カテゴリー別アーカイブ: 2014/12/16号 Vol.037

tabinoteメールマガジン 2014/12/16号 Vol.037 無料版

Contents

1. 旅行業界最新ニュース
2a. 連載:「タビノート」 下川裕治
2b. 連載:「旅のしりとりエッセイ」 吉田友和
3a. tabinote旅行記 エアアジアXで行く! キナバル山日帰り登頂-その3
3b. 世界一周ノート 第22回:インド ジャイプール~ジョードプル~ファテープル・シークリー
4. 世界あの街この街:モスクワ
5. 旅の本屋 のまど イベント情報:12月17日(水)口尾麻美さん スライド&トークイベント
6. 編集後記


1. 旅行業界最新ニュース

スカイマーク、ANA、JALと共同運行

朝日新聞電子版の記事によると、経営危機が伝えられるスカイマークが今春よりJAL、ANAの両社と共同運行を行なうとのこと。このニュースでスカイマークの株はストップ高を付けた。

JAL、マイル特典に映画チケットを追加

JALとイオンエンターテイメントは、JMB(JALマイレージバンク)で貯めたマイルを映画チケットに交換する「JALシネマ特典」を12月5日より開始した。交換レートは10,000マイルで映画鑑賞チケット(ポップコーン付き)8枚。有効期間は発行日より6ヶ月。映画のチケットを1800円とすると、10,000マイルで15,000円、1マイル1.5円なので、通常のクーポン交換(1.2円くらいが多い)よりは多少お得といえる。もちろん航空券に交換した方がお得ではあるが。

ピーチ、決済にYahoo!ウォレットを導入

ピーチ・アビエーションは12月15日、航空券購入の決済にヤフーが提供するオンライン決済サービス「Yahoo!ウォレット」を導入したと発表した。一度登録しておけば、Yahoo!IDでログインするだけでクレジットカード番号の入力を行わなくても決済が可能になる。単に便利になるだけではなく、1秒を争うキャンペーンチケット争奪戦の時などは強力な武器になるかもしれない。また、導入開始を記念し、最大10,000円相当の「ピーチポイント」が当たるキャンペーンも行われている。

ANA、2015年夏にも成田発シンガポール・バンコク便を増便

ANAは、2015年夏をめどに成田-シンガポール、成田-バンコク便を現在の1日1便から2便に増便すると発表した。どちらもJVを展開するユナイテッド航空のアメリカ便と連絡、乗り継ぎが可能となっており、成田空港のハブ機能が強化された形だ。機材はいずれもB787-8が予定されている。

増便分のタイムテーブル

成田-シンガポール線
NH845 17:00 成田 > 23:15 シンガポール
NH846 00:35 シンガポール > 8:45 成田

成田-バンコク線
NH807 16:55 成田 → 21:35 バンコク
NH808 00:30 バンコク → 8:40 成田

ANA、国際線のエコノミークラスで預け荷物を2個に

ANAは、1月8日発券分より、国際線のエコノミークラスで、受託手荷物の個数を従来の1個から2個に増やすことを発表した。また、日欧路線でANAとJVを展開する。ルフトハンザ航空、オーストリア航空、スイス インターナショナル エアラインズも同日、同様に変更する。

エミレーツ航空、機内で無料Wi-Fiサービスを開始

エミレーツ航空は12月11日、機内Wi-Fiサービスの利用・導入状況を発表した。現在51機のエアバスA380において無料(10MBまで)のWi-Fiサービスを提供しており、将来的には所持する全機材でWi-Fiサービスを目指すとしている。10MBはちょっと少ないですが、無料というのはすばらしいですね。

エアバスA380は存続するのか?

ボーイングのB787、エアバスのA350WXBなど、低燃費で長距離を運行できる中型機が人気を集めているが、エアバスのフラッグシップモデルである全席2階建ての超大型機A380が2018年にも製造中止になるのではないかという報道が注目を集めた。これを受けてエミレーツ航空のティム・クラーク社長は、エンジンをより燃費のいいものに載せ替えたA380neoが開発されれば140機を発注すると発言、これが奏功したかどうかはわからないが、その後エアバスは製造中止を公式に否定した。

羽田空港にキャセイパシフィックがラウンジをオープン

キャセイパシフィック航空は12月9日、羽田空港国際線ターミナル内に、同空港初の海外航空会社ラウンジとなる「キャセイパシフィック・ラウンジ」をオープンさせた。同社にとって拠点の香港国際空港以外の自社ラウンジとしては最大の大きさを誇り、ビジネスクラス・ファーストクラスの乗客が搭乗前に利用できる。

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2a. 連載:「タビノート」 下川裕治

月に何回か飛行機に乗る。最近はLCCの割合が増えている。そんな体験をメールマガジンの形でお届けする。

Profile
shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。

たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

いちばん大切なのは社員、二番目が乗客

 今年最後の原稿という連絡を受け、1年の間に乗ったLCCを指折り数えてみた。
 国内ではジェットスター、バニラ、ピーチ、スカイマーク。海外では、エアアジア(マレーシア、タイ、インドネシア)、香港エクスプレス、タイガーエアウエイズ、ノックエアー、ベトジェット、ライオンエアー、スクート。
 数え漏れはないと思う。乗った回数でいえば、国内ではジェットスター、海外ではエアアジアになるだろうか。それぞれ10回近く乗っている。


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2b.「旅のしりとりエッセイ」 吉田友和

Profile
プロフィール

吉田友和(よしだともかず)

1976年千葉県生まれ。出版社勤務を経て、2002年、初海外旅行にして夫婦で世界一周旅行を敢行。旅の過程を一冊にまとめた『世界一周デート』で、2005年に旅行作家としてデビュー。「週末海外」というライフスタイルを提唱。国内外を旅しながら、執筆活動を続けている。その他、『スマートフォン時代のインテリジェント旅行術』(講談社)、『自分を探さない旅』(平凡社)、『LCCで行く! アジア新自由旅行』(幻冬舎)、『めざせプチ秘境!』(角川書店)、『3日もあれば海外旅行』(光文社)など著書多数。
旅行作家★吉田友和 Official Web

しりとりで旅する 第36回 吉田友和

た 立ち寄り湯

 駅の改札を出ると、街路樹がイルミネーションで彩られ、そのすぐ前にある花屋の店頭はポインセチアの赤色で埋め尽くされていた。そのまま近くの喫茶店に入り、いまこれを書いている。今日は12月11日。あっという間に2015年になってしまいそうで焦る。
 先週は沖縄へ行ってきた。引き籠もって原稿を書き上げようと意気込んでいたのだが、パソコンのACアダプタを持っていくのを忘れるという大失態を犯し、ならば仕方ないと結局飲んだくれているだけで終わった。来週は台湾で、さらに年末年始はベトナムへの渡航が控えている。いずれも南国ばかり。冬の日本の寒さから逃避するように、つい南へ、南へと足が向く。寒いのは大の苦手だ。


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3a. tabinote旅行記 エアアジアXで行く! キナバル山日帰り登頂-その3

 
tabinoteワタベです。今年6月のキナバル山登山、数回に渡ってレポートします。今回は3回目です。

二日目:前夜

前号まではこちらをご覧下さい。
 その1:上陸編
 その2:徘徊編

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(画像:tabinote)


さて、登山前日の夜、計画通りパッキングをはじめる。

準備1:スケジュール

私には圧倒的に山登りの経験が不足してはいたが、わざわざボルネオくんだりまで行って失敗しました、では悲しすぎる。経験の少なさをカバーすべく、渡航前に具体的な行動計画を練っておいた。

登山口が標高1,866m。規定ではここを午前7時半に出て、13時までに山頂4,095mに達する必要がある。
余裕を持って、山頂正午着、所要4時間半を目標とした。
登山道の距離は8.7km、標高差は2,229m。そうすると水平移動距離は8,410mとなる。
8.4km移動して2.2km登るので、勾配は2.2÷8.4で26%。
勾配26%はあまくない。スポーツサイクルなら前輪が浮くほどの超激坂。
(ちなみに、富士山の御殿場ルートが22%)
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(画像:tabinote)

登山本に載っていた公式により山歩きの標準的なタイムを算定したところ、今回の標準的なタイムは休憩なしで9時間半とわかった。
目標は4時間半なので、ほぼ一般登山者の倍のペースで進まなければならない。また、標高3,000mを越えた後半はかなりペースダウンすることが考えられるので、前半はよりとばす必要がある。
とはいえ、制限時間から逆算しおおむね1km25分のペースでいけばいいと判断。

準備2:食料と水

補給計画も立てた。
登頂の往路を長めにみて5時間とし、30分に一度給水(100cc)、1時間に1度食事(100~150kcal)と想定した。復路はやはり安全を見て3時間程度、給水と補給タイミングは同様。
となると、水が最低1.6リットル、800~1200kcal程度の食料が要る。ポカリスウェットの500mlボトル3本で水分はOK。カロリーはポカリで300kcalはとれるので、残り500~900kcal。スナック1袋でOKだろう。
ポカリの粉末と柿の種を日本から持参していたので、夕食をとった後、食堂内の売店でプリングルズを買っておいた。ついでに明日の朝食も準備(世界攻略者さんの旅行記で、朝は食堂が開いていないことを知っていたため)。

準備3:荷物

荷物は日帰りなのと、体力への不安から軽さ重視。
20リットルの軽いリュックに、水を1.8リットル(600mlボトル3本;すべてに顆粒のポカリを溶かす)、食料(柿の種小分け6P)、雨具、傘、長袖シャツ、着替えのTシャツ、ヘッドライト、ヘッドライトの予備電池、コンパクトカメラ、スマホ、スマホの予備バッテリー。
追加の着替えとかいろいろ迷ったけどやめた。

これだけ入れてもまだザックはスカスカで、重さも3~4kgくらいか。これなら快適に動けるはず。
私の行動食はもっぱら柿の種。小分けで量を調節しやすいし、よくある輸入エナジーバーのように甘くて胃もたれすることもなく、軽くてカロリーも十分。しかも柿の種は意外に外国人に人気(特にインド系)だったりしてチップ代わりにもなり、いいことずくめ。課題は水が欲しくなることくらいだが、今回は途中のラバン・ラタ小屋で補給できるので問題ないと判断。

準備4:服装

服装も機動性重視で、ランニング用のショートパンツにTシャツ、化繊の山用ジャンパー、足下はローカットのトレイルラン用シューズ。
キナバル頂上付近は強風が吹いた場合に体感気温が氷点下になることもあるとのことだが、登りは汗だくで動き続けている間は寒くないはず。長袖を着て雨具を羽織ればなんとかなると判断。

さて、好天を願って就寝。空を見ると、わずかに星が出ている。この天気が続いてくれればいいが…。


三日目:登山開始

午前6時起床、朝食代わりの柿の種とプリングルズを食べる。
外はいつ降ってもおかしくないような曇り空。

しつこいが今日のスケジュール・制限時間は次の通り。
登山口のティンポポンゲート(Timpohon;標高1,866m)を7時~7時半にスタート。
時間制限は2箇所で、最初がロッジのラバン・ラタ小屋(Laban Rata;3,273m)に午前10時、次に最高地点のロウズ・ピーク(Low’s Peak;4,095m)が13時。更に、出発地点のティンポポンゲートゲートまで16:30戻り。したがって登頂までの制限時間は5時間半、13時に下山した場合下りの制限時間が3時間半。

宿に荷物を預け(5リンギット)、チェックアウト。
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(画像:tabinote)

午前7時少し前にキナバル公園の登山受付ゲートへ。
登山許可証を提出し、まずはガイド代以外の費用を先払いする。
ガイド代は最後にガイドに直接払うらしい。
あー、これは最後にガイドがうんとチップをせびってくるパターンだなと軽く不安に。
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(画像:tabinote)

費用精算後にガイドと対面。小柄だが精悍な顔つきの男だった。同じ年か少し若いくらい。
靴紐を結んでいると、背の高い白人に「その靴で行くのか?」と声をかけられる。

そうですが、何か…。
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(画像:tabinote)

許可を受けた登山者であることを示すタグを首から提げて、登山口行きの車に乗り込む。私とガイドが乗ったとたんいきなり出発。
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(画像:tabinote)

車内でガイドに、他の日帰り登山者もいるよねと聞いたところ、数組いるはずだがまだ受付をしてないとのこと。
なんにせよ、遅刻組に引きずられず先に行ってくれるならラッキーだ。あの白人は後から来るのか。
しばらくクルマが走って、登山口のティンポポンゲートへ。ここからは許可された登山者でなければ進めない。ガイドが手続きをしつつ、売店で自分の食事(UFOみたいなかたちのでかいパン)を買っている。
ビールをみつけてテンションが上がる。
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(画像:tabinote)

さて、チェックが終わってゲートをくぐった。いよいよ登山開始。


登山道はしっかりしており足下も険しくない。周囲は木が生い茂り、ときおり小粒の雨が顔に当たる。
すぐに小さな滝にぶつかるが、その後は特にめぼしいものも無く、アップダウンありながらも単調な道のりが続く。
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(画像:tabinote)

林道の様子や植物など、いちいち写真を撮りたいなと思うが、時間重視なのでどんどん進む。
頂上まではおよそ1kmごとに休憩ができる小屋的なものがあるが、日帰り登山者は時間が無いのでゆっくりできない。
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(画像:Sutera Sanctuary Lodges)

