヨーロッパの安ホテルではキッチンが基本的に使えて、パスタやお米を持ち歩いて自炊する日々が続いた。
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トマトソース缶に野菜を1つだけ買って入れる質素なパスタが僕の定番になっていたけれど、西欧人がパスタにケチャップを直接かけて食べているのを見た時はさすがに日本人の食に対する感覚の豊かさに感謝した。
ブダペストは温泉が有名で、僕も例に漏れず出かけた。中心から少し離れた安いローカルの温泉だったけれど、久しぶりの大浴場はトルコでの垢擦りの不完全燃焼を払拭させてくれるほど快適だった。
市場では名物のフォアグラを買ってきて、ステーキにして食べた。夜景を見に散歩に出て、「川・橋・城」というヨーロッパの基本構造を眺めると、誰とも感情を共感し得ないことを後悔した。美しい景色ほど、より孤独を際立たせた。
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それでも貪欲に観光を続ける僕はここで手詰まりになってしまった。予定していたポーランド・クラクフへの足が見つからなかった。バスは向こう1週間満席、列車は高過ぎて手が出なかった。
アウシュビッツを諦めるなんて考えられない、そう思った僕はアジアで培った勘(人が居て、動く限り何かしら道があって交通機関がある)を頼りに賭けに出てみた。
ルートはブダペストからポプラド(スロバキアの田舎)を経由してザコパネ(ポーランドの避暑地)を抜けてクラクフに入るものだった。電車とバスを乗り継ぐことになり、時刻表の情報もどこにもなかった。それでも僕はブダペストからの列車のチケットを買っていた。ポプラドへのチケットは比較的安価で余っていた。
果たしてヨーロッパはアジアのようには行かないのか、行き当たりばったりに胸を躍らせつつ、僕は列車に乗った。

次回はポーランド・弾丸東欧周遊・そしてイタリアへ、を記します。


世界一周ノート
とりあえずの予定コース:上海→杭州→南寧→ハノイ→ホーチミン→シェムリアプ→チェンマイ→ルアンパバーン→バンコク→パンガン島→ペナン島→マラッカ→スマトラ島→ジャワ島→マニラ→シンガポール→ジョホールバル→シドニー→チェンナイ→ムンバイ→アグラ→デリー→バラナシ→ブッダガヤ→コルカタ→ダージリン→ポカラ→ルンビニ→ガヤ→カトマンズ→ポカラ→トルコ→ギリシャ→ブルガリア・・・以降ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、南米と巡る予定