3b. 世界一周ノート 青木大地

仕事をやめ、2013年10月から1年間の予定で世界一周の旅に出ました。

Profile
aoki_s

青木大地(あおき・だいち)

1986年生まれ。日本大学 芸術学部 卒業。
卒業後、大手レンタルビデオメーカーに勤務。店舗、営業を経て世界旅行のため退社。
念願のフリーライターとしてとりあえず1年は過ごせそうです。
同名義のFacebookもよければ見てください。

Facebook

第15回:マニラ・デング熱

(編集部注:第8回バンコク第9回シドニーの間をつなぐ、シドニー移動前のエピソードです)
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野宿が続き過ぎていた。ジャワ島では駅のホームで3泊、スラバヤの路上で1泊。体も疲れていたせいか、少し虫除けを怠ってしまっていた。

バリのデンパサールからフィリピンのマニラへ。空港を出て、ショッピングセンターの前では拳銃を所持したガードマンが立ち、都市を循環するモノレールは通勤ラッシュで満員、廃れかけたインフラの上を人々が忙しく動き回っていた。
1泊800円の安宿で腰をおろして、さて街へと繰り出そうとすると、異変が起きた。体が信じられないくらいだるかった。
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僕は旅の疲れと、治安が悪いという固定観念からくる精神的疲労だと勘違いして、無理矢理散歩に出た。
マニラの人々はそこかしこでバスケットボールに夢中になり、露店ではレプリカのユニフォームや偽物のシューズが安価で並んでいた。しかもその質は非常に高く、本物と遜色ない商品がたくさんあった。
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フィリピン人に倣ってファーストフードを食べてホテルへ帰ると、僕は倒れこむようにしてベッドに横になった。風邪薬を飲んで目を閉じて、明日の朝には良くなるだろうと、そんな期待を抱いていた。
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眼球の激しい痛みと、吐き気で僕は目覚めた。冷や汗でシャツは濡れ、起き上がることすらできなかった。しばらくして眼球の痛みは頭痛だとわかった。頭痛が眼球にまで響いていた。僕はとにかく風邪ではないその症状に危機感を覚え、ホテルのフロントに駆け込んだ。

一番安いSIMカードをそこで購入し、ベトナムで買った1800円の携帯に急いで突っ込んで、僕は保険会社へと電話をかけた。電話はすぐに繋がって、中心部の病院での診察の予約をとることができた。オペレーターは日本語対応で、親切に対応してくれたけれど、何度も確認で折り返しの電話を待ったこと、予約が2時間後だったことがその時は地獄の苦しみのように思えた。
流しのタクシーを捕まえて、相場500円の距離をしっかりと1000円払わされた僕は、値段交渉も意識朦朧とし、とにかく連れていってくれるならと目を閉じた。
病院に着いて外国人専用の窓口を訪れると、既に僕の情報が伝達されていて、担当の日本人の方が通訳となって、すぐに緊急処置場へと運んでくれた。
40度の高熱の中、血液検査を経て、点滴を受けながら待つこと1時間、主治医が僕に「デング熱、B型」と悲しそうな顔で告げた。
アジアを巡る旅人から幾度も聞いていた恐怖の病、デング熱。遂に僕もその餌食になってしまった。

デング熱に関するQ&A / 厚生労働省(2014年1月10日作成)より。

デング熱とは、どのような病気ですか?
答  デングウイルスが感染しておこる急性の熱性感染症で、発熱、頭痛、筋肉痛や皮膚の発疹などが主な症状です。

日本国内での発生はありますか?
答  日本国内で感染した症例は、過去60 年以上報告されていません。ただし、海外の流行地で感染し帰国した症例が近年では毎年200 名前後報告されています。

どのような症状が出ますか?
答 突然の高熱で発症し、頭痛、眼(か)痛、顔面紅潮、結膜充血を伴い、発熱は2~7日間持続します(二峰性であることが多い)。初期症状に続き、全身の筋肉痛、骨関節痛、全身倦怠感を呈します。発症後3~4日後、胸部、体幹から始まる発疹が出現し、四肢、顔面に広がります。症状は1週間程度で回復します。
なお、ごくまれに一部の患者において、発熱2~7日後、血漿漏出と出血傾向を主な症状とする重篤な致死的病態が出現することがあります。

デング熱 / Wikipediaより。
一過性の熱性疾患であり、症状には、発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛(Arthralgia)、はしかの症状に似た特徴的な皮膚発疹を含む。治療方法は対症療法が主体で、急性デング熱にはいま起きている症状を軽減するための支持療法 (supportive therapy, supportive care)が用いられ、軽度または中等度であれば、経口もしくは点滴による水分補給、より重度の場合は、点滴静脈注射や輸血といった治療が用いられる。稀ではあるが、生命を脅かすデング出血熱に発展し、出血、血小板の減少、または血漿(けっしょう)漏出を引き起こしたり、デングショック症候群に発展して出血性ショックを引き起こすこともある。

通訳の方が、「あなたの保険はスイートが使えます」と言って、僕は薄れ行く意識の中でエレベーターが高層階に辿り着くのを感じた。

次回はデング熱、闘病と旅行保険を使っての感想を記します。


世界一周ノート
とりあえずの予定コース:上海→杭州→南寧→ベトナム→ハノイ→ホーチミン→カンボジア→チェンマイ→ラオス→バンコク→パンガン島→ペナン島→マラッカ→スマトラ島→ジャワ島→マニラ・・・シドニー…、以降インド、トルコ、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、南米と巡る予定