1km地点、Kandis Shelterへ。ここではじめて水を飲む。
ここまで20分程度だというのに、私は既に汗だく。ジャンパーを脱いだ。
ガイドの息もだいぶ乱れている。
彼によると、少しオーバーペースとのこと。

これ以上落としても制限時間間に合うか?と聞いたところ大丈夫という回答だったので、水を一口含んで再度出発。
先ほどよりややペースを落とす。
というか、だんだん勾配がきつくなり、ペースを落とさざるを得なくなってくる。

さて、歩いていても他の登山者と全くすれちがわない。
キナバル登山はラバン・ラタ宿泊が前提なので、この時間は皆ご来光を見てはるか上方、下山している最中なのだろう。

キナバルはほとんどアップダウンなしの登り一辺倒。
1.5km地点のUdoh Shelterを越えて更に登る。
まだ周囲は木が生い茂りどの程度登ったか高度感がない。

前日の雨で道が悪く、赤土や岩場の箇所をそろそろと抜けるためペースが乱れる。
ただし、全般には整備された登山道という感じで、手を使うような急な坂はない。
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(画像:tabinote)

むしろきついのは階段!
山登りをする方ならご存じでしょうが、山の階段・石段は段の高さが不規則で急角度で建物の階段以上に辛い。
予想外の階段の多さ。えんえんと段が続く箇所はかなり体力を消耗させる。途中で止まると動けなくなるかもと思いひたすら登った。

せっせと登り続けておおよそ全工程の8.7kmのおよそ半分となるLayang Layang小屋付近に到着。
これまでの休憩所の中ではかなり整備されている。
ここで初めて5分程度の休憩をとる。
ろくに休まずひたすら登り山道でなかなか疲れたが、まだ足には余裕がある。
心臓も、のぼりで多少バクバクいうけどまだまだ大丈夫。
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(画像:tabinote)

さて、再び黙々とマシーンのように登る。
4.5km地点。
ここは標高2,898m。登山口からおよそ1,000m上がったことになる。
木々の向こうに頂上の岩肌が見えるようになり、曇りながらも明るくなってきて視界が晴れてきた。
ただし空はまだ霧と雲に覆われている。
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このあたりから下山者やポーターとすれ違うようになってきた。
ほとんどの下山者はかなり疲労している様子。一歩一歩トレッキングポールに体をもたれるような感じで道をふさぐのでややペースが乱れる。
驚くのはポーター。昔上野あたりにいた担ぎ屋のおばちゃんくらいに巨大な荷を背負っている人もいる。登山者のポーターでは無くおそらく山小屋に水や食料を運ぶポーターなんだろうけど、荷の量がすごい。

さらに登って5km地点。標高3,001m。
私が3,000m以上の地点に来たのはこれが始めて。そしてゴールまであと3,700m。
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(画像:tabinote)

ここまで休憩時もほとんど口をきかなかったガイドが言った。
いいペースだ。お前なら制限時間までに登頂できると思う。天候が崩れないうちに頂上を目指そう」

まだまだ余力もある。
頭もクリアで、高山病の気配もない。
いけそうだ。

ところがもちろん、そんなにスムーズにはいかなかったのです…。
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(画像:tabinote)

(続く)

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3b. 世界一周ノート 青木大地

仕事をやめ、2013年10月から1年間の予定で世界一周の旅に出ました。

Profile
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青木大地(あおき・だいち)

1986年生まれ。日本大学 芸術学部 卒業。
卒業後、大手レンタルビデオメーカーに勤務。店舗、営業を経て世界旅行のため退社。
念願のフリーライターとしてとりあえず1年は過ごせそうです。
同名義のFacebookもよければ見てください。

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第22回:インド ジャイプール~ジョードプル~ファテープル・シークリー

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息が切れて、後ろを振り返ると誰も追って来なかった。ムンバイの大通りにはリキシャが列をなして僕を誘っていた。

西インド、ジャイプール・ジョードプルを目指して僕はムンバイの大きな駅を巡っていた。チケットがなかった。駅の外国人専用窓口で聞いても、ローカルの長い列に並んでも効率良く移動できる列車がなかった。「あそこの駅に行ってみたら?」と根拠のないたらい回しにあって、よく言えばインドを信じていたからできたことだけれど、僕は色々な駅の窓口へと顔を出した。
その時の移動手段も列車で、常に超満員の中で市内を移動していた。運賃は16円だったけれど、誰も切符を持っている人はいなかったし(突然線路から飛び乗ってくる乗客もいた)、僕も無賃乗車をしていた。

ようやく納得のできるルートが組み上がってジャイプール行きのチケットが買え、ホテルの最寄り駅に着いた時だった。初老の駅員が僕を見つけると駆け寄ってきて、「チケットは?」と言った。
僕は何故か「誰も買ってないチケットを、どうして買わなければならないのか!そして何故外国人の僕を狙ったかのように声をかけてきたのか!」と言って逆ギレした。今思うと恥ずかしいことだけれど、インドに居るという緊張感が僕の良識とか、金銭感覚を麻痺させていたのかもしれない。罰金は600円程度とのことで、僕は駅の事務所へと連行された。
事務所に足を踏み入れた瞬間、僕はとっさに駅員を振り切って走って逃げた。
この旅で走って逃げるのは2回目だった。最初は上海でお茶会詐欺から逃げた、そして今回はキセルの取り締まりから。
大通りのリキシャの誘いを断って、僕は泣いた。前日は失禁し、今日は法を犯して逃げた。何て情けないことをしているんだろう。こんなことをするために僕は旅行をしているんじゃない、と泣いた。この日は母親の誕生日で、とんでもない親不孝者だと自分を呪った。

西インドの砂漠は美しかった。ピンクの街ジャイプール、青の街ジョードプルでの観光は比較的清潔な安ホテルにも恵まれて楽しむことができた。いい加減な人々も、親切な人々も、迷い込んだスラムも、強烈過ぎる印象を残して記憶の奥底に沈んで行った。
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目を覚ますとアグラに列車は到着していた。楽しみにしていたタージ・マハルは、それまでのインドがそれを上回って美しさ以外の感情を生むことはなかった。
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不安定だったWiFi環境も安定して、少し足を伸ばしてファテープル・シークリーという古都の遺跡群を訪れたりもした。
バナナを20分くらい値切ったり、完全ローカルの屋台に挑戦したり、変なお土産屋に連行されたり、駅前でたむろするタクシードライバーにタバコをせがまれたり、そのお礼に携帯でエロ動画を見せられたり。僕はまた少しインドに順応できてきている気がしていた。行列に並んで列車のチケットを買うことにも慣れた。
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そして首都ニューデリーの喧噪の中で、そろそろ罪を流す頃合いかなと、濁った夜空を見上げた。
罪深く怠惰に生きてきた罪を、そして失禁を、キセルを、ガンジス川で洗い流すそうと決めた。

次回は今度こそガンジス川沐浴とバングラッシーを記します。


世界一周ノート
とりあえずの予定コース:上海→杭州→南寧→ベトナム→ハノイ→ホーチミン→カンボジア→チェンマイ→ラオス→バンコク→パンガン島→ペナン島→マラッカ→スマトラ島→ジャワ島→マニラ→シンガポール→ジョホールバル→シドニー→チェンナイ→ムンバイ→ジャイプール→ジョードプル→アグラ→ニューデリー・・・。以降トルコ、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、南米と巡る予定

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4.世界あの街この街

このコーナーでは旅行先として人気の様々な都市を詳しく紹介していきます。

第36回 モスクワ

聖ワシリイ大聖堂の写真
聖ワシリイ大聖堂 (トリップアドバイザー提供)

ロシア連邦・国旗

(画像:Wikipedia)


見どころと特徴

クレムリン、赤の広場、聖ワシリイ教会など壮大で豪華な史跡が数多く存在し、他の欧州の大都市とはひと味違った独特の雰囲気が人気。
美術館のように美しいというメトロやグム百貨店も評価が高い。社会主義的な史跡やアートに興味があれば、クレムリンの武器庫やレーニン廟、KGB博物館、そしてセブン・シスターズと呼ばれる高層建築を巡ってみるのもいいかも。

モスクワ市の面積は994km2と広大。東京都(23区の面積は621m2)と地図を重ねてみると、モスクワ市の市境となる大環状道路は東京外環自動車道の更に外側に位置している。クレムリンを中心に環状道路が囲み、放射状に道路が郊外に延びている構造となっている。
ただし観光客にとっての見どころは中心部に集中しており、メトロが張り巡らされているので移動は便利。
モスクワGoogle-マップ
(画像:Google、編集:tabinote)


街歩きは、クレムリンを中心に考えると迷いにくい。
まずは、クレムリンを背にして北東から。このエリアはモスクワで最も古い街区で、古い建物や城壁跡が残っている。放射状に伸びるミャスニースカヤ通り(肉屋通りの意味)およびマシ・ポリヴァエヴォイ通り目印にすると迷いにくい。旧KGB本部やモスクワ中央郵便局、工業技術博物館などいかにもロシア的な、重厚でクラシックな建物が並ぶ。
通りを北東に進むとサンクトペテルブルクに向かうレニングラード駅、その前にそびえ建つヒルトン・モスクワはセブン・シスターズ(※)と呼ばれたスターリン時代の7大高層建築の1つ。近くの運輸機関建設省(鉄道省)も同じくセブン・シスターズの1つ。
※社会主義の優位性を示すべく表現された重厚で権威的な建築様式。


ヒルトン モスクワ レニングラードスカヤ (トリップアドバイザー提供)

続いて市の北西部、クレムリンとベラルーシ駅とをつなぐモスクワ一の目抜き通り、トゥヴェルスカヤ通り(レニングラード通り)へ。街路沿いはレストランやブランドショップ、劇場、コンサートホール、博物館などが建ち並び、いつも大勢の人と車でにぎわう。ボリショイ劇場はクレムリンのちょうど真北あたり。
赤の広場を背に北西、リッツカールトンから歩き始めればモスクワ芸術座、エルモーロワ劇場など風格ある建物が並んでいる。芸術座の付近はレストラン街となっており、英語メニューも多いので安心。エリセーフスキーは帝政時代からの有名な食料品店で、華麗な内装が有名。エリセーフスキーの北にはプシーキン広場があり、ここのマクドナルドはロシア第1号店。

Yeliseev’s Food Hall (Yeliseevskiy Gastronom) (トリップアドバイザー提供)

北西部から逆時計回りに南下し市の西部へ。
プシーキン広場から環状路の美しいノヴィンスキー並木通りを西に向かう。この通りとその内側(クレムリン側)には小さな博物館が多い。ゴーリキーの家博物館、トルストイの家博物館、チェーホフの家博物館、さらにはマトリョーシカ博物館など硬軟問わず多くのミュージアムがある。
なお、すぐ近くにゴーリキー博物館、トルストイ博物館というものが別にあるのでファンの方は要注意。
ノヴィンスキー通りの外側、ひときわ高い尖塔はセブン・シスターズの文化人アパート。

アルバート通り (トリップアドバイザー提供)

そして市の南西部へ移動。ノヴィンスキー並木通りは、セブン・シスターズの一角である外務省を過ぎるとスモレンスキー通りと名を変える。この通りの内側はやはり博物館や美術館、レストランの建ち並ぶ人気のエリアで、モスクワのサン・ジェルマンと呼ばれる。このエリアのシンボルは救世主キリスト聖堂。街歩きも楽しいが、ここではせっかくなので世界に誇るモスクワの美術館を見学したい。ロシア美術の殿堂トレチャコフ美術館、ルノアールやモネなど印象派の世界的コレクションで知られるプシーキン記念美術館はこのあたり。

トレチャコフ美術館 (クリムスキー・ヴァル) (トリップアドバイザー提供)

更に南西に向かうと雀が丘と呼ばれる高台の地域になっており、展望台から市街を見渡すことが出来る。結婚式の名所としても有名。巨大な尖塔を持つモスクワ大学もこのエリア。モスクワ大学はセブン・シスターズでも最大の規模で、尖塔の高さは236mに達する。

Lomonosov Moscow State University (MGU) (トリップアドバイザー提供)

そしていよいよ中心の中の中心、クレムリンと赤の広場へ。

モスクワのクレムリン (トリップアドバイザー提供)
クレムリンは城壁で囲まれた部分だけでも面積26万平方メートル(東京ドーム5個分以上)という広大さ。宮殿、尖塔などの史跡から大統領官邸までが集まるロシアのへそ。中心部のウスペンスキー大聖堂は壮麗なフレスコ画で有名。武器庫やダイヤモンド庫といった見どころも。
赤の広場は、それを取り囲むクレムリン、レーニン廟、歴史博物館、聖ワシリイ、グム百貨店といったロシアを代表する美しい建物に囲まれている。広場の中心でのんびりと歴史を想像したい。

赤の広場 (トリップアドバイザー提供)


グム百貨店 (トリップアドバイザー提供)


郊外観光では壮麗な聖セルギエフ大修道院が有名なセルギエフ・ポサードに立ち寄りたい。市中心から北東に70kmほどで、日帰りツアーでも行くことができる。
北東方面は黄金の環と呼ばれる歴史ある街が点在し、中でもウラジミールやスズダリは世界遺産が多く残ることから観光客も多い。

セルギエフパサド (トリップアドバイザー提供)

モダンなロシアに興味があるなら、市中心から東に30kmほどのシチョルコヴォへ。ここはロシアの宇宙開発拠点で、遠心加速器に乗ってロケットの加速度(G)体験が出来る。また、近くのモニノにはロシア最大の航空博物館、モニノ空軍博物館がある。

シチョルコヴォ (Veltra提供)

【ロシア】個人旅行の強い味方、空港送迎から日本語ガイドまで VELTRA / Alan1.netにおまかせ!


