2. 連載:「タビノート」 下川裕治  2017/05/23号 Vol.087


2a. 連載:「タビノート」 下川裕治

月に何回か飛行機に乗る。最近はLCCの割合が増えている。そんな体験をメールマガジンの形でお届けする。

Profile
shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。

たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

タイ・ライオンエアが出てこない日本の空

 最近のタイを中心にした旅を思い浮かべてみる。どのLCCに乗ったのだろうか。ウドンターニー、チャンラーイ、ウボンラーチャターニー、ヤンゴン……。すべてタイ・ライオンエアだった。
 LCCはやはり安さで選んでしまう。ウドンターニー空港へは、航空券を買わずに着いた。3つあるブースを全部まわった。タイ・エアアジア、ノックエア、タイ・ライオンエア。それぞれの料金を比べて、タイ・ライオンエアになった。バンコクへの片道が2500円ぐらいだった。これなどは露骨な料金比較である。いまのタイを中心にした中短距離路線を比較していくと、タイ・ライオンエア、タイ・エアアジア、ノックエアの順に高くなっていくことが多い。
 しかしLCCは運賃だけが選択要素ではない。就航時間がその次の要素になるだろうか。この時点で、かつてはタイ・ライオンエアが候補から落ちていくことが多かった。
 安いが運航する時間帯がよくなく、便数も少なかった。
「やっぱりタイ・エアアジアか」
 と思うことは多かった。
 しかし最近はタイ・ライオンエアが残ってくるのだ。着実に便数が増えているのだろう。
 ミャンマーを歩きながら、ある夜、タイのバンコクに向かう航空券を買おうと思った。午後まで用事があったので、夕方以降の便を探した。そこでもタイ・ライオンエアが顔をのぞかせていた。
 予約もスムーズに進んだ。
 1年ほど前のウボンラーチャターニーの夜を思い起こしていた。翌日、バンコクに戻るタイ・ライオンエアの便を予約しようと思ったのだが、支払いの画面で何回か止まってしまった。しばらく間を置き、再度、予約を入れて、やっと買うことができた記憶がある。しかし、ミャンマーではそんなこともなかった。
 着実にスムーズになっていた。そして便数も予想より早いペースで増えている。
 タイ・ライオンエアは、インドネシアの資本とタイ資本でつくられた航空会社だ。客室乗務員の服装もインドネシア風だ。
アジアの空のダイナミズムが伝わってくる。
 しかし日本のLCCに動きはない。日本航空の子会社のジェットスター、全日空の子会社のピーチとバニラ。この3社を追うLCCがなかなか登場してこない。競争の論理が生まれにくい。これから日本のLCCは高くなっていくのかもしれない。
 LCCを育てる根本的な土壌。アジアの自由さの反面、日本の硬直性が気になる。
 なぜ日本は、いつもこうなってしまうのだろうか。

lion
ライオンエアの機内。ごく普通のLCC。その雰囲気が伝わってくる