3a. 上海プチ奇食旅行記 ユムシ慕情編

珍しい食材や一皿など、いわゆる奇食探しをライフワークとして内外広く飛び回ってきた大橋さん。
今回はゲテ食の本場である中国・上海での体験記を2回に渡ってお届けします。
(注:本旅行記は2016年1月時点の記録です、写真はすべて大橋則夫氏および同行のW氏によるもの)

Profile
大橋則夫

大橋則夫(おおはし・のりお)

1976年愛知県蒲郡市生まれ。雑誌や書籍のコラム、企業ブログの執筆などいろいろと手がける。
旅とプロレスとお笑いと民芸品とゲテモノ食いと山登り←NEW!!が好きな馬鹿。

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2016年1月8日(金)晴れ。
宿の最寄り、上海市内の西蔵南路駅から地下鉄を乗り継いで真如駅まで30分ほど。駅から歩いてすぐの「銅川水産市場」へ。築地ほどではないが100軒の店を抱える上海を代表する巨大な水産市場に、地元の珍しい水産物(ゲテモノ)を探してやってきた。到着した頃にはすでに昼時を過ぎ、築地で言うところの場内エリアはすでに静かでけだるい雰囲気が漂っていた。

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倉庫兼、業者向けの店舗だろうか、タバコを吸っておしゃべりしながら、名産の上海ガニを荒々しく仕分ける人々。90年代に開設された建物はレトロな雰囲気があるが、床は汚水と海産物の破片でドロドロしており、正直夏には来たくないと思う。ただ、こちらも近年市場丸ごと移転が検討されているようなので、いかにも中国らしい雰囲気を楽しみに行くなら今のうちかもしれない。

ところ変わって一般客も入れるエリアは多くのお客さんでごった返していた。片言の日本語を話す客引きのお兄さんも多い。新鮮で(中国にしては)安価に海産物が手に入るという事で、この市場は地元でも人気らしい。

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ホタテにミル貝、ウニ、イカ、車エビ、ヒラメ、サーモン等日本でもお馴染みの海産物の他に、グロテスクな模様のタウナギや雷魚、日本では貝を食害する嫌われ者でしかないツメタガイ、食用のイソギンチャク、図鑑でも見たことない謎の巻貝などなど、日本の市場ではほとんど見られない生き物もたくさんいてテンションが上がる。

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(ミル貝)

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(イソギンチャク)

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(マテ貝)

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(謎巻貝)

そして、今回の目玉であるユムシが水槽でウニョウニョと元気に蠢いていた!ユムシとは海の干潟に穴を掘って棲む、フニャフニャで管状の無脊椎動物。釣り人の間ではタイ等の高級魚の釣り餌として知られている。日本でも九州や北海道の一部地方では珍味として食べられたりするらしい。
まあ大抵の人はこれを見て、食ってみようとは思わないでしょう。水で膨らませた使用済みコンドームのようなフォルム、それにウネウネしたその動きにきっと物怖じしてしまうはず。何でこんなもの食わなあかんの、罰ゲームなのか、と。

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(ユムシ)

しかし生き物好きの私にとってユムシは、中学生の時に敬愛するムツゴロウこと畑正憲氏のエッセイで「ヤワラカク、口当たり良き物なり。東大教授ご推奨の銘柄なり」との記述を目にし、それ以来20年以上ずーっと食べることを夢見ていた物体なのだ。

そんな憧れの食材もこの市場では一斤(500g)単位以上でしか買えないらしく、この時は涙を飲んで諦めることにした。流石に500gも食ったら致死量かもしれないし、余らせたり持ち帰ったりすることになるのも何かイヤダ。大変だし。それにあと1日あるから、どこか上海市内のレストランで食べられるだろうと。

ウシガエルを捌く血まみれのお姉さんにカメラを向けて軽く睨まれつつ、銅川水産市場を後にした。

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結局その日の夕方、今回同行のW氏にユムシ料理を食べられる店を検索してもらい、新世界の近くにある海鮮レストラン「東菜・海上」へ。これまでに入った屋台チックな店と違い、落ち着きがあり格調高い店内に期待大。やっとユムシが食べられる!

ウキウキしつつ注文したのは、ユムシを使った「ユムシとニラの炒め物」と、銅川水産市場でも売ってたツメタガイを茹でたもの。ドキドキしながら料理を待つ。

・・・

09_R
ついに待望のユムシ料理とご対面。20年間夢見たユムシ料理が、今眼前に!

中国語でユムシは「海腸」と書くようだ。まさに読んで字の如し。味は高級な貝に似て独特な甘みがあり、ほんのりと磯の香り。コリコリとした面白い食感もあって美味しい。栄養価も非常に高く、貧血や高血圧に悩む人にとっては薬みたいな生き物らしい。これは一食の価値ありかと。見た目も生前の不気味さは無く、ちょっと変わったキクラゲ料理だと思えば全然OKだし。

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ツメタガイの方はと言うと、予想していたよりも美味くて驚きました。ツメタガイは足を殻よりも大きく広げて住処の干潟を移動するため、足がやたらと大きく食べ甲斐があります。足の食感は筋肉質でゴリゴリと固く、肉食の貝のためか肝も含め旨みが強い感じ。ツメタガイ、日本でも食用として売ればいいのにな。

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(盛り合わせ)

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(同時に頼んだサメ皮の和えもの)


いやー、ユムシを食べられて本当に満足。これだけで上海に来て良かったと思う。
その後調べてみたところによると、どうやら韓国では普通にユムシを生で食すらしい。これは、韓国に行かねば!