Hachapuriの写真
Hachapuri (トリップアドバイザー提供)

ロシアは土地が広大であり、食文化も多様。
有名なボルシチはウクライナの郷土料理が発祥。ビーフストロガノフやコトレータ(カツレツ)は西欧の影響が強い。餃子そっくりなペリメニや肉の串焼きなどはアジアや中東と共通性がある。
モスクワの属する西側地方では貴族的な文化が発達し、近代にフランスやオーストリアの出稼ぎコックを招き入れてきた経緯からフランス料理の影響を残した豪華な食文化が残っている。コース料理の配膳方法は、寒冷地で料理を温かいうちに個別に出すというロシアでの影響がフランスに逆輸入され、世界に広まったもの。

ロシア料理全般では、寒冷地であり保存食を多用することや、煮込み・スープ料理の豊富さに特徴がある。味付けは塩やサワークリームの風味をいかしたシンプルなもの。ビーツ、ライ麦、サワークリーム、様々な香草などは多くの皿に顔を出す食材。

ロシアを代表する飲み物は紅茶と度数の高い蒸留酒であるウォッカ。日本ではジャムを入れるとされているロシアンティーだが、現地ではジャムはお茶請けに供するものであり混ぜて飲むわけではない。実際にはコーヒーやワイン、ビールといった醸造酒も多く飲まれている。

Turandotの写真
Turandot (トリップアドバイザー提供)


日本からの行き方

(空路)
モスクワの空港は3つだが、日本からの国際便があるのは2つ、ドモジェドヴォ国際空港とシェレメチェボ国際空港。

モスクワへの直行便は日本航空の成田-ドモジェドヴォ便が週4日(月水金日)。ロシアのS7航空とのコードシェアとなっている。
ロシアのフラッグ・キャリアであるアエロフロートが成田-シェレメチェボ便を毎日運行している。
アエロフロートはモスクワを経由してロンドン、パリなどのヨーロッパ主要都市を結んでおり、高確率で欧州行きの最安値をたたき出すことで一部に有名。

また、夏期のみ(13年は5/25~9/29)トランスアエロ航空が成田-ドモジェドヴォ便を就航している。週1~2便程度。

欧州の都市を経由する場合は無数に選択肢があるが、費用的・所要時間的にモスクワ直行便が最も合理的。ポピュラーなルートはヘルシンキやウィーンなど。フィンランド航空は直行便が豊富。北欧からサンクトペテルブルグに向かい、国内線でモスクワというルートも。

(陸路・海路)
陸路で有名なのは北京とモスクワを結ぶ中露国際鉄道。総距離7,900km、5泊にわたる鉄道旅行となる。
船で中国に渡り、鉄道を使えば航空機を使わずにヨーロッパに行くことが出来る。かつては最も安くヨーロッパに向かう手段として(またはヨーロッパの旅行者がもっとも安くアジアに向かう手段として)バックパッカーに利用された。もちろん現在でも乗ることが出来る。
ロシアに直行する船舶は境港からウラジオストクに向かうものもある。

(パッケージツアー)
アエロフロート利用の4泊5日ツアーが燃油込みで最安14万円程度。サンクトペテルブルグを周遊すると20万程度になる(1人参加はいずれもプラス5万円程度)。
ホテル代の高さや後述するビザ取得の手間を考えると、パッケージツアーの利点は高い。現地フリーのツアーであれば個人旅行と自由度も大差なく、後述するバウチャー、ビザの手間も省ける。

(空港)
上述通り、モスクワの空港は3つ。

ドモジェドヴォ国際空港(DME)
JAL便が到着するモスクワ最大の空港。モスクワ中心部から南に36km。
空港からは高速鉄道(Aeroexpress)が便利。午前5時から深夜0時半まで30分おきに運行し、中心部のパヴェレツ(Paveletskaya)駅まで45分。料金は320ルーブル。
タクシーの場合は市中心部まで1~2時間程度。モスクワ市内は慢性的に渋滞している。到着ロビー内のタクシーカウンターで手配する。料金はメーターでは無く、目的地によって決まるゾーン制をとっているため定額。市中心までおおよそ2,000ルーブル。声がけしてくるのは白タク、相手にしてはいけない。
他に、マルシュルートカ(Marshrutka)という乗り合いバスや、リムジンバスがあり、それぞれ地下鉄ドモジェドフスカヤ駅までを結んでいる。所要40分程度、80ルーブル。
高速鉄道の運行時間外の到着や、地下鉄の駅からホテルが遠い場合には送迎を頼んでおいた方が無難。

シェレメチェボ国際空港(SVO)
アエロフロート便の到着する空港。モスクワ中心部より北西におよそ29km。かつては古くてサービスの悪い社会主義スタイルの権化のような空港だったが、ターミナルは近代化し高速鉄道が直結するなど、利便性を高めている。2013年にはチューリッヒやレイキャビークを抑え欧州地区のエアポート・サービス・クオリティ・アワードを受賞した。

市内への交通手段・費用・所要時間はドモジェドヴォ空港とほぼ同じ。

ヴヌコヴォ国際空港(VKO)
モスクワ中心部から南西に28km。開港は1941年と第二次大戦のまっただ中。ウクライナ、トルコなど一部の国際線と国内線がメイン。
開港こそ古いものの、改修されたターミナルは近代的で機能的。
市の中心まではやはり高速鉄道が結んでおり、アクセスに支障は無い。




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地理と気候

モスクワとの時差はマイナス5時間。日本の正午が午前7時。サマータイムは2011年に廃止され、現在は無い。

北緯55度に位置し、欧州の主要都市の中でも高緯度に位置する。内陸に位置し、冬の寒さは非常に厳しい。
ベストシーズンは夏場の6月~8月。
10月から3月は昼でもマイナス気温となる。ただしモスクワは年末年始冬の芸術祭で混み合う。


(画像:Google提供)


言語と通貨

公用語はロシア語。独特のキリル文字を用い、文法も難解な言語として知られる。

街中に英語の表示は少なく、観光客を相手にするような場所を除けば英語はほぼ通じない。ホテル、カフェ、チケット売場などが英語で問題無い。外国語が義務教育で必修化されていることから、若者には英語が通じることもある。

通貨はルーブル(RUB)。1ルーブル=2.3円(14年12月時点)。およそ2~3円と覚えておけばよい。

(Wikipedia提供)

ロシアの1人あたりGDPは日本の半分以下だが、物価はかなり高め。
Tripadvisorの「旅行者物価指数」によると、ホテル・タクシー・ディナー・カクテル代すべて東京とほぼ同じ水準となっている。

Tripadvisorは外国人料金が考慮されているかどうか不明だが、旅行代理店などを通した場合のホテル代は東京よりも遙かに高い。
比較的安いのは食品類で、ペットボトルの水が20ルーブル、牛乳が40ルーブル、ビールが30ルーブル程度。ただし外食は高めで、カフェのコーヒーが200ルーブル、ランチは600ルーブル程度が相場。タクシー代は日本とほぼ同じ。
 
商品価格には18%の消費税(VAT:Value Added Tax)が上乗せされている。旅行者向けの還付制度はない。

両替は万国共通でATMによる国際キャッシングが有利。
日本国内でロシアルーブルが両替出来る場所は、成田空港もしくはトラベレックスなど限られている。
日本円からの両替は空港で出来る可能性があるが、両替所に日本円の在庫があるかどうかは不確実。米ドルもしくはユーロを持参した方が良い。
ロシア国内ではルーブルでの支払いが義務づけられている。
再両替は紙幣のみ、両替時にもらう両替証明書が必要。再両替のレートは一般に良くない。

基本的には現金社会で、クレジットカードが使える場所は多くない。旅行者が訪れる高めのレストラン、ホテル、高級ブランド店、グム百貨店の一部の店など。その場合でもVISAかMASTERを推奨。

もともとチップの習慣はあまりなかったが、高級レストランでは代金の10%程度。サービス料が加算されていれば不要。ポーターには30~50ルーブル程度。公衆トイレは有料制。


治安

残念ながらそれほど安全とはいえない状況。
旅行者をねらった犯罪としては、スリ、置き引き、詐欺、スキミングなど。暴行や拳銃を利用した強盗事件も少なくない。夜間の1人歩きは避けること。
写真撮影に関するトラブルもあり、軍事施設や官庁、空港、駅、鉄道鉄橋などにはカメラを向けない方がよい。軍人や警察官も写真は避けた方が無難。不良警官が多く、タカリの口実をあたえるはめになる。パスポートやビザの常時携帯も必須。

民族問題を背景にしたテロが大都市でもたびたび発生しており、2010年には地下鉄で、2011年にはドモジェドヴォ国際空港で多数の死者を出す爆発が起きている。
また、排外主義的なグループがアジア系の外国人を襲うという事件も報道されている。スキンヘッドの集団やサッカーのサポーターなどには近づかないこと。
ヒットラーの誕生日(4/20)、メーデー(5/1~2)、戦勝記念日(5/9)、民族統一の日・10月革命記念日(11月初頭)は酔っ払いが増えたり排外主義的グループが活発化するなど危険な時期。


【ロシア超特別編:ビザと個人手配について】

他の情報と同様、本項はメルマガ発行時点の調査にもとづきます。他の項目にもまして、ビザや入国関連の手続きは急に制度が変わる可能性があります。出入国の手続きについては必ずご自身での確認をお願いいたします。また、以下にご紹介する「空バウチャー」での入国は自己責任でお願いいたします。

全ての旅行者はビザが必要。
ロシア個人旅行の最大の難関がビザと言われている。

観光ビザの申請には、旅行会社が発行する旅行確認書・バウチャーが必要となり、観光ルート・移動手段・宿泊場所・観光プログラム・支払済み証明などの記載が必須。このため、モスクワについてふらりと宿を探す…ということは事実上不可能となっている。

また、郵送申請不可能で直接5箇所の領事部(東京、札幌、函館、大阪、新潟の5箇所)に持ち込む必要があるというところもハードルをかさ上げしている。
さらに、申請時間は平日の9:30~12:30まで。朝から大量のパスポートを抱えた旅行代理店の担当者が順番待ちしている中、処理速度は旧ソ連さながらの非効率で、12:30になると何十名順番待ちがいようと問答無用で窓口閉鎖という理不尽さ。
ビザ申請自体は無料だが、10営業日以内の発行は4,000円、3営業日で1万円と、急ぎになるほど手数料がかさむ仕組み。

以上のような事情のため、パッケージツアーを利用するか、個人旅行であってもビザ・ホテル・移動含めた手配一式をロシアに強い旅行代理店に依頼するのが主流となっている。
旅行代理店は、鉄道やホテルの手配に加えビザ発行を1万円程度で行ってくれる。

現実に英語が通じにくく移動が難しいこともあり、パッケージツアーの利便性は高い。

難点は、ホテルの選択肢がほとんどないこと。モスクワは後述する通り世界一ホテル代が高い都市と言われるほどで、旅行会社の用意するホテルはおおむね高め。その割には古く不便な場所にあったりする。そもそも当局が「外国人が泊まってもよいホテル」をある程度高級なものにしぼっているためやむを得ないのだが、行く気が起きないほど高ければ意味が無い…。

実際にはExpediaなどで手ごろな価格のホテルもある。そういったホテルを自由に選びたい、なるべく安くあげたい、どうしてもおしきせの旅はしたくないという場合は、裏技として空バウチャーを発行してくれる代行業者の存在がある。このバウチャーに記載されたホテル・旅程を出国時にチェックするようなことはない(ではいったい何のための制度…)。
とりあえず、この空バウチャーがあれば申請書類は整うので、それを持ってロシア大使館に個人でビザ申請することは可能。
実際にビザに掲載される情報は滞在都市と滞在期間。有効期限内であれば出入国日がずれても良く、フライト情報がビザに記載されることはない(したがって入国時にチェックされるようなこともない)。ホテルの宿泊証明もビザに記載されるわけではない。したがって、バウチャーさえあれば航空便やホテルは自由に個人手配できる。

確実さを求めるならビザ申請代行業者を利用する手も。ホテルを自分で選んだ場合は、そのホテルに招待状を発行してもらい、代行業者にその情報を伝える。
ロシアビザセンターは、ホテルも航空券の予約も全く不要でビザ申請を受けてくれる。

ロシアに3日以上滞在する場合には外国人登録(レギストラーツィヤ)が必要。通常ホテルに依頼する。
知人宅などに滞在する場合には、受け入れ先に当地の郵便局・役所などでの申請を依頼する。この登録証を携帯していないことで悪徳警官にたかられたという事例も発生している。


市内交通

(タクシー)
正規のタクシーは黄色い車体、ドアや天井にサインが付いている。料金はメーター制だが各社統一されていない。20ルーブル/1km程度。
街頭には白タクの方が多い。値段は交渉制。
道路事情は悪く、慢性的に渋滞している。

