2. 連載:「タビノート」 下川裕治  2017/08/22号 Vol.090


2a. 連載:「タビノート」 下川裕治

月に何回か飛行機に乗る。最近はLCCの割合が増えている。そんな体験をメールマガジンの形でお届けする。

Profile
shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。

たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

那覇空港がLCCのハブという流れ

 LCCの那覇空港ハブ化が進んでいる。現在、ピーチ・アビエーションは、那覇空港から、台北、香港、ソウル、バンコク路線に就航している。それぞれ1日1便、台北路線は1日2便体制だ。ピーチ・アビエーションが好調なのだろうか。ジェットスター・ジャパンも那覇―シンガポール路線の就航を発表した。
 7月にバンコクから那覇までピーチ・アビエーションに乗った。那覇には朝着くが、出発は午前1時台という、ややつらい時刻。所要時間は4時間半ほど。LCCだから食事のサービスもないから、まあ寝てしまえば……というスケジュールである。
 しかし安い。僕は直前に買ったので7000円ほどだったが、もっと早く予約を入れれば4000円台になるらしい。もっとも就航のキャンペーンがまだ続いているのかもしれない。今後は1万円ぐらいに落ち着くかもしれないが。
 その便の乗客は152人だった。全座席数は180。集客率は80%を超えていた。乗ってみてわかったが、乗客の8割はタイ人だった。残りの1割が欧米人、そして1割が日本人。つまり日本にやってくるタイ人のための便という感がある。
 隣に座っていたタイ人に訊いてみた。
「那覇で乗り換えて大阪まで行きます。家族5人の日本旅行です。航空券代? 正確に覚えていないけど、たぶん往復で7000バーツぐらい。娘がとってくれました。安くて助かります」
 7000バーツは日本円に換算すると2万3000円ほど。キャンペーンをうまく使ったのかもしれないが、LCCの大阪直行便より安い。
 那覇空港で見ていると、タイ人の多くが、那覇での乗り換えだった。那覇空港をハブ的に使っているのだ。
 那覇空港のハブ化には伏線がある。全日空が貨物のハブ空港に使っているのだ。那覇は東アジアからなら2時間ほどの距離。ここで荷物を積み替えるわけだ。
 日本のLCCもこの応用である。最大の利点は、これまで国内線で使っていた機材をそのまま使えることだ。ピーチ・アビエーションが国内線で使っているのはエアバスA320。中型機である。長距離飛行はできないが、バンコクまで4時間半なら運航できる。
 機材の統一は、LCCにとって経費の節減につながる。アジアのLCCであるエアアジアやスクートが大型機を導入し、長距離路線に進出しているが、日本路線などでは苦戦している。それを計算にいれた那覇のハブ化という計画が読み取れる。
 今後、乗り換えというデメリットを超えるほどの運賃を提示できるか、どうか。鍵を握るのは集客率ということだろうか。


那覇空港では写真撮影は禁止。徒歩でターミナルに行くが風が強く、トラブルの原因になるためだとか