3b. 世界一周ノート 青木大地

仕事をやめ、2013年10月から1年間の予定で世界一周の旅に出ました。

Profile
aoki_s

青木大地(あおき・だいち)

1986年生まれ。日本大学 芸術学部 卒業。
卒業後、大手レンタルビデオメーカーに勤務。店舗、営業を経て世界旅行のため退社。
念願のフリーライターとしてとりあえず1年は過ごせそうです。
同名義のFacebookもよければ見てください。

Facebook

第2回:上海-杭州-南寧

上海

添乗員の指導する中国春秋航空体操で、LCCで凝り固まった体を解しながら、僕は小窓の外を眺めていた。厚いガスで覆われた靄のその先に、赤茶けた、暗い上海の海が波打っていた。その異様な光景は、終わることのない発展を掲げる中国の不可抗力を、諦めるかのように存在していた。
※編集部注:春秋航空体操→YouTube

上海ではホテルのスタッフ、ルームメイトに恵まれ、食事や列車のチケット購入等、すごく親切にしてもらった。そのうちどこかで、と考えていた趣味のバスケットボールもルームメイトに誘われてすることができた。その反面、その先の杭州や南寧ではこれといった出会いはなかった。出会いということに関しては大部分が運に左右されることがわかった。情報という観点からも、集められる時に集められるだけ集めておいた方が得策だと、気付かされた。

上海では3泊、ガイドブック通りの観光をし、杭州に移動した。杭州は世界遺産・西湖があり、上海からは毎時以上の本数で新幹線や列車が出ている。1時間程の道のりは快適で、1000円強。チケットは100円程の手数料を出せば上海市内のどの駅でも買うことができた。杭州は西湖を中心にした観光地で、少し物価も高く、長居するには決して居心地が良いとは思えなかった。訪れた目的は南寧への中継で、南寧はベトナムへ陸路で抜けるバスの発着地点で、パッカーや労働者たちの起点となる中都市だった。
杭州駅では筆談でチケットを購入。3500円で25時間、憧れの硬座(普通の硬く狭い座席)を手に入れることができた。チケットは前日で問題なく購入できた。
西湖

我慢こそが美徳のように描かれる旅行記の世界で、「硬座」という言葉は僕にとっていつしか憧れになっていた。身動きがとれない、眠れない、進まない、そして押し寄せる人、人、人。列車がホームに入ってきて、想像通りのヴィジュアルに胸が高鳴った。
そして、やっぱり硬座は素晴らしかった。よく食べる中国人に物売り、突然の停車に喧嘩。座席を持たず、たむろする人たち。この世界はやっぱり実在したんだと、口内炎を何度も噛み潰しながら僕は笑った。

車内

上海では観光客に声をかけてくるお茶会詐欺に引っ掛かりそうになったり、しつこい風俗の勧誘にあったりもした。南寧では道を聞こうとした女性に走って逃げられたりもした。クラクションは鳴りやまず、そこかしこで痰を吐き、喧嘩をする。地下鉄では信号無視やポイ捨て、マナーを促す液晶広告が流れ、何の意味も成していなかった。
それでも僕は構わない。一緒になって信号無視をしたし、お茶会詐欺からは走って逃げた。マスクも付けずに濁った空を毎日見上げた。
僕をしつこく風俗に誘った日本語堪能の劉さんに、反日感情について質問すると、「政治のことはわからない」とすぐに風俗に話題を変えられてしまった。
まあでも、結局そういうことなのかもしれないと、僕は思った。

次回はベトナム、カンボジアへの移動を記します。

——————
・中国では規制されたFacebook等のサイトをWebFreerというソフトウェアを使って皆、閲覧していました。
・杭州-南寧への移動はバスの方が安価で早いと他の旅行者から聞きました。
・杭州-南寧への列車は厳密には杭州東駅を経由するので、杭州駅からは地下鉄やバスで30分程の移動が必要です。
・南寧では、ネットで紹介されている好評価の LOTUSLAND HOSTELは廃業していました。
・ホテルはWi-Fi環境を優先し、1泊800円が相場のユースホステルに宿泊しました。


今回のルート
とりあえずの予定コース:上海→杭州→南寧→ベトナム・ハノイ(以降、東南アジアを周遊の後にインド、トルコ、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、南米と巡る予定)