(地下鉄)
モスクワのメトロは11路線、総延長300kmを超え、乗客もおよそ650万人/日と世界2位の規模(世界1位は東京;総延長330km・乗客870万人/日)。古くに建てられた駅はロシア様式の建築美が見物。
地下鉄はロシア鉄道と同じ1,520mmの超広軌だが、車両自体は日本の地下鉄と変わらない。

モスクワ メトロ (トリップアドバイザー提供)


モスクワ メトロ (トリップアドバイザー提供)

案内はロシア語のみで、薄暗く地下深い。ロシア語の路線図を持っていると便利。
キップはカード式、料金は距離にかかわらず統一で、1回券28ルーブル。10回券265ルーブル。このほかにICカード式もある。自動改札にカードをタッチしてホーム側に入る。

(鉄道)
モスクワ市内の主要駅は9つ。長距離列車のターミナル駅となっており、行き先の地名にちなんで名づけられている(レニングラード駅はレニングラード行き)。したがって、モスクワにモスクワ駅は無い。ターミナル駅は地下鉄駅と近く乗り換えは便利。

キップは、ツアー会社を経由した場合日本で発券されている。
現地の窓口でもパスポートを提示し購入は可能で、当然現地の方が大幅に安い。ただし行き先、席クラス、日付などで価格が異なる複雑な体系で、ロシア語が話せないと購入は困難。
改札はなく、直接プラットホームに向かい自分の登場する列車を待つ仕組み。駅構内にホームと列車の対応が掲載されているがロシア語なので注意。

ロシアは鉄道大国で、駅や車両は絵になるが撮影は厳禁。また、ターミナル駅周辺の治安はあまり良くない。

近郊列車であれば自動販売機でキップを購入可能。

(バス・トラム)
トラム、トローリーバス、路線バスが市内を縦横に結んでおり、キップも料金体系も共通。
キップは街のあちこちにあるキオスクで売られており、路線図も購入できる。メトロと同じく定額制で1回25ルーブル。
運転手から購入すると28ルーブルと高いが、降りるバス停で教えてくれるので便利。
先頭一番前のドアから乗車し、自動改札機にキップを通して印字、バーを押して印字後のキップを受け取り乗車する仕組み。
マルシュルートカという乗り合いバスもある。料金は30ルーブル程度で、バスのキップは使えない。

メトロ3号線終点のシチョールコフスカヤ駅に巨大な長距離バスターミナルがある。窓口でキップを買う定員制。


ホテル

ビザの件で触れた通り、モスクワのホテル代は世界一高いと言われ、清貧を常とする個人旅行者には厳しい。
イギリスのB2B旅行代理店、ホッグ・ロビンソン・グループ(Hogg Robinson Group)の調査によると、モスクワの商用利用の平均宿泊費は1泊263ユーロとニューヨークやパリを抑えて1位(ちなみに2位はナイジェリアのラゴスで234ユーロ!)。

商用で泊まるのは比較的ランクの高いホテルが多いと思われるが、個人旅行者の選択肢も少ない。最低でも概ね一泊2万円は見ておいた方が良く、一泊5万、7万というホテルもめずらしくない。

ホテルがパッケージとなったツアーであればビザの申請も含め何も考える必要は無いが、その分費用は不明瞭になる。

もう少し自由に選びたい場合は個別手配となる。旅行代理店が、外国人が宿泊可能なホテルのリストを用意しておりそこから選ぶことになる。価格は外国人料金で高めだが費用の透明性はある。ただし、ExpediaやTripadvisorなどのサイトに出ている人気のホテルがリストに無かったり、料金が違ったりといったことも。

「Expediaとかでホテルを自由に選べないの?」
もちろん可能。その場合はホテル情報をビザ代行業者に伝えるか、空バウチャーでビザ申請することになる。
モスクワ市は広いので、ネットで予約する場合は交通の便を良く確認しておきたい。
ホステルやAirbnbの場合は、ビザ申請の際の記入方法などを宿(ホスト)に確認しておこう。

宿泊時は、外国人登録(レギストラーツィヤ)の手続きを忘れずに。


ネット・通信環境

(携帯・モバイル)
ロシア全土をカバーしている携帯会社はヴィンペルコム(ブランド:Beeline)、メガフォン(Megafone、Yota[LTEネットワーク])、モバイル・テレシステムズ(MTS)など。
国土が広大なので、州(エリア)を超えるとローミング扱いになる。

後述の通り、公衆無線LAN網が充実しているため、インターネット接続のみであればそちらを選択するという手も。3Gはあまり速くない。

ネット上で「最もおすすめ」とされているのがアジアでもよく見かけるBeeline(元はロシア資本)。料金プランは、1ヶ月300メガ150ルーブル、同2ギガ390ルーブル、同3ギガ600ルーブルなど。
MTSは1日無制限50ルーブル、1ヶ月3ギガ350ルーブルなど。
Megafonは1日無制限24ルーブル(200メガ以降速度制限)、2ギガ210ルーブルなど。
初期費用(SIM代)がおおむね200ルーブル程度。

大手携帯販売店、Euroset(表記:Евросеть)の店舗がドモジェドヴォ国際空港やシェレメチェボ空港にあり、各社のプリペイドSIMを購入できる。

(Euroset看板)

モスクワでの滞在期間やモスクワ以外の滞在地(あれば)を伝え、英語表記にしたSIMフリー端末を出してプランを選んでもらい、設定まで依頼する。
シェレメチェボには、Eurosetとは別の大手販売店のSvyaznoy(Связной)がある他、Beeline、Megafon、MTSの各キャリアのカウンターもある。

(Svyaznoy社看板)

(WiFi)
WiFiの充実度は素晴らしく、カフェ、バー、鉄道駅、さらには地下鉄車内(2014年12月にサービススタートしたばかり)など、多くの場所でWiFiが通じている。他国同様にマクドナルド、スターバックスでも使える。
ホテルのWifiは有料で高いことも。

市街の多くの地点をBeeline(Gloden Telecom)による公衆無線LANがカバーしている。有料スポットと無料スポットがあり、有料プランの選択肢は、1ヶ月500ルーブル、1日100ルーブル、1時間あたり50ルーブルの3種類。

ドモジェドヴォ国際空港、シェレメチェボ空港それぞれで無線LANを提供している。

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5. 旅の本屋 のまど イベント情報:12月17日(水)口尾麻美さん スライド&トークイベント

Profile
プロフィール

旅の本屋 のまど

東京・西荻窪にある旅の本屋です。音楽、映画、思想、料理、宗教など、さまざまなジャンルから「旅」を感じさせてくれる本をセレクトしています。「旅」に関するイベントも定期的に開催中!
所在地:〒167-0042 東京都杉並区西荻北3-12-10司ビル1F
営業時間:12:00 ~ 22:00 定休日:水曜日
HP:http://www.nomad-books.co.jp/


新刊「旅するリトアニア」発売記念
◆口尾麻美さん  スライド&トークイベント◆
「森と湖の国、リトアニアへようこそ!」

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新刊『旅するリトアニア』(グラフィック社)の発売を記念して、料理研究家の口尾麻美さんをゲストにお迎えして、バルト三国のリトアニアの魅力についてスライドを眺めながらたっぷりと語っていただきます。『トルコで出会った路地裏レシピ』『モロッコで出会った
街角レシピ』など、旅で出会った料理や道具、ライフスタイルに関する著作が多数ある口尾さんが今回注目したのは、「リトアニアリネン」に代表される、さまざまなハンドクラフトが注目されるバルト3国のひとつ、リトアニア。ここ数年、旅好き、雑貨好き、東欧のかわいいもの好き、の女性達の次の旅の目的地として注目を集めています。そこで、本書では、森に深く根ざした生活、首都ヴィリニュスの魅力、郊外の街へのショートトリップ、代表的なハンドクラフトの工房巡り、独特な食文化、魅力的な代表料理のレシピなど、素朴で新しいリトアニアの今が紹介されています。今回のイベントでは、おいしいリトアニア料理の話を中心に、口尾さんが旅で感じたとっておきの貴重なリトアニアの話が聞けるはずです。
口尾さんのファンの方はもちろん、バルト三国やリトアニアに興味のある方や東欧の雑貨や料理が好きな方はぜひご参加下さいませ!なお、参加者の方には、口尾さん特製、リトアニアミートパイのプレゼントがありますよ!
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※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。


口尾麻美(くちおあさみ)

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料理研究家 Amazigh(アマジィーク)主宰。旅からインスピレーションを受けたジャンルにとらわれない料理を提案。料理教室、書籍、イベントを通して料理やキッチンライフを楽しくするアイデアを発信している。著書に『トルコで出会った路地裏レシピ』、『モロッコで出会った街角レシピ』、『クスクスっておいしい!パリ&モロッコの旅と、とっておきのレシピ』(グラフィック社)など。

口尾麻美さんツイッター
https://twitter.com/asami_kuchio


【開催日時】  12月17日(水)   19:30 ~ (開場19:00)
【参加費】   900円   ※当日、会場入口にてお支払い下さい
【会場】  旅の本屋のまど店内
【申込み方法】 お電話、ファックス、e-mail、または直接ご来店のうえ、お申し込みください。TEL&FAX:03-5310-2627
 e-mail :info@nomad-books.co.jp
 (お名前、ご連絡先電話番号、参加人数を明記してください)
※定員になり次第締め切らせていただきます。
【お問い合わせ先】
 旅の本屋のまど TEL:03-5310-2627 (定休日:水曜日)
 東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1F
 http://www.nomad-books.co.jp
主催:旅の本屋のまど 
 協力:グラフィック社

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6. 編集後記

 
tabinoteワタベです。日が変わって17日配信となってしまいましたが、16日付でお送りしています。
年末進行と鉄道の遅延が重なり心ならずも予定日翌日の配信となりました。
「帰宅時読もうと思ってたのに!」と楽しみにされていた方には申し訳ございませんでした。その分、今朝の通勤で読んで下さい。

さて、ニュースにもあります通り、スカイマーク問題が決着の見込みです。
一時期低迷していた株価も16日にはストップ高、時価増額は夏頃と比べて倍増(330億円)しました。一儲けした方はラッキーでしたね。
もっとも1機あたり20億円と言われる羽田の国内線発着枠を36も保有するスカイマーク、まだまだ株価が上がっても不思議ではありません。

下川さんの連載ですが、非常に気をつかった表現をされていると感じました。
交通機関でスタッフのモチベーションが下がっていった先に何が起こるか…、そういうきざしをお感じなのかもしれません。

吉田さんの連載は「立ち寄り湯」。確かに雪景色やウインタースポーツはアジアからの旅行者に大人気ですね。日本人も知らないようなマイナーな観光地を探り当てる訪日外国人の情報網にはおどろくことしきりです。各地のTripadvisorを見ているとガイドブックに掲載がないような場所が人気上位だったりしますね。

旅行記はキナバル3回目です。長ーい前置きで2号分も使ってしまいましたが、今回からいよいよ登山開始です。登りはとにかく急いでいたので写真もほとんどなく、記憶もあいまいです。酸素不足だったせいかも…。

復活した青木さんの旅行記はインド2回目。やはり一筋縄ではいかない場所。書けないような話もたぶん沢山あると思います…。
次号はインド旅行のハイライト、ガンガー沐浴だそうです。

「世界あの街」はモスクワです。寒い日が続くのであえて極寒の地を選びました。
真っ白に凍り付いたモスクワ川を想像してみると東京の冬なんて小春日和のよう…。
とにかくロシアはビザ取得の難易度で有名です。行かれる際は最新の情報を入手するかtabinoteまでお問い合わせ下さい。
ソチオリンピックを契機にビザ緩和などの動きがあるかと期待していましたが、ウクライナ問題でそれどころではなくなりました。かの地は今後ますます行きにくくなるかもしれず、今はルーブル下落とサーチャージ値下げという追い風。迷っているならさっさと行った方がいいかもです。
ロシアは調査が大変すぎて(特にSIM)何度もやめようかと思ったほどなので、ぜひガイドとして活用いただきたいですね。
冬はオフシーズンですが芸術祭はじめイベントも多く、穴場の時期ともいえます。

西荻のまどさん、明日(というか今日!)12/17(水)にリトアニアのイベントがあります。

以上、今号も前号同様2万9千字の大ボリュームです。よろしくお願いいたします。

次号は通常の連載はお休みし、昨年同様にメンバー座談会、連載陣のご挨拶といった内容になります。
年明け新連載の告知もできるかもしれません。

次回は12月30日(火)の発行予定です。


tabinoteが旅程調査を担当した「一度行ってみたい 世界の絶景」(洋泉社ムック)。もうご覧いただけましたでしょうか?美しい写真と旅の達人インタビュー、実用的な行き方ガイドで構成された情報量満載の一冊です。ぜひ店頭で手にとってみて下さいね。

166031
一度は行ってみたい世界の絶景(洋泉社)

★特設ページ★


発行:有限責任事業組合tabinote
https://tabinote.jp

※本メルマガの連載原稿または寄稿、告知などの著作権は著者・情報発信元に帰属します。その他の著作権および全ての編集著作権はtabinoteに帰属します。記事の引用・転載は出典を明記いただくとともに、諸関連法規の定めに従い行っていただきますようお願いいたします。

次回は12月30日(火)の発行予定です。

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Contents 2014/12/16号 Vol.037

