3a. tabinote旅行記 バリ島とジャカルタで音楽三昧

どうも、大久保潤です。インドネシア旅行記の続きです

心身ともにゆるくなったままジャカルタへ移動。ジャカルタは渋滞で悪名高いわけですが、やはりぼくらも途中でつかまりました。空港から市街までスムーズに行けばタクシーで30分くらいなんだけど、2時間はかかった感じ。前日までとのギャップがすごくて、なんだか一気に現実に引き戻された気分です。

ジャカルタにはスラバヤ通りという骨董通りみたいなストリートがあります。とにかくひたすら古道具屋が並んでるの。民芸品みたいなのが多いのかなと思ってたのですが、むしろ全体に西洋風アンティークみたいなのが中心。蓄音機なんかも売ってたりしてちょっと欲しくなった。

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なんでこの通りに来たかというと、ジャカルタで唯一アナログレコードを売っている店があるのがここだと聞いていたからです。たしかにこんな感じで数軒アナログレコードの専門店が。

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とはいえここ何年かのいわゆる辺境音楽発掘ブームのため、レコードの値段も高騰中。いろいろ面白そうなレコードはあったんだけど、結局買ったのは1枚だけ。だって新品の新譜CDが300円くらいなのに、中古レコードは1500円とか言われるんですよ(まあそこも交渉でもっと安くできたのかもしれないが……)。

まあそれよりもジャカルタに来た最大の目的は別にありまして。ジャカルタを代表するパンクバンドで「マージナル」というのがいるんです。彼等のことを知ったのは昨年のこと。彼らのドキュメンタリー映画を作っている中西あゆみさんという方が一時帰国して、制作中の映画の上映会を行ったのを観に行きました。これが実に心に突き刺さる作品だったんです(都築響一さんのメルマガ「Roadsiders Weekly」でも紹介されましたね)。

インドネシアは現在高度成長期といっていい状況で経済的にものすごく発展している一方で、そこから取り残された人たちとの格差がものすごいことになってるのですが、マージナルは「タリンバビ」(「豚の牙」の意)という住居兼コミューンで親のない子供たちの面倒を見ています。学校にも行けないような子供にウクレレを与えて自分たちの曲を教え、バスや路上で演奏して自分たちでお金を稼げるようにしたりしている姿をとらえた映像と、メンバーたちの魅力あふれる姿、熱い演奏シーン、もうパンクの神髄を見た思いがしました。
ヴォーカルのマイクもその際には来日してQ&Aとミニライブをやったので、終了後に挨拶して再会を誓いまして、実際に訪れることにしたわけです。
なのですが、数日前からメールしたり電話したりしても全然反応なし。住所はわかってたのでともかく行ってみることにしました。ちょっと郊外にあるのだけど、タクシーの運ちゃんに住所を見せたところ、「そのへんは洪水の被害にあってるから行けないんじゃないかな」とか言うんですよ。たしかにバリで見かけた新聞に、ジャカルタで洪水があって死者まで出ているなんて見出しが出てはいたんだけど、やはり深刻な事態なのかしら……。
でもここで帰ったら何しにジャカルタまで来たのかわからないので、運ちゃんに「We can swim!」と力強く宣言してとにかく行けるところまで行ってもらうことに。
近所の人に道を聞いたりしながらかなり近くまで来たところで、運ちゃんが「その路地の先だよ」と言っています。見ると、細い横道があって、そこに一歩入るといきなり膝まで水に浸かってるの。

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うわー、こういうことか、と思いつつ、意を決してザブザブと入っていきます。道端で座ってるおっちゃんに前方を指さしながら「タリンバビ?」と聞くと、「イエス、ワンサウザンドメーター」とのお答え。い、1キロ? さすがにこのまま水の中を1キロ歩くのはキツいぞ。ていうかそもそもこの道1キロも延びてるの?とパニックになりかけてたら、前のほうを歩いている女の子二人連れが「タリンバビに行くの? わたしたちも行くところだから一緒に行こう」と言ってくれました。地獄に仏みたいな気持でついていったら30メートルくらいで到着。あのワンサウザンドメーターは何だったんだろう……。

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結局メールも届いてなかったみたいで完全に不意の訪問になってしまったのですが幸いマイクは在宅中で、とてもあたたかく迎えてくれました。室内も浸水してるので洪水の被害は大丈夫かと聞くと、「このへんは雨季になると必ずこんな感じだから慣れっこだよ。洪水が来ると近所で声をかけあって荷物を二階に上げるんだ」てな感じで元気そのもの。貧しい地区を完全に見捨てて治水工事を施そうとする気配も見せない行政への憤りは見せつつも、地域と密接に結びついて逞しく生きているようでした。

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1時間以上、いろんな話を聞かせてもらいましたが、それはまた別なところでじっくり書く予定。とにかく自分のパンク魂を強く揺さぶられる旅になりました。今後の自分の生き方にもかかわる経験になったと言ってもいいと思います。CRASSのアナーコパンク精神がここに生きているのを目の当たりにした思いです。