(次回に続きます)

3a. tabinote旅行記 上海プチ奇食旅行記 ユムシ慕情編


3a. 上海プチ奇食旅行記 ユムシ慕情編

珍しい食材や一皿など、いわゆる奇食探しをライフワークとして内外広く飛び回ってきた大橋さん。
今回はゲテ食の本場である中国・上海での体験記を2回に渡ってお届けします。
(注:本旅行記は2016年1月時点の記録です、写真はすべて大橋則夫氏および同行のW氏によるもの)

Profile
大橋則夫

大橋則夫(おおはし・のりお)

1976年愛知県蒲郡市生まれ。雑誌や書籍のコラム、企業ブログの執筆などいろいろと手がける。
旅とプロレスとお笑いと民芸品とゲテモノ食いと山登り←NEW!!が好きな馬鹿。

01_R

2016年1月8日(金)晴れ。
宿の最寄り、上海市内の西蔵南路駅から地下鉄を乗り継いで真如駅まで30分ほど。駅から歩いてすぐの「銅川水産市場」へ。築地ほどではないが100軒の店を抱える上海を代表する巨大な水産市場に、地元の珍しい水産物(ゲテモノ)を探してやってきた。到着した頃にはすでに昼時を過ぎ、築地で言うところの場内エリアはすでに静かでけだるい雰囲気が漂っていた。

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倉庫兼、業者向けの店舗だろうか、タバコを吸っておしゃべりしながら、名産の上海ガニを荒々しく仕分ける人々。90年代に開設された建物はレトロな雰囲気があるが、床は汚水と海産物の破片でドロドロしており、正直夏には来たくないと思う。ただ、こちらも近年市場丸ごと移転が検討されているようなので、いかにも中国らしい雰囲気を楽しみに行くなら今のうちかもしれない。

ところ変わって一般客も入れるエリアは多くのお客さんでごった返していた。片言の日本語を話す客引きのお兄さんも多い。新鮮で(中国にしては)安価に海産物が手に入るという事で、この市場は地元でも人気らしい。

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ホタテにミル貝、ウニ、イカ、車エビ、ヒラメ、サーモン等日本でもお馴染みの海産物の他に、グロテスクな模様のタウナギや雷魚、日本では貝を食害する嫌われ者でしかないツメタガイ、食用のイソギンチャク、図鑑でも見たことない謎の巻貝などなど、日本の市場ではほとんど見られない生き物もたくさんいてテンションが上がる。

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(ミル貝)

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(イソギンチャク)

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(マテ貝)

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(謎巻貝)

そして、今回の目玉であるユムシが水槽でウニョウニョと元気に蠢いていた!ユムシとは海の干潟に穴を掘って棲む、フニャフニャで管状の無脊椎動物。釣り人の間ではタイ等の高級魚の釣り餌として知られている。日本でも九州や北海道の一部地方では珍味として食べられたりするらしい。
まあ大抵の人はこれを見て、食ってみようとは思わないでしょう。水で膨らませた使用済みコンドームのようなフォルム、それにウネウネしたその動きにきっと物怖じしてしまうはず。何でこんなもの食わなあかんの、罰ゲームなのか、と。

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(ユムシ)

しかし生き物好きの私にとってユムシは、中学生の時に敬愛するムツゴロウこと畑正憲氏のエッセイで「ヤワラカク、口当たり良き物なり。東大教授ご推奨の銘柄なり」との記述を目にし、それ以来20年以上ずーっと食べることを夢見ていた物体なのだ。

そんな憧れの食材もこの市場では一斤(500g)単位以上でしか買えないらしく、この時は涙を飲んで諦めることにした。流石に500gも食ったら致死量かもしれないし、余らせたり持ち帰ったりすることになるのも何かイヤダ。大変だし。それにあと1日あるから、どこか上海市内のレストランで食べられるだろうと。

ウシガエルを捌く血まみれのお姉さんにカメラを向けて軽く睨まれつつ、銅川水産市場を後にした。

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結局その日の夕方、今回同行のW氏にユムシ料理を食べられる店を検索してもらい、新世界の近くにある海鮮レストラン「東菜・海上」へ。これまでに入った屋台チックな店と違い、落ち着きがあり格調高い店内に期待大。やっとユムシが食べられる!

ウキウキしつつ注文したのは、ユムシを使った「ユムシとニラの炒め物」と、銅川水産市場でも売ってたツメタガイを茹でたもの。ドキドキしながら料理を待つ。

・・・

09_R
ついに待望のユムシ料理とご対面。20年間夢見たユムシ料理が、今眼前に!

中国語でユムシは「海腸」と書くようだ。まさに読んで字の如し。味は高級な貝に似て独特な甘みがあり、ほんのりと磯の香り。コリコリとした面白い食感もあって美味しい。栄養価も非常に高く、貧血や高血圧に悩む人にとっては薬みたいな生き物らしい。これは一食の価値ありかと。見た目も生前の不気味さは無く、ちょっと変わったキクラゲ料理だと思えば全然OKだし。

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ツメタガイの方はと言うと、予想していたよりも美味くて驚きました。ツメタガイは足を殻よりも大きく広げて住処の干潟を移動するため、足がやたらと大きく食べ甲斐があります。足の食感は筋肉質でゴリゴリと固く、肉食の貝のためか肝も含め旨みが強い感じ。ツメタガイ、日本でも食用として売ればいいのにな。

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(盛り合わせ)

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(同時に頼んだサメ皮の和えもの)


いやー、ユムシを食べられて本当に満足。これだけで上海に来て良かったと思う。
その後調べてみたところによると、どうやら韓国では普通にユムシを生で食すらしい。これは、韓国に行かねば!

(次回に続きます)