Contents

1. 旅行業界最新ニュース
2a. 連載:「タビノート」 下川裕治
2b. 連載:「旅のしりとりエッセイ」 吉田友和
3a. tabinote旅行記 エアアジアXで行く! キナバル山日帰り登頂-その3
3b. 世界一周ノート 第22回:インド ジャイプール~ジョードプル~ファテープル・シークリー
4. 世界あの街この街:モスクワ
5. 旅の本屋 のまど イベント情報:12月17日(水)口尾麻美さん スライド&トークイベント
6. 編集後記

1. 旅行業界最新ニュース  2014/12/16号 Vol.037


1. 旅行業界最新ニュース

スカイマーク、ANA、JALと共同運行

朝日新聞電子版の記事によると、経営危機が伝えられるスカイマークが今春よりJAL、ANAの両社と共同運行を行なうとのこと。このニュースでスカイマークの株はストップ高を付けた。

JAL、マイル特典に映画チケットを追加

JALとイオンエンターテイメントは、JMB(JALマイレージバンク)で貯めたマイルを映画チケットに交換する「JALシネマ特典」を12月5日より開始した。交換レートは10,000マイルで映画鑑賞チケット(ポップコーン付き)8枚。有効期間は発行日より6ヶ月。映画のチケットを1,800円とすると、10,000マイルで15,000円、1マイル1.5円なので、通常のクーポン交換(1.2円くらいが多い)よりは多少お得といえる。もちろん航空券に交換した方がお得ではあるが。

ピーチ、決済にYahoo!ウォレットを導入

ピーチ・アビエーションは12月15日、航空券購入の決済にヤフーが提供するオンライン決済サービス「Yahoo!ウォレット」を導入したと発表した。一度登録しておけば、Yahoo!IDでログインするだけでクレジットカード番号の入力を行わなくても決済が可能になる。単に便利になるだけではなく、1秒を争うキャンペーンチケット争奪戦の時などは強力な武器になるかもしれない。また、導入開始を記念し、最大10,000円相当の「ピーチポイント」が当たるキャンペーンも行われている。

ANA、2015年夏にも成田発シンガポール・バンコク便を増便

ANAは、2015年夏をめどに成田-シンガポール、成田-バンコク便を現在の1日1便から2便に増便すると発表した。どちらもJVを展開するユナイテッド航空のアメリカ便と連絡、乗り継ぎが可能となっており、成田空港のハブ機能が強化された形だ。機材はいずれもB787-8が予定されている。

増便分のタイムテーブル

成田-シンガポール線
NH845 17:00 成田 > 23:15 シンガポール
NH846 00:35 シンガポール > 8:45 成田

成田-バンコク線
NH807 16:55 成田 → 21:35 バンコク
NH808 00:30 バンコク → 8:40 成田

ANA、国際線のエコノミークラスで預け荷物を2個に

ANAは、1月8日発券分より、国際線のエコノミークラスで、受託手荷物の個数を従来の1個から2個に増やすことを発表した。また、日欧路線でANAとJVを展開する。ルフトハンザ航空、オーストリア航空、スイス インターナショナル エアラインズも同日、同様に変更する。

エミレーツ航空、機内で無料Wi-Fiサービスを開始

エミレーツ航空は12月11日、機内Wi-Fiサービスの利用・導入状況を発表した。現在51機のエアバスA380において無料(10MBまで)のWi-Fiサービスを提供しており、将来的には所持する全機材でWi-Fiサービスを目指すとしている。10MBはちょっと少ないですが、無料というのはすばらしいですね。

エアバスA380は存続するのか?

ボーイングのB787、エアバスのA350WXBなど、低燃費で長距離を運行できる中型機が人気を集めているが、エアバスのフラッグシップモデルである全席2階建ての超大型機A380が2018年にも製造中止になるのではないかという報道が注目を集めた。これを受けてエミレーツ航空のティム・クラーク社長は、エンジンをより燃費のいいものに載せ替えたA380neoが開発されれば140機を発注すると発言、これが奏功したかどうかはわからないが、その後エアバスは製造中止を公式に否定した。

羽田空港にキャセイパシフィックがラウンジをオープン

キャセイパシフィック航空は12月9日、羽田空港国際線ターミナル内に、同空港初の海外航空会社ラウンジとなる「キャセイパシフィック・ラウンジ」をオープンさせた。同社にとって拠点の香港国際空港以外の自社ラウンジとしては最大の大きさを誇り、ビジネスクラス・ファーストクラスの乗客が搭乗前に利用できる。

2a. 連載:「タビノート」 下川裕治  2014/12/16号 Vol.037 無料版


2a. 連載:「タビノート」 下川裕治

月に何回か飛行機に乗る。最近はLCCの割合が増えている。そんな体験をメールマガジンの形でお届けする。

Profile
shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。

たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

いちばん大切なのは社員、二番目が乗客

 今年最後の原稿という連絡を受け、1年の間に乗ったLCCを指折り数えてみた。
 国内ではジェットスター、バニラ、ピーチ、スカイマーク。海外では、エアアジア(マレーシア、タイ、インドネシア)、香港エクスプレス、タイガーエアウエイズ、ノックエアー、ベトジェット、ライオンエアー、スクート。
 数え漏れはないと思う。乗った回数でいえば、国内ではジェットスター、海外ではエアアジアになるだろうか。それぞれ10回近く乗っている。


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2b. 連載:「旅のしりとりエッセイ」 吉田友和  2014/12/16号 Vol.037 無料版


2b.「旅のしりとりエッセイ」 吉田友和

Profile
プロフィール

吉田友和(よしだともかず)

1976年千葉県生まれ。出版社勤務を経て、2002年、初海外旅行にして夫婦で世界一周旅行を敢行。旅の過程を一冊にまとめた『世界一周デート』で、2005年に旅行作家としてデビュー。「週末海外」というライフスタイルを提唱。国内外を旅しながら、執筆活動を続けている。その他、『スマートフォン時代のインテリジェント旅行術』(講談社)、『自分を探さない旅』(平凡社)、『LCCで行く! アジア新自由旅行』(幻冬舎)、『めざせプチ秘境!』(角川書店)、『3日もあれば海外旅行』(光文社)など著書多数。
旅行作家★吉田友和 Official Web

しりとりで旅する 第36回 吉田友和

た 立ち寄り湯

 駅の改札を出ると、街路樹がイルミネーションで彩られ、そのすぐ前にある花屋の店頭はポインセチアの赤色で埋め尽くされていた。そのまま近くの喫茶店に入り、いまこれを書いている。今日は12月11日。あっという間に2015年になってしまいそうで焦る。
 先週は沖縄へ行ってきた。引き籠もって原稿を書き上げようと意気込んでいたのだが、パソコンのACアダプタを持っていくのを忘れるという大失態を犯し、ならば仕方ないと結局飲んだくれているだけで終わった。来週は台湾で、さらに年末年始はベトナムへの渡航が控えている。いずれも南国ばかり。冬の日本の寒さから逃避するように、つい南へ、南へと足が向く。寒いのは大の苦手だ。


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3a. tabinote旅行記 エアアジアXで行く! キナバル山日帰り登頂-その3


3a. tabinote旅行記 エアアジアXで行く! キナバル山日帰り登頂-その3

 
tabinoteワタベです。今年6月のキナバル山登山、数回に渡ってレポートします。今回は3回目です。

二日目:前夜

前号まではこちらをご覧下さい。
 その1:上陸編
 その2:徘徊編

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(画像:tabinote)


さて、登山前日の夜、計画通りパッキングをはじめる。

準備1:スケジュール

私には圧倒的に山登りの経験が不足してはいたが、わざわざボルネオくんだりまで行って失敗しました、では悲しすぎる。経験の少なさをカバーすべく、渡航前に具体的な行動計画を練っておいた。

登山口が標高1,866m。規定ではここを午前7時半に出て、13時までに山頂4,095mに達する必要がある。
余裕を持って、山頂正午着、所要4時間半を目標とした。
登山道の距離は8.7km、標高差は2,229m。そうすると水平移動距離は8,410mとなる。
8.4km移動して2.2km登るので、勾配は2.2÷8.4で26%。
勾配26%はあまくない。スポーツサイクルなら前輪が浮くほどの超激坂。
(ちなみに、富士山の御殿場ルートが22%)
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(画像:tabinote)

登山本に載っていた公式により山歩きの標準的なタイムを算定したところ、今回の標準的なタイムは休憩なしで9時間半とわかった。
目標は4時間半なので、ほぼ一般登山者の倍のペースで進まなければならない。また、標高3,000mを越えた後半はかなりペースダウンすることが考えられるので、前半はよりとばす必要がある。
とはいえ、制限時間から逆算しおおむね1km25分のペースでいけばいいと判断。

準備2:食料と水

補給計画も立てた。
登頂の往路を長めにみて5時間とし、30分に一度給水(100cc)、1時間に1度食事(100~150kcal)と想定した。復路はやはり安全を見て3時間程度、給水と補給タイミングは同様。
となると、水が最低1.6リットル、800~1200kcal程度の食料が要る。ポカリスウェットの500mlボトル3本で水分はOK。カロリーはポカリで300kcalはとれるので、残り500~900kcal。スナック1袋でOKだろう。
ポカリの粉末と柿の種を日本から持参していたので、夕食をとった後、食堂内の売店でプリングルズを買っておいた。ついでに明日の朝食も準備(世界攻略者さんの旅行記で、朝は食堂が開いていないことを知っていたため)。

準備3:荷物

荷物は日帰りなのと、体力への不安から軽さ重視。
20リットルの軽いリュックに、水を1.8リットル(600mlボトル3本;すべてに顆粒のポカリを溶かす)、食料(柿の種小分け6P)、雨具、傘、長袖シャツ、着替えのTシャツ、ヘッドライト、ヘッドライトの予備電池、コンパクトカメラ、スマホ、スマホの予備バッテリー。
追加の着替えとかいろいろ迷ったけどやめた。

これだけ入れてもまだザックはスカスカで、重さも3~4kgくらいか。これなら快適に動けるはず。
私の行動食はもっぱら柿の種。小分けで量を調節しやすいし、よくある輸入エナジーバーのように甘くて胃もたれすることもなく、軽くてカロリーも十分。しかも柿の種は意外に外国人に人気(特にインド系)だったりしてチップ代わりにもなり、いいことずくめ。課題は水が欲しくなることくらいだが、今回は途中のラバン・ラタ小屋で補給できるので問題ないと判断。

準備4:服装

服装も機動性重視で、ランニング用のショートパンツにTシャツ、化繊の山用ジャンパー、足下はローカットのトレイルラン用シューズ。
キナバル頂上付近は強風が吹いた場合に体感気温が氷点下になることもあるとのことだが、登りは汗だくで動き続けている間は寒くないはず。長袖を着て雨具を羽織ればなんとかなると判断。

さて、好天を願って就寝。空を見ると、わずかに星が出ている。この天気が続いてくれればいいが…。


三日目:登山開始

午前6時起床、朝食代わりの柿の種とプリングルズを食べる。
外はいつ降ってもおかしくないような曇り空。

しつこいが今日のスケジュール・制限時間は次の通り。
登山口のティンポポンゲート(Timpohon;標高1,866m)を7時~7時半にスタート。
時間制限は2箇所で、最初がロッジのラバン・ラタ小屋(Laban Rata;3,273m)に午前10時、次に最高地点のロウズ・ピーク(Low’s Peak;4,095m)が13時。更に、出発地点のティンポポンゲートゲートまで16:30戻り。したがって登頂までの制限時間は5時間半、13時に下山した場合下りの制限時間が3時間半。

宿に荷物を預け(5リンギット)、チェックアウト。
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(画像:tabinote)

午前7時少し前にキナバル公園の登山受付ゲートへ。
登山許可証を提出し、まずはガイド代以外の費用を先払いする。
ガイド代は最後にガイドに直接払うらしい。
あー、これは最後にガイドがうんとチップをせびってくるパターンだなと軽く不安に。
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(画像:tabinote)

費用精算後にガイドと対面。小柄だが精悍な顔つきの男だった。同じ年か少し若いくらい。
靴紐を結んでいると、背の高い白人に「その靴で行くのか?」と声をかけられる。

そうですが、何か…。
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(画像:tabinote)

許可を受けた登山者であることを示すタグを首から提げて、登山口行きの車に乗り込む。私とガイドが乗ったとたんいきなり出発。
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(画像:tabinote)

車内でガイドに、他の日帰り登山者もいるよねと聞いたところ、数組いるはずだがまだ受付をしてないとのこと。
なんにせよ、遅刻組に引きずられず先に行ってくれるならラッキーだ。あの白人は後から来るのか。
しばらくクルマが走って、登山口のティンポポンゲートへ。ここからは許可された登山者でなければ進めない。ガイドが手続きをしつつ、売店で自分の食事(UFOみたいなかたちのでかいパン)を買っている。
ビールをみつけてテンションが上がる。
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(画像:tabinote)

さて、チェックが終わってゲートをくぐった。いよいよ登山開始。


登山道はしっかりしており足下も険しくない。周囲は木が生い茂り、ときおり小粒の雨が顔に当たる。
すぐに小さな滝にぶつかるが、その後は特にめぼしいものも無く、アップダウンありながらも単調な道のりが続く。
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(画像:tabinote)

