3b. 世界一周ノート 青木大地

仕事をやめ、2013年10月から1年間の予定で世界一周の旅に出ました。

Profile
aoki_s

青木大地(あおき・だいち)

1986年生まれ。日本大学 芸術学部 卒業。
卒業後、大手レンタルビデオメーカーに勤務。店舗、営業を経て世界旅行のため退社。
念願のフリーライターとしてとりあえず1年は過ごせそうです。
同名義のFacebookもよければ見てください。

Facebook

第8回:バンコク-その2

カオサン
(カオサン)

僕のバンコク沈没生活は静かで、比較的日本の引きこもりに近かったけれど、
それはあくまで僕のスタイルで、出会った他の沈没者たちは違っていた。そんな中でも際立っていた人たちを挙げると・・・

・Sくん(26歳)
彼とはホテルが同じで、シク寺院への炊き出しなどもよく共にした。彼の沈没の目的は「大*」だった。日本で定職を持たない彼は、製造業などで食い繋ぐ、レイヴ音楽を愛す常習者だった。1ヶ月をバンコク、1ヶ月をインドで過ごす旅程だった。取り締まりの厳しいタイでは何もせず、インドで大*を謳歌するというのが目的。日本に戻ってからは再び適当な職を見つけ、お金が貯まればもっと長期で海外へ沈没することを考えていた。福島出身の彼は、仕事が何もなければ「除染でもします」と言っていた。
地方という事務職や公務員よりも製造業の方が簡単に手取りを得られる社会構造が生んだ沈没者だった。
大*を売っている場所"
(大*を売っている場所)

・Kちゃん(29歳)
深夜、カオサン通りの路上で手作りのアクセサリーを売る彼は、かなり独特のスタイルをとっていた。日本に帰るのは夏の間の2ヶ月で、それ以外はカオサンを中心に生活。定期的に材料の調達のためインドへ出向き、滞在ビザはカンボジアとの出入国を繰り返して取得している。
アクセサリーは1つ3000円程度で売れ、安宿での生活には困らないらしい。彼は電子機器を一切持たず、体は痩せ細り、何か達観したようにカオサン通りで日々を送っていた。

・Rくん(25歳)
日本ではハイエナと呼ばれるパチプロ生活をしている彼の目的は風俗。大学卒業前に覚えたバンコクでの夜遊びから抜けられず、お金を貯めては日本との行き来を繰り返している。昼間はマッサージに通い、夜は街へと繰り出す。それをお金が尽きるまで行う。他の沈没者と違いホテルも安宿ではなく、食事はファーストフードばかり。電車やバスの乗り方も、アジアの情勢も何も知らないけれど、どこでどんな女が買えるのかだけは誰よりも詳しかった。「これで最後って、毎回思うんですけど」と笑う姿が印象的だった。
人懐っこく、常に日本人を求めている、新世代の沈没者なのかもしれない。

・Yさん(40代)
シク寺院で会ったYさんは30歳で脱サラ、その後はバックパッカーを経て定職に就かなくなる。沖縄等でのリゾートバイトをしては、アジア周遊を繰り返しているとのこと。今回の旅程も未定で、「インド行こうかな」とカレーを食べながら呟いていた。


沈没者たちのバラエティは豊富だ。そして日本の引きこもりとは違い、アクティブだった。それは言い替えれば、現実逃避に対して労力を惜しまないということなのだけれど、どこかそこに気苦労を感じていないという共通点があったように思う。
僕も含め、未来への展望や日本での生活に無関心で、どこか傍観者の様に日々を送っている人が多かった。だからといって決して互いが理解し合うことのない独立性があって、やっぱり、沈没者という逃亡者たちの根は深かった。

