3b. 世界一周ノート 青木大地

仕事をやめ、2013年10月から1年間の予定で世界一周の旅に出ました。

Profile
aoki_s

青木大地(あおき・だいち)

1986年生まれ。日本大学 芸術学部 卒業。
卒業後、大手レンタルビデオメーカーに勤務。店舗、営業を経て世界旅行のため退社。
念願のフリーライターとしてとりあえず1年は過ごせそうです。
同名義のFacebookもよければ見てください。

Facebook

第12回:トバ湖~ブキティンギ

(編集部注:第8回バンコク第9回シドニーの間をつなぐ、シドニー移動前のエピソードです)
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とにかく最初は何が起きているのかわからなかった。だから、それがマジックマッシュルームの作用だと気付くのに少し時間がかかった。
僕は様々な形に変容する雲を見つめながら、そのサイケデリックと呼ばれる鮮やかな世界の住人と化していた。
目を閉じると、これ以上ないくらい眩しい光に包まれた。

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効果は長く、躁鬱を繰り返し、最終的に大きな鬱状態を経てその旅は終わる。
6時間以上、僕はまともではなかった。その時の日記を読み返してもやっぱり少し怖くなるほどに。
トバ湖に住むバタック族の男たちはこのマッシュルームを祝い事や、時に理由がなくても摂取することで人生を謳歌している。
要するに環境なのだと僕は思った。例え依存しても環境さえ整っていれば、その善悪を法に委ねることが果たして必要かどうか。とはいえその刺激が忘れられずバリ島でもマッシュルームを摂取した弱い僕にそんなことを言える訳がないのではあるけれど。

photo6

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トバ湖を後にして、ジャワ島を経てバリまでの縦断をするため、僕は再びバスへと乗り込んだ。世界何大、劣悪交通機関に数えられるスマトラ島のバスはその名の通りの代物で、出発が6時間の遅れ、故障、運転手の忘れ物をとりに関係の無い場所まで3時間と、本当に最低だった。
スマトラ中部の町、ブキティンギからジャワ島ジャカルタへのバスは「30~50時間」という衝撃のアバウトスケジュールで運行していた。

それでも赤道直下をエアコン無し、喫煙可の2,000円エコノミーバスを選んだ僕は今でも後悔はしていない。
太陽が、砂埃が、悪路が、ランブータンという果実を何度もくれる前の座席の男の子が、今も笑いかけてくれている。
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photo12

トバ湖の次に寄ったブキティンギという町も、印象深かった。
時計台を中心にした小さな町の人々は温かく、屋台やマーケットの物価も安く、スマトラ島に生きる人たちを少しだけ身近に感じられる場所だった。
日本軍が掘ったトンネルやインドネシアのグランドキャニオンと呼ばれる景勝地も退屈凌ぎには丁度よく、近郊のムラピ山でのトレッキングで大量の山ビルに襲われたのも、特別な経験のように思える。
地元の高校生とバスケットボールをして、散髪屋で1時間近く長話を聞かされて、やっと僕自身がインドネシアに受け入れられた気がした場所がブキティンギだった。
photo14

photo7

photo9

48時間バスがジャワ島へと渡るフェリー乗り場にさしかかった時、名前も知らない場所で日が暮れた。赤く海に沈む太陽は、車内に渦巻く煙草の煙越しでも美しかった。
マラッカで見過ごした夕日が、こんな所で味わえるなんて、やっぱり旅はどこまでも不条理だ。

次回はジャワ島内の移動を記します。

※文中のマジックマッシュルームに関する見解はtabinoteのものではなく、個人のものです。


世界一周ノート
とりあえずの予定コース:上海→杭州→南寧→ベトナム→ハノイ→ホーチミン→カンボジア→チェンマイ→ラオス→バンコク→パンガン島→ペナン島→マラッカ→メダン→トバ湖→ブキティンギ・・・シンガポール→シドニー…、以降インド、トルコ、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、南米と巡る予定