林道の様子や植物など、いちいち写真を撮りたいなと思うが、時間重視なのでどんどん進む。
頂上まではおよそ1kmごとに休憩ができる小屋的なものがあるが、日帰り登山者は時間が無いのでゆっくりできない。
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(画像:Sutera Sanctuary Lodges)

1km地点、Kandis Shelterへ。ここではじめて水を飲む。
ここまで20分程度だというのに、私は既に汗だく。ジャンパーを脱いだ。
ガイドの息もだいぶ乱れている。
彼によると、少しオーバーペースとのこと。

これ以上落としても制限時間間に合うか?と聞いたところ大丈夫という回答だったので、水を一口含んで再度出発。
先ほどよりややペースを落とす。
というか、だんだん勾配がきつくなり、ペースを落とさざるを得なくなってくる。

さて、歩いていても他の登山者と全くすれちがわない。
キナバル登山はラバン・ラタ宿泊が前提なので、この時間は皆ご来光を見てはるか上方、下山している最中なのだろう。

キナバルはほとんどアップダウンなしの登り一辺倒。
1.5km地点のUdoh Shelterを越えて更に登る。
まだ周囲は木が生い茂りどの程度登ったか高度感がない。

前日の雨で道が悪く、赤土や岩場の箇所をそろそろと抜けるためペースが乱れる。
ただし、全般には整備された登山道という感じで、手を使うような急な坂はない。
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(画像:tabinote)

むしろきついのは階段!
山登りをする方ならご存じでしょうが、山の階段・石段は段の高さが不規則で急角度で建物の階段以上に辛い。
予想外の階段の多さ。えんえんと段が続く箇所はかなり体力を消耗させる。途中で止まると動けなくなるかもと思いひたすら登った。

せっせと登り続けておおよそ全工程の8.7kmのおよそ半分となるLayang Layang小屋付近に到着。
これまでの休憩所の中ではかなり整備されている。
ここで初めて5分程度の休憩をとる。
ろくに休まずひたすら登り山道でなかなか疲れたが、まだ足には余裕がある。
心臓も、のぼりで多少バクバクいうけどまだまだ大丈夫。
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(画像:tabinote)

さて、再び黙々とマシーンのように登る。
4.5km地点。
ここは標高2,898m。登山口からおよそ1,000m上がったことになる。
木々の向こうに頂上の岩肌が見えるようになり、曇りながらも明るくなってきて視界が晴れてきた。
ただし空はまだ霧と雲に覆われている。
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このあたりから下山者やポーターとすれ違うようになってきた。
ほとんどの下山者はかなり疲労している様子。一歩一歩トレッキングポールに体をもたれるような感じで道をふさぐのでややペースが乱れる。
驚くのはポーター。昔上野あたりにいた担ぎ屋のおばちゃんくらいに巨大な荷を背負っている人もいる。登山者のポーターでは無くおそらく山小屋に水や食料を運ぶポーターなんだろうけど、荷の量がすごい。

さらに登って5km地点。標高3,001m。
私が3,000m以上の地点に来たのはこれが始めて。そしてゴールまであと3,700m。
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(画像:tabinote)

ここまで休憩時もほとんど口をきかなかったガイドが言った。
いいペースだ。お前なら制限時間までに登頂できると思う。天候が崩れないうちに頂上を目指そう」

まだまだ余力もある。
頭もクリアで、高山病の気配もない。
いけそうだ。

ところがもちろん、そんなにスムーズにはいかなかったのです…。
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(画像:tabinote)

(続く)

3b. 世界一周ノート 第22回:インド ジャイプール~ジョードプル~ファテープル・シークリー


3b. 世界一周ノート 青木大地

仕事をやめ、2013年10月から1年間の予定で世界一周の旅に出ました。

Profile
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青木大地(あおき・だいち)

1986年生まれ。日本大学 芸術学部 卒業。
卒業後、大手レンタルビデオメーカーに勤務。店舗、営業を経て世界旅行のため退社。
念願のフリーライターとしてとりあえず1年は過ごせそうです。
同名義でFacebookもよければ見てください。

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第22回:インド ジャイプール~ジョードプル~ファテープル・シークリー

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息が切れて、後ろを振り返ると誰も追って来なかった。ムンバイの大通りにはリキシャが列をなして僕を誘っていた。

西インド、ジャイプール・ジョードプルを目指して僕はムンバイの大きな駅を巡っていた。チケットがなかった。駅の外国人専用窓口で聞いても、ローカルの長い列に並んでも効率良く移動できる列車がなかった。「あそこの駅に行ってみたら?」と根拠のないたらい回しにあって、よく言えばインドを信じていたからできたことだけれど、僕は色々な駅の窓口へと顔を出した。
その時の移動手段も列車で、常に超満員の中で市内を移動していた。運賃は16円だったけれど、誰も切符を持っている人はいなかったし(突然線路から飛び乗ってくる乗客もいた)、僕も無賃乗車をしていた。

ようやく納得のできるルートが組み上がってジャイプール行きのチケットが買え、ホテルの最寄り駅に着いた時だった。初老の駅員が僕を見つけると駆け寄ってきて、「チケットは?」と言った。
僕は何故か「誰も買ってないチケットを、どうして買わなければならないのか!そして何故外国人の僕を狙ったかのように声をかけてきたのか!」と言って逆ギレした。今思うと恥ずかしいことだけれど、インドに居るという緊張感が僕の良識とか、金銭感覚を麻痺させていたのかもしれない。罰金は600円程度とのことで、僕は駅の事務所へと連行された。
事務所に足を踏み入れた瞬間、僕はとっさに駅員を振り切って走って逃げた。
この旅で走って逃げるのは2回目だった。最初は上海でお茶会詐欺から逃げた、そして今回はキセルの取り締まりから。
大通りのリキシャの誘いを断って、僕は泣いた。前日は失禁し、今日は法を犯して逃げた。何て情けないことをしているんだろう。こんなことをするために僕は旅行をしているんじゃない、と泣いた。この日は母親の誕生日で、とんでもない親不孝者だと自分を呪った。

西インドの砂漠は美しかった。ピンクの街ジャイプール、青の街ジョードプルでの観光は比較的清潔な安ホテルにも恵まれて楽しむことができた。いい加減な人々も、親切な人々も、迷い込んだスラムも、強烈過ぎる印象を残して記憶の奥底に沈んで行った。
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目を覚ますとアグラに列車は到着していた。楽しみにしていたタージ・マハルは、それまでのインドがそれを上回って美しさ以外の感情を生むことはなかった。
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不安定だったWiFi環境も安定して、少し足を伸ばしてファテープル・シークリーという古都の遺跡群を訪れたりもした。
バナナを20分くらい値切ったり、完全ローカルの屋台に挑戦したり、変なお土産屋に連行されたり、駅前でたむろするタクシードライバーにタバコをせがまれたり、そのお礼に携帯でエロ動画を見せられたり。僕はまた少しインドに順応できてきている気がしていた。行列に並んで列車のチケットを買うことにも慣れた。
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そして首都ニューデリーの喧噪の中で、そろそろ罪を流す頃合いかなと、濁った夜空を見上げた。
罪深く怠惰に生きてきた罪を、そして失禁を、キセルを、ガンジス川で洗い流すそうと決めた。

次回は今度こそガンジス川沐浴とバングラッシーを記します。


世界一周ノート
とりあえずの予定コース:上海→杭州→南寧→ベトナム→ハノイ→ホーチミン→カンボジア→チェンマイ→ラオス→バンコク→パンガン島→ペナン島→マラッカ→スマトラ島→ジャワ島→マニラ→シンガポール→ジョホールバル→シドニー→チェンナイ→ムンバイ→ジャイプール→ジョードプル→アグラ→ニューデリー・・・。以降トルコ、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、南米と巡る予定

4. 世界あの街この街: モスクワ


4.世界あの街この街

このコーナーでは旅行先として人気の様々な都市を詳しく紹介していきます。

第36回 モスクワ

聖ワシリイ大聖堂の写真
聖ワシリイ大聖堂 (トリップアドバイザー提供)

ロシア連邦・国旗

(画像:Wikipedia)


見どころと特徴

クレムリン、赤の広場、聖ワシリイ教会など壮大で豪華な史跡が数多く存在し、他の欧州の大都市とはひと味違った独特の雰囲気が人気。
美術館のように美しいというメトロやグム百貨店も評価が高い。社会主義的な史跡やアートに興味があれば、クレムリンの武器庫やレーニン廟、KGB博物館、そしてセブン・シスターズと呼ばれる高層建築を巡ってみるのもいいかも。

モスクワ市の面積は994km2と広大。東京都(23区の面積は621m2)と地図を重ねてみると、モスクワ市の市境となる大環状道路は東京外環自動車道の更に外側に位置している。クレムリンを中心に環状道路が囲み、放射状に道路が郊外に延びている構造となっている。
ただし観光客にとっての見どころは中心部に集中しており、メトロが張り巡らされているので移動は便利。
モスクワGoogle-マップ
(画像:Google、編集:tabinote)


街歩きは、クレムリンを中心に考えると迷いにくい。
まずは、クレムリンを背にして北東から。このエリアはモスクワで最も古い街区で、古い建物や城壁跡が残っている。放射状に伸びるミャスニースカヤ通り(肉屋通りの意味)およびマシ・ポリヴァエヴォイ通り目印にすると迷いにくい。旧KGB本部やモスクワ中央郵便局、工業技術博物館などいかにもロシア的な、重厚でクラシックな建物が並ぶ。
通りを北東に進むとサンクトペテルブルクに向かうレニングラード駅、その前にそびえ建つヒルトン・モスクワはセブン・シスターズ(※)と呼ばれたスターリン時代の7大高層建築の1つ。近くの運輸機関建設省(鉄道省)も同じくセブン・シスターズの1つ。
※社会主義の優位性を示すべく表現された重厚で権威的な建築様式。


ヒルトン モスクワ レニングラードスカヤ (トリップアドバイザー提供)

続いて市の北西部、クレムリンとベラルーシ駅とをつなぐモスクワ一の目抜き通り、トゥヴェルスカヤ通り(レニングラード通り)へ。街路沿いはレストランやブランドショップ、劇場、コンサートホール、博物館などが建ち並び、いつも大勢の人と車でにぎわう。ボリショイ劇場はクレムリンのちょうど真北あたり。
赤の広場を背に北西、リッツカールトンから歩き始めればモスクワ芸術座、エルモーロワ劇場など風格ある建物が並んでいる。芸術座の付近はレストラン街となっており、英語メニューも多いので安心。エリセーフスキーは帝政時代からの有名な食料品店で、華麗な内装が有名。エリセーフスキーの北にはプシーキン広場があり、ここのマクドナルドはロシア第1号店。

Yeliseev’s Food Hall (Yeliseevskiy Gastronom) (トリップアドバイザー提供)

北西部から逆時計回りに南下し市の西部へ。
プシーキン広場から環状路の美しいノヴィンスキー並木通りを西に向かう。この通りとその内側(クレムリン側)には小さな博物館が多い。ゴーリキーの家博物館、トルストイの家博物館、チェーホフの家博物館、さらにはマトリョーシカ博物館など硬軟問わず多くのミュージアムがある。
なお、すぐ近くにゴーリキー博物館、トルストイ博物館というものが別にあるのでファンの方は要注意。
ノヴィンスキー通りの外側、ひときわ高い尖塔はセブン・シスターズの文化人アパート。

アルバート通り (トリップアドバイザー提供)

そして市の南西部へ移動。ノヴィンスキー並木通りは、セブン・シスターズの一角である外務省を過ぎるとスモレンスキー通りと名を変える。この通りの内側はやはり博物館や美術館、レストランの建ち並ぶ人気のエリアで、モスクワのサン・ジェルマンと呼ばれる。このエリアのシンボルは救世主キリスト聖堂。街歩きも楽しいが、ここではせっかくなので世界に誇るモスクワの美術館を見学したい。ロシア美術の殿堂トレチャコフ美術館、ルノアールやモネなど印象派の世界的コレクションで知られるプシーキン記念美術館はこのあたり。

トレチャコフ美術館 (クリムスキー・ヴァル) (トリップアドバイザー提供)

更に南西に向かうと雀が丘と呼ばれる高台の地域になっており、展望台から市街を見渡すことが出来る。結婚式の名所としても有名。巨大な尖塔を持つモスクワ大学もこのエリア。モスクワ大学はセブン・シスターズでも最大の規模で、尖塔の高さは236mに達する。

Lomonosov Moscow State University (MGU) (トリップアドバイザー提供)

そしていよいよ中心の中の中心、クレムリンと赤の広場へ。

モスクワのクレムリン (トリップアドバイザー提供)
クレムリンは城壁で囲まれた部分だけでも面積26万平方メートル(東京ドーム5個分以上)という広大さ。宮殿、尖塔などの史跡から大統領官邸までが集まるロシアのへそ。中心部のウスペンスキー大聖堂は壮麗なフレスコ画で有名。武器庫やダイヤモンド庫といった見どころも。
赤の広場は、それを取り囲むクレムリン、レーニン廟、歴史博物館、聖ワシリイ、グム百貨店といったロシアを代表する美しい建物に囲まれている。広場の中心でのんびりと歴史を想像したい。

赤の広場 (トリップアドバイザー提供)


グム百貨店 (トリップアドバイザー提供)