3b. 世界一周ノート 第15回:マニラ・デング熱-1


3b. 世界一周ノート 青木大地

仕事をやめ、2013年10月から1年間の予定で世界一周の旅に出ました。

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青木大地(あおき・だいち)

1986年生まれ。日本大学 芸術学部 卒業。
卒業後、大手レンタルビデオメーカーに勤務。店舗、営業を経て世界旅行のため退社。
念願のフリーライターとしてとりあえず1年は過ごせそうです。
同名義のFacebookもよければ見てください。

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第15回:マニラ・デング熱

(編集部注:第8回バンコク第9回シドニーの間をつなぐ、シドニー移動前のエピソードです)
photo3

野宿が続き過ぎていた。ジャワ島では駅のホームで3泊、スラバヤの路上で1泊。体も疲れていたせいか、少し虫除けを怠ってしまっていた。

バリのデンパサールからフィリピンのマニラへ。空港を出て、ショッピングセンターの前では拳銃を所持したガードマンが立ち、都市を循環するモノレールは通勤ラッシュで満員、廃れかけたインフラの上を人々が忙しく動き回っていた。
1泊800円の安宿で腰をおろして、さて街へと繰り出そうとすると、異変が起きた。体が信じられないくらいだるかった。
photo2

僕は旅の疲れと、治安が悪いという固定観念からくる精神的疲労だと勘違いして、無理矢理散歩に出た。
マニラの人々はそこかしこでバスケットボールに夢中になり、露店ではレプリカのユニフォームや偽物のシューズが安価で並んでいた。しかもその質は非常に高く、本物と遜色ない商品がたくさんあった。
photo1

フィリピン人に倣ってファーストフードを食べてホテルへ帰ると、僕は倒れこむようにしてベッドに横になった。風邪薬を飲んで目を閉じて、明日の朝には良くなるだろうと、そんな期待を抱いていた。
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眼球の激しい痛みと、吐き気で僕は目覚めた。冷や汗でシャツは濡れ、起き上がることすらできなかった。しばらくして眼球の痛みは頭痛だとわかった。頭痛が眼球にまで響いていた。僕はとにかく風邪ではないその症状に危機感を覚え、ホテルのフロントに駆け込んだ。

一番安いSIMカードをそこで購入し、ベトナムで買った1800円の携帯に急いで突っ込んで、僕は保険会社へと電話をかけた。電話はすぐに繋がって、中心部の病院での診察の予約をとることができた。オペレーターは日本語対応で、親切に対応してくれたけれど、何度も確認で折り返しの電話を待ったこと、予約が2時間後だったことがその時は地獄の苦しみのように思えた。
流しのタクシーを捕まえて、相場500円の距離をしっかりと1000円払わされた僕は、値段交渉も意識朦朧とし、とにかく連れていってくれるならと目を閉じた。
病院に着いて外国人専用の窓口を訪れると、既に僕の情報が伝達されていて、担当の日本人の方が通訳となって、すぐに緊急処置場へと運んでくれた。
40度の高熱の中、血液検査を経て、点滴を受けながら待つこと1時間、主治医が僕に「デング熱、B型」と悲しそうな顔で告げた。
アジアを巡る旅人から幾度も聞いていた恐怖の病、デング熱。遂に僕もその餌食になってしまった。

デング熱に関するQ&A / 厚生労働省(2014年1月10日作成)より。

デング熱とは、どのような病気ですか?
答  デングウイルスが感染しておこる急性の熱性感染症で、発熱、頭痛、筋肉痛や皮膚の発疹などが主な症状です。

日本国内での発生はありますか?
答  日本国内で感染した症例は、過去60 年以上報告されていません。ただし、海外の流行地で感染し帰国した症例が近年では毎年200 名前後報告されています。

どのような症状が出ますか?
答 突然の高熱で発症し、頭痛、眼(か)痛、顔面紅潮、結膜充血を伴い、発熱は2~7日間持続します(二峰性であることが多い)。初期症状に続き、全身の筋肉痛、骨関節痛、全身倦怠感を呈します。発症後3~4日後、胸部、体幹から始まる発疹が出現し、四肢、顔面に広がります。症状は1週間程度で回復します。
なお、ごくまれに一部の患者において、発熱2~7日後、血漿漏出と出血傾向を主な症状とする重篤な致死的病態が出現することがあります。

デング熱 / Wikipediaより。
一過性の熱性疾患であり、症状には、発熱、頭痛、筋肉痛、関節痛(Arthralgia)、はしかの症状に似た特徴的な皮膚発疹を含む。治療方法は対症療法が主体で、急性デング熱にはいま起きている症状を軽減するための支持療法 (supportive therapy, supportive care)が用いられ、軽度または中等度であれば、経口もしくは点滴による水分補給、より重度の場合は、点滴静脈注射や輸血といった治療が用いられる。稀ではあるが、生命を脅かすデング出血熱に発展し、出血、血小板の減少、または血漿(けっしょう)漏出を引き起こしたり、デングショック症候群に発展して出血性ショックを引き起こすこともある。

通訳の方が、「あなたの保険はスイートが使えます」と言って、僕は薄れ行く意識の中でエレベーターが高層階に辿り着くのを感じた。

次回はデング熱、闘病と旅行保険を使っての感想を記します。


世界一周ノート
とりあえずの予定コース:上海→杭州→南寧→ベトナム→ハノイ→ホーチミン→カンボジア→チェンマイ→ラオス→バンコク→パンガン島→ペナン島→マラッカ→スマトラ島→ジャワ島→マニラ・・・シドニー…、以降インド、トルコ、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、南米と巡る予定