3b. 世界一周ノート 第2回


3b. 世界一周ノート 青木大地

仕事をやめ、2013年10月から1年間の予定で世界一周の旅に出ました。

Profile
aoki_s

青木大地(あおき・だいち)

1986年生まれ。日本大学 芸術学部 卒業。
卒業後、大手レンタルビデオメーカーに勤務。店舗、営業を経て世界旅行のため退社。
念願のフリーライターとしてとりあえず1年は過ごせそうです。
同名義のFacebookもよければ見てください。

Facebook

第2回:上海-杭州-南寧

上海

添乗員の指導する中国春秋航空体操で、LCCで凝り固まった体を解しながら、僕は小窓の外を眺めていた。厚いガスで覆われた靄のその先に、赤茶けた、暗い上海の海が波打っていた。その異様な光景は、終わることのない発展を掲げる中国の不可抗力を、諦めるかのように存在していた。
※編集部注:春秋航空体操→YouTube

上海ではホテルのスタッフ、ルームメイトに恵まれ、食事や列車のチケット購入等、すごく親切にしてもらった。そのうちどこかで、と考えていた趣味のバスケットボールもルームメイトに誘われてすることができた。その反面、その先の杭州や南寧ではこれといった出会いはなかった。出会いということに関しては大部分が運に左右されることがわかった。情報という観点からも、集められる時に集められるだけ集めておいた方が得策だと、気付かされた。

上海では3泊、ガイドブック通りの観光をし、杭州に移動した。杭州は世界遺産・西湖があり、上海からは毎時以上の本数で新幹線や列車が出ている。1時間程の道のりは快適で、1000円強。チケットは100円程の手数料を出せば上海市内のどの駅でも買うことができた。杭州は西湖を中心にした観光地で、少し物価も高く、長居するには決して居心地が良いとは思えなかった。訪れた目的は南寧への中継で、南寧はベトナムへ陸路で抜けるバスの発着地点で、パッカーや労働者たちの起点となる中都市だった。
杭州駅では筆談でチケットを購入。3500円で25時間、憧れの硬座(普通の硬く狭い座席)を手に入れることができた。チケットは前日で問題なく購入できた。
西湖

我慢こそが美徳のように描かれる旅行記の世界で、「硬座」という言葉は僕にとっていつしか憧れになっていた。身動きがとれない、眠れない、進まない、そして押し寄せる人、人、人。列車がホームに入ってきて、想像通りのヴィジュアルに胸が高鳴った。
そして、やっぱり硬座は素晴らしかった。よく食べる中国人に物売り、突然の停車に喧嘩。座席を持たず、たむろする人たち。この世界はやっぱり実在したんだと、口内炎を何度も噛み潰しながら僕は笑った。

車内

上海では観光客に声をかけてくるお茶会詐欺に引っ掛かりそうになったり、しつこい風俗の勧誘にあったりもした。南寧では道を聞こうとした女性に走って逃げられたりもした。クラクションは鳴りやまず、そこかしこで痰を吐き、喧嘩をする。地下鉄では信号無視やポイ捨て、マナーを促す液晶広告が流れ、何の意味も成していなかった。
それでも僕は構わない。一緒になって信号無視をしたし、お茶会詐欺からは走って逃げた。マスクも付けずに濁った空を毎日見上げた。
僕をしつこく風俗に誘った日本語堪能の劉さんに、反日感情について質問すると、「政治のことはわからない」とすぐに風俗に話題を変えられてしまった。
まあでも、結局そういうことなのかもしれないと、僕は思った。

次回はベトナム、カンボジアへの移動を記します。

——————
・中国では規制されたFacebook等のサイトをWebFreerというソフトウェアを使って皆、閲覧していました。
・杭州-南寧への移動はバスの方が安価で早いと他の旅行者から聞きました。
・杭州-南寧への列車は厳密には杭州東駅を経由するので、杭州駅からは地下鉄やバスで30分程の移動が必要です。
・南寧では、ネットで紹介されている好評価の LOTUSLAND HOSTELは廃業していました。
・ホテルはWi-Fi環境を優先し、1泊800円が相場のユースホステルに宿泊しました。


今回のルート
とりあえずの予定コース:上海→杭州→南寧→ベトナム・ハノイ(以降、東南アジアを周遊の後にインド、トルコ、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、南米と巡る予定)