郊外観光では壮麗な聖セルギエフ大修道院が有名なセルギエフ・ポサードに立ち寄りたい。市中心から北東に70kmほどで、日帰りツアーでも行くことができる。
北東方面は黄金の環と呼ばれる歴史ある街が点在し、中でもウラジミールやスズダリは世界遺産が多く残ることから観光客も多い。

セルギエフパサド (トリップアドバイザー提供)

モダンなロシアに興味があるなら、市中心から東に30kmほどのシチョルコヴォへ。ここはロシアの宇宙開発拠点で、遠心加速器に乗ってロケットの加速度(G)体験が出来る。また、近くのモニノにはロシア最大の航空博物館、モニノ空軍博物館がある。

シチョルコヴォ (Veltra提供)

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Hachapuriの写真
Hachapuri (トリップアドバイザー提供)

ロシアは土地が広大であり、食文化も多様。
有名なボルシチはウクライナの郷土料理が発祥。ビーフストロガノフやコトレータ(カツレツ)は西欧の影響が強い。餃子そっくりなペリメニや肉の串焼きなどはアジアや中東と共通性がある。
モスクワの属する西側地方では貴族的な文化が発達し、近代にフランスやオーストリアの出稼ぎコックを招き入れてきた経緯からフランス料理の影響を残した豪華な食文化が残っている。コース料理の配膳方法は、寒冷地で料理を温かいうちに個別に出すというロシアでの影響がフランスに逆輸入され、世界に広まったもの。

ロシア料理全般では、寒冷地であり保存食を多用することや、煮込み・スープ料理の豊富さに特徴がある。味付けは塩やサワークリームの風味をいかしたシンプルなもの。ビーツ、ライ麦、サワークリーム、様々な香草などは多くの皿に顔を出す食材。

ロシアを代表する飲み物は紅茶と度数の高い蒸留酒であるウォッカ。日本ではジャムを入れるとされているロシアンティーだが、現地ではジャムはお茶請けに供するものであり混ぜて飲むわけではない。実際にはコーヒーやワイン、ビールといった醸造酒も多く飲まれている。

Turandotの写真
Turandot (トリップアドバイザー提供)


日本からの行き方

(空路)
モスクワの空港は3つだが、日本からの国際便があるのは2つ、ドモジェドヴォ国際空港とシェレメチェボ国際空港。

モスクワへの直行便は日本航空の成田-ドモジェドヴォ便が週4日(月水金日)。ロシアのS7航空とのコードシェアとなっている。
ロシアのフラッグ・キャリアであるアエロフロートが成田-シェレメチェボ便を毎日運行している。
アエロフロートはモスクワを経由してロンドン、パリなどのヨーロッパ主要都市を結んでおり、高確率で欧州行きの最安値をたたき出すことで一部に有名。

また、夏期のみ(13年は5/25~9/29)トランスアエロ航空が成田-ドモジェドヴォ便を就航している。週1~2便程度。

欧州の都市を経由する場合は無数に選択肢があるが、費用的・所要時間的にモスクワ直行便が最も合理的。ポピュラーなルートはヘルシンキやウィーンなど。フィンランド航空は直行便が豊富。北欧からサンクトペテルブルグに向かい、国内線でモスクワというルートも。

(陸路・海路)
陸路で有名なのは北京とモスクワを結ぶ中露国際鉄道。総距離7,900km、5泊にわたる鉄道旅行となる。
船で中国に渡り、鉄道を使えば航空機を使わずにヨーロッパに行くことが出来る。かつては最も安くヨーロッパに向かう手段として(またはヨーロッパの旅行者がもっとも安くアジアに向かう手段として)バックパッカーに利用された。もちろん現在でも乗ることが出来る。
ロシアに直行する船舶は境港からウラジオストクに向かうものもある。

(パッケージツアー)
アエロフロート利用の4泊5日ツアーが燃油込みで最安14万円程度。サンクトペテルブルグを周遊すると20万程度になる(1人参加はいずれもプラス5万円程度)。
ホテル代の高さや後述するビザ取得の手間を考えると、パッケージツアーの利点は高い。現地フリーのツアーであれば個人旅行と自由度も大差なく、後述するバウチャー、ビザの手間も省ける。

(空港)
上述通り、モスクワの空港は3つ。

ドモジェドヴォ国際空港(DME)
JAL便が到着するモスクワ最大の空港。モスクワ中心部から南に36km。
空港からは高速鉄道(Aeroexpress)が便利。午前5時から深夜0時半まで30分おきに運行し、中心部のパヴェレツ(Paveletskaya)駅まで45分。料金は320ルーブル。
タクシーの場合は市中心部まで1~2時間程度。モスクワ市内は慢性的に渋滞している。到着ロビー内のタクシーカウンターで手配する。料金はメーターでは無く、目的地によって決まるゾーン制をとっているため定額。市中心までおおよそ2,000ルーブル。声がけしてくるのは白タク、相手にしてはいけない。
他に、マルシュルートカ(Marshrutka)という乗り合いバスや、リムジンバスがあり、それぞれ地下鉄ドモジェドフスカヤ駅までを結んでいる。所要40分程度、80ルーブル。
高速鉄道の運行時間外の到着や、地下鉄の駅からホテルが遠い場合には送迎を頼んでおいた方が無難。

シェレメチェボ国際空港(SVO)
アエロフロート便の到着する空港。モスクワ中心部より北西におよそ29km。かつては古くてサービスの悪い社会主義スタイルの権化のような空港だったが、ターミナルは近代化し高速鉄道が直結するなど、利便性を高めている。2013年にはチューリッヒやレイキャビークを抑え欧州地区のエアポート・サービス・クオリティ・アワードを受賞した。

市内への交通手段・費用・所要時間はドモジェドヴォ空港とほぼ同じ。

ヴヌコヴォ国際空港(VKO)
モスクワ中心部から南西に28km。開港は1941年と第二次大戦のまっただ中。ウクライナ、トルコなど一部の国際線と国内線がメイン。
開港こそ古いものの、改修されたターミナルは近代的で機能的。
市の中心まではやはり高速鉄道が結んでおり、アクセスに支障は無い。




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地理と気候

モスクワとの時差はマイナス5時間。日本の正午が午前7時。サマータイムは2011年に廃止され、現在は無い。

北緯55度に位置し、欧州の主要都市の中でも高緯度に位置する。内陸に位置し、冬の寒さは非常に厳しい。
ベストシーズンは夏場の6月~8月。
10月から3月は昼でもマイナス気温となる。ただしモスクワは年末年始冬の芸術祭で混み合う。


(画像:Google提供)


言語と通貨

公用語はロシア語。独特のキリル文字を用い、文法も難解な言語として知られる。

街中に英語の表示は少なく、観光客を相手にするような場所を除けば英語はほぼ通じない。ホテル、カフェ、チケット売場などが英語で問題無い。外国語が義務教育で必修化されていることから、若者には英語が通じることもある。

通貨はルーブル(RUB)。1ルーブル=2.3円(14年12月時点)。およそ2~3円と覚えておけばよい。

(Wikipedia提供)

ロシアの1人あたりGDPは日本の半分以下だが、物価はかなり高め。
Tripadvisorの「旅行者物価指数」によると、ホテル・タクシー・ディナー・カクテル代すべて東京とほぼ同じ水準となっている。

Tripadvisorは外国人料金が考慮されているかどうか不明だが、旅行代理店などを通した場合のホテル代は東京よりも遙かに高い。
比較的安いのは食品類で、ペットボトルの水が20ルーブル、牛乳が40ルーブル、ビールが30ルーブル程度。ただし外食は高めで、カフェのコーヒーが200ルーブル、ランチは600ルーブル程度が相場。タクシー代は日本とほぼ同じ。
 
商品価格には18%の消費税(VAT:Value Added Tax)が上乗せされている。旅行者向けの還付制度はない。

両替は万国共通でATMによる国際キャッシングが有利。
日本国内でロシアルーブルが両替出来る場所は、成田空港もしくはトラベレックスなど限られている。
日本円からの両替は空港で出来る可能性があるが、両替所に日本円の在庫があるかどうかは不確実。米ドルもしくはユーロを持参した方が良い。
ロシア国内ではルーブルでの支払いが義務づけられている。
再両替は紙幣のみ、両替時にもらう両替証明書が必要。再両替のレートは一般に良くない。

基本的には現金社会で、クレジットカードが使える場所は多くない。旅行者が訪れる高めのレストラン、ホテル、高級ブランド店、グム百貨店の一部の店など。その場合でもVISAかMASTERを推奨。

もともとチップの習慣はあまりなかったが、高級レストランでは代金の10%程度。サービス料が加算されていれば不要。ポーターには30~50ルーブル程度。公衆トイレは有料制。


治安

残念ながらそれほど安全とはいえない状況。
旅行者をねらった犯罪としては、スリ、置き引き、詐欺、スキミングなど。暴行や拳銃を利用した強盗事件も少なくない。夜間の1人歩きは避けること。
写真撮影に関するトラブルもあり、軍事施設や官庁、空港、駅、鉄道鉄橋などにはカメラを向けない方がよい。軍人や警察官も写真は避けた方が無難。不良警官が多く、タカリの口実をあたえるはめになる。パスポートやビザの常時携帯も必須。

民族問題を背景にしたテロが大都市でもたびたび発生しており、2010年には地下鉄で、2011年にはドモジェドヴォ国際空港で多数の死者を出す爆発が起きている。
また、排外主義的なグループがアジア系の外国人を襲うという事件も報道されている。スキンヘッドの集団やサッカーのサポーターなどには近づかないこと。
ヒットラーの誕生日(4/20)、メーデー(5/1~2)、戦勝記念日(5/9)、民族統一の日・10月革命記念日(11月初頭)は酔っ払いが増えたり排外主義的グループが活発化するなど危険な時期。


【ロシア超特別編:ビザと個人手配について】

他の情報と同様、本項はメルマガ発行時点の調査にもとづきます。他の項目にもまして、ビザや入国関連の手続きは急に制度が変わる可能性があります。出入国の手続きについては必ずご自身での確認をお願いいたします。また、以下にご紹介する「空バウチャー」での入国は自己責任でお願いいたします。

全ての旅行者はビザが必要。
ロシア個人旅行の最大の難関がビザと言われている。

観光ビザの申請には、旅行会社が発行する旅行確認書・バウチャーが必要となり、観光ルート・移動手段・宿泊場所・観光プログラム・支払済み証明などの記載が必須。このため、モスクワについてふらりと宿を探す…ということは事実上不可能となっている。

また、郵送申請不可能で直接5箇所の領事部(東京、札幌、函館、大阪、新潟の5箇所)に持ち込む必要があるというところもハードルをかさ上げしている。
さらに、申請時間は平日の9:30~12:30まで。朝から大量のパスポートを抱えた旅行代理店の担当者が順番待ちしている中、処理速度は旧ソ連さながらの非効率で、12:30になると何十名順番待ちがいようと問答無用で窓口閉鎖という理不尽さ。
ビザ申請自体は無料だが、10営業日以内の発行は4,000円、3営業日で1万円と、急ぎになるほど手数料がかさむ仕組み。

以上のような事情のため、パッケージツアーを利用するか、個人旅行であってもビザ・ホテル・移動含めた手配一式をロシアに強い旅行代理店に依頼するのが主流となっている。
旅行代理店は、鉄道やホテルの手配に加えビザ発行を1万円程度で行ってくれる。

現実に英語が通じにくく移動が難しいこともあり、パッケージツアーの利便性は高い。

難点は、ホテルの選択肢がほとんどないこと。モスクワは後述する通り世界一ホテル代が高い都市と言われるほどで、旅行会社の用意するホテルはおおむね高め。その割には古く不便な場所にあったりする。そもそも当局が「外国人が泊まってもよいホテル」をある程度高級なものにしぼっているためやむを得ないのだが、行く気が起きないほど高ければ意味が無い…。

実際にはExpediaなどで手ごろな価格のホテルもある。そういったホテルを自由に選びたい、なるべく安くあげたい、どうしてもおしきせの旅はしたくないという場合は、裏技として空バウチャーを発行してくれる代行業者の存在がある。このバウチャーに記載されたホテル・旅程を出国時にチェックするようなことはない(ではいったい何のための制度…)。
とりあえず、この空バウチャーがあれば申請書類は整うので、それを持ってロシア大使館に個人でビザ申請することは可能。
実際にビザに掲載される情報は滞在都市と滞在期間。有効期限内であれば出入国日がずれても良く、フライト情報がビザに記載されることはない(したがって入国時にチェックされるようなこともない)。ホテルの宿泊証明もビザに記載されるわけではない。したがって、バウチャーさえあれば航空便やホテルは自由に個人手配できる。

確実さを求めるならビザ申請代行業者を利用する手も。ホテルを自分で選んだ場合は、そのホテルに招待状を発行してもらい、代行業者にその情報を伝える。
ロシアビザセンターは、ホテルも航空券の予約も全く不要でビザ申請を受けてくれる。

ロシアに3日以上滞在する場合には外国人登録(レギストラーツィヤ)が必要。通常ホテルに依頼する。
知人宅などに滞在する場合には、受け入れ先に当地の郵便局・役所などでの申請を依頼する。この登録証を携帯していないことで悪徳警官にたかられたという事例も発生している。


市内交通

(タクシー)
正規のタクシーは黄色い車体、ドアや天井にサインが付いている。料金はメーター制だが各社統一されていない。20ルーブル/1km程度。
街頭には白タクの方が多い。値段は交渉制。
道路事情は悪く、慢性的に渋滞している。