ホテルでの生活は彼らとは比べ物にならないくらい単調だったけれど、少し事件も起きた。
隣の部屋に泊まっているタイ人の男の子に片言の英語で話しかけられ、「マッサージの学校に通うためバンコクに来ている。練習させてくれないか?」と言うので、了承し部屋に入ると、何故か彼が上裸になり、信じられないくらい弱々しいマッサージを開始。僕の服を脱がせようとした挙げ句、完全に下腹部を触られたため、退室。翌日、彼はチェックアウトした。
大*沈没者のSくんがホテルのすぐ近くで大*を相場の20分の1で買えたと喜んでいた翌日、僕とホテルを出た所を警官が職務質問。Sくんにのみ執拗なボディチェックが行われる。幸い何も出なかったけれど、職務質問を終えた警官はすぐにどこかに電話。後で気付いたのだけれど、その警官は僕らのホテルに日中入り浸っている奴だった。恐らく、逮捕時の罰金をディーラーと山分けする気だったのだろう。安価な大*の理由はとんでもない落とし穴だった。

こうして出会いと少しの思い出を経て、僕は1ヶ月の沈没生活を終わらせた。
興味があれば自分だけの沈没を見つけに出かけるのも、そんなに悪くはないかもしれない。

次回はバンコク~マレーシア~インドネシア(スマトラ島)の移動を記します。


  • 大*はインドでも違法です。現在、バンコクでは薬物の取り締まりが強化されていて、警官への報酬が値上がりしているそうで、以前はあった賄賂での見逃しが通用せず、即刻逮捕となるそうです。買った瞬間に職務質問という悪質な手口もあるそうです。
  • バンコクで予防接種を行ったので簡単に・・・
    ・場所はBTSサイアム駅から徒歩10分のスネークファームと呼ばれる赤十字の施設。
    スネークファーム
    ・日本の様に順番待ちや丁寧な診断もなく、簡単に行えるのが特徴。
    ・料金も半額以下で、アフリカ渡航のための黄熱や狂犬病や肝炎各種と、日本と全く同じワクチンの接種が可能。
    ・パスポート提示が必須で、接種後には証書も発行してくれる。
    ・因に僕は日本で未接種だった「黄熱(1000B)」「腸チフス(400B)」を接種。
    証書


    Googlemap
    とりあえずの予定コース:上海→杭州→南寧→ベトナム→ハノイ→ホーチミン→カンボジア→チェンマイ→ラオス→バンコク…、以降東南アジアからインド、トルコ、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、南米と巡る予定

3b. 世界一周ノート 第8回 バンコク-その2


3b. 世界一周ノート 青木大地

仕事をやめ、2013年10月から1年間の予定で世界一周の旅に出ました。

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青木大地(あおき・だいち)

1986年生まれ。日本大学 芸術学部 卒業。
卒業後、大手レンタルビデオメーカーに勤務。店舗、営業を経て世界旅行のため退社。
念願のフリーライターとしてとりあえず1年は過ごせそうです。
同名義のFacebookもよければ見てください。

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第8回:バンコク-その2

カオサン
(カオサン)

僕のバンコク沈没生活は静かで、比較的日本の引きこもりに近かったけれど、
それはあくまで僕のスタイルで、出会った他の沈没者たちは違っていた。そんな中でも際立っていた人たちを挙げると・・・

・Sくん(26歳)
彼とはホテルが同じで、シク寺院への炊き出しなどもよく共にした。彼の沈没の目的は「大*」だった。日本で定職を持たない彼は、製造業などで食い繋ぐ、レイヴ音楽を愛す常習者だった。1ヶ月をバンコク、1ヶ月をインドで過ごす旅程だった。取り締まりの厳しいタイでは何もせず、インドで大*を謳歌するというのが目的。日本に戻ってからは再び適当な職を見つけ、お金が貯まればもっと長期で海外へ沈没することを考えていた。福島出身の彼は、仕事が何もなければ「除染でもします」と言っていた。
地方という事務職や公務員よりも製造業の方が簡単に手取りを得られる社会構造が生んだ沈没者だった。
大*を売っている場所"
(大*を売っている場所)

・Kちゃん(29歳)
深夜、カオサン通りの路上で手作りのアクセサリーを売る彼は、かなり独特のスタイルをとっていた。日本に帰るのは夏の間の2ヶ月で、それ以外はカオサンを中心に生活。定期的に材料の調達のためインドへ出向き、滞在ビザはカンボジアとの出入国を繰り返して取得している。
アクセサリーは1つ3000円程度で売れ、安宿での生活には困らないらしい。彼は電子機器を一切持たず、体は痩せ細り、何か達観したようにカオサン通りで日々を送っていた。

