2b. 連載:「旅のしりとりエッセイ」 吉田友和  2016/1/12号 Vol.063


2b.「旅のしりとりエッセイ」 吉田友和

Profile
プロフィール

吉田友和(よしだともかず)

1976年千葉県生まれ。出版社勤務を経て、2002年、初海外旅行にして夫婦で世界一周旅行を敢行。旅の過程を一冊にまとめた『世界一周デート』で、2005年に旅行作家としてデビュー。「週末海外」というライフスタイルを提唱。国内外を旅しながら、執筆活動を続けている。その他、『スマートフォン時代のインテリジェント旅行術』(講談社)、『自分を探さない旅』(平凡社)、『LCCで行く! アジア新自由旅行』(幻冬舎)、『めざせプチ秘境!』(角川書店)、『3日もあれば海外旅行』(光文社)など著書多数。
旅行作家★吉田友和 Official Web

しりとりで旅する 第54回 吉田友和

か 書き直し

 新年早々、パソコンの調子が悪い。使っていると、なぜか突然プッツリと電源が落ちるのだ。ACアダプタを繋いだ状態だと大丈夫なので、バッテリー絡みのトラブルを疑っている。とりあえずは電源のあるカフェを探すなどして使っているが、モバイルノートなのにバッテリー駆動ができないのは辛い。
 本当に何の前触れもなくいきなり落ちるから、ムキーッとなる。原稿の書き途中で落ちてデータが消えたら最悪なので、文章を入力しながら頻繁に「Ctrl+S」(ファイル保存のショートカットキーですな)を押すようにしていたのだが——それでもダメだった。
 実はこの原稿、書くのは二度目である。最初に書いたものは消えてしまった。いや正確に言えば、たぶん保存自体はされているのだが、ファイルが壊れてしまった。正直、泣きそうである。あまりにも悔しいので、まずは顛末を書かせてください、すみません。
 さっきまでいたカフェには電源がなく、仕方なくバッテリーでPCを駆動していた。最初のうちは調子が良く、原稿がほぼ書き上がり、あとは推敲するだけだった。
「今日はなんとか持ちこたえたかな」
 と油断したのも束の間だった。突如として画面がブラックアウトした。いつもの症状だ。
「まあでも保存はしてるから」
 と電源を再度投入し、ファイルを開いたらアレッとなった。なんと真っ白。文字データがすべて空白に置き換わっているようだ。対処法はないものかと、ネットで調べたりもしたが、無駄な抵抗だった。原稿はもう戻って来ない。書いた原稿が完全に消えてしまったのは初めての経験だ。あぁ、意気消沈。
 ノマドワーキングもいいことばかりではないのかもしれない。少なくとも、事務所などで据え置きのマシンで仕事をしていたら起こりえないトラブルだ。ともあれ、仕方がないので再度書き直すことにして、いまに至っている。以上、ここまでの経緯説明でした。
 もう一度同じ事を書く気になれないので、少し話を変えてみるかな。というより、まずはこのパソコンを早急にどうにかしなければならない。あきらめて、新しく買うか。というより、それしか手はないだろう。修理に出すとしても、そのあいだの代替機は必要だし。無駄な出費は痛いが、原稿が消えるマシンを使い続けるよりはマシだ。
 それで、久々にパソコンを物色してみたのだけれど、いやはや驚いた。ずいぶんお安くなっているのね。小型軽量でモバイルに特化したノートといえば割高なイメージがあったのだが、そうでもないらしい。近頃はタブレットが主流となり、旧来のノート(クラムシェル型とかいうのかな)はあまり話題に上らないから、いまさら気がついたのだった。
 調べてみると、1キロを切る軽さで、(カタログスペック上は)10時間以上もバッテリーが持つ製品でも、3万円前後で売られていることが分かった。レビューを見ると、実際のサイズ感はMacBook Airと同等、みたいなことが書かれている。もちろん、CPUなどのスペックはそこそこなのだけれど、MBAや現在使っているVAIO Proとの価格差を考えれば不満はない。こんな値段で利益が出るのか、心配になるほど安い。
 具体的な製品名を記すのは控えるが、主に台湾メーカーの製品である。このジャンルでコスパを追求するなら、いまは台湾メーカーの独壇場になってしまうようだ。
 そういえば、一昔前に流行ったネットブックも火付け役は台湾メーカーだったなあ。あれも当時旅先でよく見かけた。小さくて持ち運びしやすいガジェットは、旅好きの琴線に触れる。ただネットブックは安さを追求するあまり、性能面での妥協が目立った。最近の格安モバイルノートは、ネットブックとは比べものにならないほどまともなようだ。
 台湾の話になったついでに書くと、依然として台湾旅行が根強い人気らしい。JATA(日本旅行業協会)によると、この年末年始の海外旅行で、行き先ランキングの一位が台湾だったそうだ。昨年の二位から、遂にはハワイを抜いてのランクアップ。円安や不穏な世界情勢など、海外旅行自体に強い逆風が吹く中で、その躍進ぶりが光る。
 台湾はいわゆる安近短(安くて、近くて、短い)の要素を満たす旅先であることに加え、治安の良さも特筆すべきレベルである。よく言われるように親日的なので、日本人としては居心地はすこぶるいい。僕自身もすっかりハマってしまい、昨年は五回も訪問した。台湾だけで一冊、本を書いたりもした。すっかりリピーターという感じなのだが、今年も1月から早々に台湾へ渡航予定である。
 暮れにLCCのセールをチェックしていたら、台湾路線があまりにも安かったので衝動的にポチってしまったのだ。往復で1万円もしなかった。ここ数年でLCCの台湾路線が爆発的に増加したことも、リピーター化を後押ししている。気軽に行けるのは本当にありがたい。
「だって、安かったから……」
 とくに目的はないのだけれど、なんとなくフライトの予約を入れてしまう。行ったら行ったで楽しいし、美味しいものにもありつけるから、どんどんその魅力の虜になっていく。
 もちろん、安さければなんでもいいわけではない。どことは言わない(言えない)が、どんなに安くても行く気になれないデスティネーションもある。きっかけは値段だったとしても、あくまでも台湾だからこそ何度でも訪れたいと思えるのだろう。
 これは前述した格安パソコンの話とも似ているかもしれない。ただ単に高いか安いかではなく、内容を見極めたうえで価格メリットが感じられるかどうかが重要だ。やはり、意識すべきはコストパフォーマンスなのだ。
 偶然というか、必然というか、今回のお題は「か」であった。ならば、タイトルは「書き直し」とするしかないだろうなあ。当初の原稿では別のテーマだったのだけれど……。というわけで、今年もよろしくお願いします。

OLYMPUS DIGITAL CAMERA

※書き直し→次回は「し」がつく旅の話です!