(地下鉄)
モスクワのメトロは11路線、総延長300kmを超え、乗客もおよそ650万人/日と世界2位の規模(世界1位は東京;総延長330km・乗客870万人/日)。古くに建てられた駅はロシア様式の建築美が見物。
地下鉄はロシア鉄道と同じ1,520mmの超広軌だが、車両自体は日本の地下鉄と変わらない。

モスクワ メトロ (トリップアドバイザー提供)


モスクワ メトロ (トリップアドバイザー提供)

案内はロシア語のみで、薄暗く地下深い。ロシア語の路線図を持っていると便利。
キップはカード式、料金は距離にかかわらず統一で、1回券28ルーブル。10回券265ルーブル。このほかにICカード式もある。自動改札にカードをタッチしてホーム側に入る。

(鉄道)
モスクワ市内の主要駅は9つ。長距離列車のターミナル駅となっており、行き先の地名にちなんで名づけられている(レニングラード駅はレニングラード行き)。したがって、モスクワにモスクワ駅は無い。ターミナル駅は地下鉄駅と近く乗り換えは便利。

キップは、ツアー会社を経由した場合日本で発券されている。
現地の窓口でもパスポートを提示し購入は可能で、当然現地の方が大幅に安い。ただし行き先、席クラス、日付などで価格が異なる複雑な体系で、ロシア語が話せないと購入は困難。
改札はなく、直接プラットホームに向かい自分の登場する列車を待つ仕組み。駅構内にホームと列車の対応が掲載されているがロシア語なので注意。

ロシアは鉄道大国で、駅や車両は絵になるが撮影は厳禁。また、ターミナル駅周辺の治安はあまり良くない。

近郊列車であれば自動販売機でキップを購入可能。

(バス・トラム)
トラム、トローリーバス、路線バスが市内を縦横に結んでおり、キップも料金体系も共通。
キップは街のあちこちにあるキオスクで売られており、路線図も購入できる。メトロと同じく定額制で1回25ルーブル。
運転手から購入すると28ルーブルと高いが、降りるバス停で教えてくれるので便利。
先頭一番前のドアから乗車し、自動改札機にキップを通して印字、バーを押して印字後のキップを受け取り乗車する仕組み。
マルシュルートカという乗り合いバスもある。料金は30ルーブル程度で、バスのキップは使えない。

メトロ3号線終点のシチョールコフスカヤ駅に巨大な長距離バスターミナルがある。窓口でキップを買う定員制。


ホテル

ビザの件で触れた通り、モスクワのホテル代は世界一高いと言われ、清貧を常とする個人旅行者には厳しい。
イギリスのB2B旅行代理店、ホッグ・ロビンソン・グループ(Hogg Robinson Group)の調査によると、モスクワの商用利用の平均宿泊費は1泊263ユーロとニューヨークやパリを抑えて1位(ちなみに2位はナイジェリアのラゴスで234ユーロ!)。

商用で泊まるのは比較的ランクの高いホテルが多いと思われるが、個人旅行者の選択肢も少ない。最低でも概ね一泊2万円は見ておいた方が良く、一泊5万、7万というホテルもめずらしくない。

ホテルがパッケージとなったツアーであればビザの申請も含め何も考える必要は無いが、その分費用は不明瞭になる。

もう少し自由に選びたい場合は個別手配となる。旅行代理店が、外国人が宿泊可能なホテルのリストを用意しておりそこから選ぶことになる。価格は外国人料金で高めだが費用の透明性はある。ただし、ExpediaやTripadvisorなどのサイトに出ている人気のホテルがリストに無かったり、料金が違ったりといったことも。

「Expediaとかでホテルを自由に選べないの?」
もちろん可能。その場合はホテル情報をビザ代行業者に伝えるか、空バウチャーでビザ申請することになる。
モスクワ市は広いので、ネットで予約する場合は交通の便を良く確認しておきたい。
ホステルやAirbnbの場合は、ビザ申請の際の記入方法などを宿(ホスト)に確認しておこう。

宿泊時は、外国人登録(レギストラーツィヤ)の手続きを忘れずに。


ネット・通信環境

(携帯・モバイル)
ロシア全土をカバーしている携帯会社はヴィンペルコム(ブランド:Beeline)、メガフォン(Megafone、Yota[LTEネットワーク])、モバイル・テレシステムズ(MTS)など。
国土が広大なので、州(エリア)を超えるとローミング扱いになる。

後述の通り、公衆無線LAN網が充実しているため、インターネット接続のみであればそちらを選択するという手も。3Gはあまり速くない。

ネット上で「最もおすすめ」とされているのがアジアでもよく見かけるBeeline(元はロシア資本)。料金プランは、1ヶ月300メガ150ルーブル、同2ギガ390ルーブル、同3ギガ600ルーブルなど。
MTSは1日無制限50ルーブル、1ヶ月3ギガ350ルーブルなど。
Megafonは1日無制限24ルーブル(200メガ以降速度制限)、2ギガ210ルーブルなど。
初期費用(SIM代)がおおむね200ルーブル程度。

大手携帯販売店、Euroset(表記:Евросеть)の店舗がドモジェドヴォ国際空港やシェレメチェボ空港にあり、各社のプリペイドSIMを購入できる。

(Euroset看板)

モスクワでの滞在期間やモスクワ以外の滞在地(あれば)を伝え、英語表記にしたSIMフリー端末を出してプランを選んでもらい、設定まで依頼する。
シェレメチェボには、Eurosetとは別の大手販売店のSvyaznoy(Связной)がある他、Beeline、Megafon、MTSの各キャリアのカウンターもある。

(Svyaznoy社看板)

(WiFi)
WiFiの充実度は素晴らしく、カフェ、バー、鉄道駅、さらには地下鉄車内(2014年12月にサービススタートしたばかり)など、多くの場所でWiFiが通じている。他国同様にマクドナルド、スターバックスでも使える。
ホテルのWifiは有料で高いことも。

市街の多くの地点をBeeline(Gloden Telecom)による公衆無線LANがカバーしている。有料スポットと無料スポットがあり、有料プランの選択肢は、1ヶ月500ルーブル、1日100ルーブル、1時間あたり50ルーブルの3種類。

ドモジェドヴォ国際空港、シェレメチェボ空港それぞれで無線LANを提供している。

5. 旅の本屋 のまど:イベント情報  2014/12/16号 Vol.037


5. 旅の本屋 のまど イベント情報:12月17日(水)口尾麻美さん スライド&トークイベント

Profile
プロフィール

旅の本屋 のまど

東京・西荻窪にある旅の本屋です。音楽、映画、思想、料理、宗教など、さまざまなジャンルから「旅」を感じさせてくれる本をセレクトしています。「旅」に関するイベントも定期的に開催中!
所在地:〒167-0042 東京都杉並区西荻北3-12-10司ビル1F
営業時間:12:00 ~ 22:00 定休日:水曜日
HP:http://www.nomad-books.co.jp/


新刊「旅するリトアニア」発売記念
◆口尾麻美さん  スライド&トークイベント◆
「森と湖の国、リトアニアへようこそ!」

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新刊『旅するリトアニア』(グラフィック社)の発売を記念して、料理研究家の口尾麻美さんをゲストにお迎えして、バルト三国のリトアニアの魅力についてスライドを眺めながらたっぷりと語っていただきます。『トルコで出会った路地裏レシピ』『モロッコで出会った
街角レシピ』など、旅で出会った料理や道具、ライフスタイルに関する著作が多数ある口尾さんが今回注目したのは、「リトアニアリネン」に代表される、さまざまなハンドクラフトが注目されるバルト3国のひとつ、リトアニア。ここ数年、旅好き、雑貨好き、東欧のかわいいもの好き、の女性達の次の旅の目的地として注目を集めています。そこで、本書では、森に深く根ざした生活、首都ヴィリニュスの魅力、郊外の街へのショートトリップ、代表的なハンドクラフトの工房巡り、独特な食文化、魅力的な代表料理のレシピなど、素朴で新しいリトアニアの今が紹介されています。今回のイベントでは、おいしいリトアニア料理の話を中心に、口尾さんが旅で感じたとっておきの貴重なリトアニアの話が聞けるはずです。
口尾さんのファンの方はもちろん、バルト三国やリトアニアに興味のある方や東欧の雑貨や料理が好きな方はぜひご参加下さいませ!なお、参加者の方には、口尾さん特製、リトアニアミートパイのプレゼントがありますよ!
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※トーク終了後、ご希望の方には著作へのサインも行います。


口尾麻美(くちおあさみ)

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料理研究家 Amazigh(アマジィーク)主宰。旅からインスピレーションを受けたジャンルにとらわれない料理を提案。料理教室、書籍、イベントを通して料理やキッチンライフを楽しくするアイデアを発信している。著書に『トルコで出会った路地裏レシピ』、『モロッコで出会った街角レシピ』、『クスクスっておいしい!パリ&モロッコの旅と、とっておきのレシピ』(グラフィック社)など。

口尾麻美さんツイッター
https://twitter.com/asami_kuchio


【開催日時】  12月17日(水)   19:30 ~ (開場19:00)
【参加費】   900円   ※当日、会場入口にてお支払い下さい
【会場】  旅の本屋のまど店内
【申込み方法】 お電話、ファックス、e-mail、または直接ご来店のうえ、お申し込みください。TEL&FAX:03-5310-2627
 e-mail :info@nomad-books.co.jp
 (お名前、ご連絡先電話番号、参加人数を明記してください)
※定員になり次第締め切らせていただきます。
【お問い合わせ先】
 旅の本屋のまど TEL:03-5310-2627 (定休日:水曜日)
 東京都杉並区西荻北3-12-10 司ビル1F
 http://www.nomad-books.co.jp
主催:旅の本屋のまど 
 協力:グラフィック社

編集後記 2014/12/16号 Vol.037


6. 編集後記

 
tabinoteワタベです。日が変わって17日配信となってしまいましたが、16日付でお送りしています。
年末進行と鉄道の遅延が重なり心ならずも予定日翌日の配信となりました。
「帰宅時読もうと思ってたのに!」と楽しみにされていた方には申し訳ございませんでした。その分、今朝の通勤で読んで下さい。

さて、ニュースにもあります通り、スカイマーク問題が決着の見込みです。
一時期低迷していた株価も16日にはストップ高、時価増額は夏頃と比べて倍増(330億円)しました。一儲けした方はラッキーでしたね。
もっとも1機あたり20億円と言われる羽田の国内線発着枠を36も保有するスカイマーク、まだまだ株価が上がっても不思議ではありません。

下川さんの連載ですが、非常に気をつかった表現をされていると感じました。
交通機関でスタッフのモチベーションが下がっていった先に何が起こるか…、そういうきざしをお感じなのかも知れません。

吉田さんの連載は「立ち寄り湯」。確かに雪景色やウインタースポーツはアジアからの旅行者に大人気ですね。日本人も知らないようなマイナーな観光地を探り当てる訪日外国人の情報網にはおどろくことしきりです。各地のTripadvisorを見ているとガイドブックに掲載がないような場所が人気上位だったりしますね。

旅行記はキナバル3回目です。長ーい前置きで2号分も使ってしまいましたが、今回からいよいよ登山開始です。登りはとにかく急いでいたので写真もほとんどなく、記憶もあまりあいまいです。酸素不足だったせいかも…。

復活した青木さんの旅行記はインド2回目。やはり一筋縄ではいかない場所。書けないような話もたぶん沢山あると思います…。
次号はインド旅行のハイライト、ガンガー沐浴だそうです。

「世界あの街」はモスクワです。寒い日が続くのであえて極寒の地を選びました。
真っ白に凍り付いたモスクワ川を想像してみると東京の冬なんて小春日和のよう…。
とにかくロシアはビザ取得の難易度で有名です。行かれる際は最新の情報を入手するかtabinoteまでお問い合わせ下さい。
ソチオリンピックを契機にビザ緩和などの動きがあるかと期待していましたが、ウクライナ問題でそれどころではなくなりました。かの地は今後ますます行きにくくなるかもしれず、今はルーブル下落とサーチャージ値下げという追い風。迷っているならさっさと行った方がいいかもです。
ロシアは調査が大変すぎて(特にSIM)何度もやめようかと思ったほどなので、ぜひガイドとして活用いただきたいですね。
冬はオフシーズンですが芸術祭はじめイベントも多く、穴場の時期ともいえます。

西荻のまどさん、明日(というか今日!)12/17(水)にリトアニアのイベントがあります。

以上、今号も前号同様2万9千字の大ボリュームです。よろしくお願いいたします。

次号は通常の連載はお休みし、昨年同様にメンバー座談会、連載陣のご挨拶といった内容になります。
年明け新連載の告知もできるかもしれません。

次回は12月30日(火)の発行予定です。


tabinoteが旅程調査を担当した「一度行ってみたい 世界の絶景」(洋泉社ムック)。もうご覧いただけましたでしょうか?美しい写真と旅の達人インタビュー、実用的な行き方ガイドで構成された情報量満載の一冊です。ぜひ店頭で手にとってみて下さいね。

166031
一度は行ってみたい世界の絶景(洋泉社)

★特設ページ★


発行:有限責任事業組合tabinote
https://tabinote.jp

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次回は12月30日(火)の発行予定です。