・Rくん(25歳)
日本ではハイエナと呼ばれるパチプロ生活をしている彼の目的は風俗。大学卒業前に覚えたバンコクでの夜遊びから抜けられず、お金を貯めては日本との行き来を繰り返している。昼間はマッサージに通い、夜は街へと繰り出す。それをお金が尽きるまで行う。他の沈没者と違いホテルも安宿ではなく、食事はファーストフードばかり。電車やバスの乗り方も、アジアの情勢も何も知らないけれど、どこでどんな女が買えるのかだけは誰よりも詳しかった。「これで最後って、毎回思うんですけど」と笑う姿が印象的だった。
人懐っこく、常に日本人を求めている、新世代の沈没者なのかもしれない。

・Yさん(40代)
シク寺院で会ったYさんは30歳で脱サラ、その後はバックパッカーを経て定職に就かなくなる。沖縄等でのリゾートバイトをしては、アジア周遊を繰り返しているとのこと。今回の旅程も未定で、「インド行こうかな」とカレーを食べながら呟いていた。


沈没者たちのバラエティは豊富だ。そして日本の引きこもりとは違い、アクティブだった。それは言い替えれば、現実逃避に対して労力を惜しまないということなのだけれど、どこかそこに気苦労を感じていないという共通点があったように思う。
僕も含め、未来への展望や日本での生活に無関心で、どこか傍観者の様に日々を送っている人が多かった。だからといって決して互いが理解し合うことのない独立性があって、やっぱり、沈没者という逃亡者たちの根は深かった。

ホテルでの生活は彼らとは比べ物にならないくらい単調だったけれど、少し事件も起きた。
隣の部屋に泊まっているタイ人の男の子に片言の英語で話しかけられ、「マッサージの学校に通うためバンコクに来ている。練習させてくれないか?」と言うので、了承し部屋に入ると、何故か彼が上裸になり、信じられないくらい弱々しいマッサージを開始。僕の服を脱がせようとした挙げ句、完全に下腹部を触られたため、退室。翌日、彼はチェックアウトした。
大*沈没者のSくんがホテルのすぐ近くで大*を相場の20分の1で買えたと喜んでいた翌日、僕とホテルを出た所を警官が職務質問。Sくんにのみ執拗なボディチェックが行われる。幸い何も出なかったけれど、職務質問を終えた警官はすぐにどこかに電話。後で気付いたのだけれど、その警官は僕らのホテルに日中入り浸っている奴だった。恐らく、逮捕時の罰金をディーラーと山分けする気だったのだろう。安価な大*の理由はとんでもない落とし穴だった。

こうして出会いと少しの思い出を経て、僕は1ヶ月の沈没生活を終わらせた。
興味があれば自分だけの沈没を見つけに出かけるのも、そんなに悪くはないかもしれない。

次回はバンコク~マレーシア~インドネシア(スマトラ島)の移動を記します。


  • 大*はインドでも違法です。現在、バンコクでは薬物の取り締まりが強化されていて、警官への報酬が値上がりしているそうで、以前はあった賄賂での見逃しが通用せず、即刻逮捕となるそうです。買った瞬間に職務質問という悪質な手口もあるそうです。
  • バンコクで予防接種を行ったので簡単に・・・
    ・場所はBTSサイアム駅から徒歩10分のスネークファームと呼ばれる赤十字の施設。
    スネークファーム
    ・日本の様に順番待ちや丁寧な診断もなく、簡単に行えるのが特徴。
    ・料金も半額以下で、アフリカ渡航のための黄熱や狂犬病や肝炎各種と、日本と全く同じワクチンの接種が可能。
    ・パスポート提示が必須で、接種後には証書も発行してくれる。
    ・因に僕は日本で未接種だった「黄熱(1000B)」「腸チフス(400B)」を接種。
    証書


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    とりあえずの予定コース:上海→杭州→南寧→ベトナム→ハノイ→ホーチミン→カンボジア→チェンマイ→ラオス→バンコク…、以降東南アジアからインド、トルコ、ヨーロッパ、アフリカ、アメリカ、南米と巡る予定