3b. 世界一周ノート 第12回:トバ湖~ブキティンギ


3b. 世界一周ノート 青木大地

仕事をやめ、2013年10月から1年間の予定で世界一周の旅に出ました。

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青木大地(あおき・だいち)

1986年生まれ。日本大学 芸術学部 卒業。
卒業後、大手レンタルビデオメーカーに勤務。店舗、営業を経て世界旅行のため退社。
念願のフリーライターとしてとりあえず1年は過ごせそうです。
同名義のFacebookもよければ見てください。

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第12回:トバ湖~ブキティンギ

(編集部注:第8回バンコク第9回シドニーの間をつなぐ、シドニー移動前のエピソードです)
photo2
とにかく最初は何が起きているのかわからなかった。だから、それがマジックマッシュルームの作用だと気付くのに少し時間がかかった。
僕は様々な形に変容する雲を見つめながら、そのサイケデリックと呼ばれる鮮やかな世界の住人と化していた。
目を閉じると、これ以上ないくらい眩しい光に包まれた。

photo3
効果は長く、躁鬱を繰り返し、最終的に大きな鬱状態を経てその旅は終わる。
6時間以上、僕はまともではなかった。その時の日記を読み返してもやっぱり少し怖くなるほどに。
トバ湖に住むバタック族の男たちはこのマッシュルームを祝い事や、時に理由がなくても摂取することで人生を謳歌している。
要するに環境なのだと僕は思った。例え依存しても環境さえ整っていれば、その善悪を法に委ねることが果たして必要かどうか。とはいえその刺激が忘れられずバリ島でもマッシュルームを摂取した弱い僕にそんなことを言える訳がないのではあるけれど。

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トバ湖を後にして、ジャワ島を経てバリまでの縦断をするため、僕は再びバスへと乗り込んだ。世界何大、劣悪交通機関に数えられるスマトラ島のバスはその名の通りの代物で、出発が6時間の遅れ、故障、運転手の忘れ物をとりに関係の無い場所まで3時間と、本当に最低だった。
スマトラ中部の町、ブキティンギからジャワ島ジャカルタへのバスは「30~50時間」という衝撃のアバウトスケジュールで運行していた。

それでも赤道直下をエアコン無し、喫煙可の2,000円エコノミーバスを選んだ僕は今でも後悔はしていない。
太陽が、砂埃が、悪路が、ランブータンという果実を何度もくれる前の座席の男の子が、今も笑いかけてくれている。
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トバ湖の次に寄ったブキティンギという町も、印象深かった。
時計台を中心にした小さな町の人々は温かく、屋台やマーケットの物価も安く、スマトラ島に生きる人たちを少しだけ身近に感じられる場所だった。
日本軍が掘ったトンネルやインドネシアのグランドキャニオンと呼ばれる景勝地も退屈凌ぎには丁度よく、近郊のムラピ山でのトレッキングで大量の山ビルに襲われたのも、特別な経験のように思える。
地元の高校生とバスケットボールをして、散髪屋で1時間近く長話を聞かされて、やっと僕自身がインドネシアに受け入れられた気がした場所がブキティンギだった。
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48時間バスがジャワ島へと渡るフェリー乗り場にさしかかった時、名前も知らない場所で日が暮れた。赤く海に沈む太陽は、車内に渦巻く煙草の煙越しでも美しかった。
マラッカで見過ごした夕日が、こんな所で味わえるなんて、やっぱり旅はどこまでも不条理だ。

次回はジャワ島内の移動を記します。

※文中のマジックマッシュルームに関する見解はtabinoteのものではなく、個人のものです。


世界一周ノート
とりあえずの予定コース:上海→杭州→南寧→ベトナム→ハノイ→ホーチミン→カンボジア→チェンマイ→ラオス→バンコク→パンガン島→ペナン島→マラッカ→メダン→トバ湖→ブキティンギ・・・シンガポール→シドニー…、以降インド、トルコ、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、南米と巡る予定