3a. tabinote旅行記 バリ島とジャカルタで音楽三昧 その2


3a. tabinote旅行記 バリ島とジャカルタで音楽三昧

どうも、大久保潤です。インドネシア旅行記の続きです

心身ともにゆるくなったままジャカルタへ移動。ジャカルタは渋滞で悪名高いわけですが、やはりぼくらも途中でつかまりました。空港から市街までスムーズに行けばタクシーで30分くらいなんだけど、2時間はかかった感じ。前日までとのギャップがすごくて、なんだか一気に現実に引き戻された気分です。

ジャカルタにはスラバヤ通りという骨董通りみたいなストリートがあります。とにかくひたすら古道具屋が並んでるの。民芸品みたいなのが多いのかなと思ってたのですが、むしろ全体に西洋風アンティークみたいなのが中心。蓄音機なんかも売ってたりしてちょっと欲しくなった。

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なんでこの通りに来たかというと、ジャカルタで唯一アナログレコードを売っている店があるのがここだと聞いていたからです。たしかにこんな感じで数軒アナログレコードの専門店が。

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とはいえここ何年かのいわゆる辺境音楽発掘ブームのため、レコードの値段も高騰中。いろいろ面白そうなレコードはあったんだけど、結局買ったのは1枚だけ。だって新品の新譜CDが300円くらいなのに、中古レコードは1500円とか言われるんですよ(まあそこも交渉でもっと安くできたのかもしれないが……)。

まあそれよりもジャカルタに来た最大の目的は別にありまして。ジャカルタを代表するパンクバンドで「マージナル」というのがいるんです。彼等のことを知ったのは昨年のこと。彼らのドキュメンタリー映画を作っている中西あゆみさんという方が一時帰国して、制作中の映画の上映会を行ったのを観に行きました。これが実に心に突き刺さる作品だったんです(都築響一さんのメルマガ「Roadsiders Weekly」でも紹介されましたね)。

インドネシアは現在高度成長期といっていい状況で経済的にものすごく発展している一方で、そこから取り残された人たちとの格差がものすごいことになってるのですが、マージナルは「タリンバビ」(「豚の牙」の意)という住居兼コミューンで親のない子供たちの面倒を見ています。学校にも行けないような子供にウクレレを与えて自分たちの曲を教え、バスや路上で演奏して自分たちでお金を稼げるようにしたりしている姿をとらえた映像と、メンバーたちの魅力あふれる姿、熱い演奏シーン、もうパンクの神髄を見た思いがしました。
ヴォーカルのマイクもその際には来日してQ&Aとミニライブをやったので、終了後に挨拶して再会を誓いまして、実際に訪れることにしたわけです。
なのですが、数日前からメールしたり電話したりしても全然反応なし。住所はわかってたのでともかく行ってみることにしました。ちょっと郊外にあるのだけど、タクシーの運ちゃんに住所を見せたところ、「そのへんは洪水の被害にあってるから行けないんじゃないかな」とか言うんですよ。たしかにバリで見かけた新聞に、ジャカルタで洪水があって死者まで出ているなんて見出しが出てはいたんだけど、やはり深刻な事態なのかしら……。
でもここで帰ったら何しにジャカルタまで来たのかわからないので、運ちゃんに「We can swim!」と力強く宣言してとにかく行けるところまで行ってもらうことに。
近所の人に道を聞いたりしながらかなり近くまで来たところで、運ちゃんが「その路地の先だよ」と言っています。見ると、細い横道があって、そこに一歩入るといきなり膝まで水に浸かってるの。

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うわー、こういうことか、と思いつつ、意を決してザブザブと入っていきます。道端で座ってるおっちゃんに前方を指さしながら「タリンバビ?」と聞くと、「イエス、ワンサウザンドメーター」とのお答え。い、1キロ? さすがにこのまま水の中を1キロ歩くのはキツいぞ。ていうかそもそもこの道1キロも延びてるの?とパニックになりかけてたら、前のほうを歩いている女の子二人連れが「タリンバビに行くの? わたしたちも行くところだから一緒に行こう」と言ってくれました。地獄に仏みたいな気持でついていったら30メートルくらいで到着。あのワンサウザンドメーターは何だったんだろう……。

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結局メールも届いてなかったみたいで完全に不意の訪問になってしまったのですが幸いマイクは在宅中で、とてもあたたかく迎えてくれました。室内も浸水してるので洪水の被害は大丈夫かと聞くと、「このへんは雨季になると必ずこんな感じだから慣れっこだよ。洪水が来ると近所で声をかけあって荷物を二階に上げるんだ」てな感じで元気そのもの。貧しい地区を完全に見捨てて治水工事を施そうとする気配も見せない行政への憤りは見せつつも、地域と密接に結びついて逞しく生きているようでした。

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1時間以上、いろんな話を聞かせてもらいましたが、それはまた別なところでじっくり書く予定。とにかく自分のパンク魂を強く揺さぶられる旅になりました。今後の自分の生き方にもかかわる経験になったと言ってもいいと思います。CRASSのアナーコパンク精神がここに生きているのを目の当たりにした思いです。