4.世界あの街この街

このコーナーでは旅行先として人気の様々な都市を詳しく紹介していきます。

第55回 ドゥブロヴニク


Cheap Dubrovnik Tours (トリップアドバイザー提供)

クロアチア共和国・国旗

(画像:Wikipedia)


見どころと特徴

クロアチアは近年そのすばらしい景観が知られるようになりヨーロッパ観光の一大デスティネーションになりつつある。その中でも最大の観光都市が「アドリア海の真珠」と呼ばれるドゥブロヴニク。碧い海岸と中世の街並みがつくりだすコントラストは絵に描いたような絶景。

Pile Gate to Fort Lovrijenac   Google Maps
(画像:Google)


空港からシャトルバスでおよそ30分、旧市街の西にあるピレ門(Pile)に到着する。門の周辺はカフェやレストランでにぎやかな雰囲気。
旧市街は全長2kmほどの城壁に囲まれたコンパクトなエリアだが城壁は威圧的なほど高く、見どころも一日では見きれないほど多い。
ゲートをくぐると中世がそのまま現れたような旧市街の街並みが拡がっている。

Pile Gate (トリップアドバイザー提供)

ピレ門から東にのびるのはプラツァ通り。旧市街きっての目抜き通りで、両側にはカフェやレストラン、お土産屋が並んでおり、旅行者が夜遅くまで行き交う。夜はライトアップされ、石畳や壁面が幻想的な光景をつくりだす。




Placa Thoroughfare (Stradun) (トリップアドバイザー提供)

プラツァ通り沿い、ピレ門を抜けたすぐ左手にある建物はフランシスコ会修道院。院内にはヨーロッパで3番目に古いという薬局(創業1391年!)があり、現在でもスキンケア製品などを販売している(ちなみにヨーロッパ最古の薬局はイタリアのフィレンツェ)。

Franciscan Monastery (トリップアドバイザー提供)

旧市街でも絶好のフォトスポットは城壁の北西にあるミンチェタ要塞。城壁の最高地点となっており、赤い屋根が連なる旧市街全景を見渡せる。市街と海をカメラにおさめようと、一眼片手の観光客が列をなす。



Minceta Fortress (トリップアドバイザー提供)

通りをまっすぐ西に行くと城壁のつきあたり、ルジャ広場へ出る。総督邸や宮殿、ドミニコ会修道院といった古の建物群が並んでいる。総督邸は現在歴史博物館として公開されている。

Rector’s Palace (トリップアドバイザー提供)

城壁の東には旧港があり、碧い海に白い建物やフェリーが映える。ここから市街の丘陵をふりかえると青と緑のコントラストが美しい。このエリアにはレストランも多く、夕方には夕陽やシーフード目当ての客が集まる。


Rector’s Palace (トリップアドバイザー提供)

ドゥブロヴニクの美しい街並みは市民の努力のたまもの。わずか20年ほど前までは内戦が続いており、街は燃えてガレキとなった。旧市街にあるミュージアム、「ウォー・フォト・リミテッド」は往時の様子を写真で生々しくつたえている。

War Photo Limited (トリップアドバイザー提供)


旧市街の北にそびえるのはドゥブロヴニク観光のハイライトである標高412mのスルジ山。城壁の北側にロープウェイ乗り場があるが、時間に余裕があり健脚なら徒歩で登ってみてもいい。
山頂からはアドリア海と空、赤い旧市街を見下ろす絶景を堪能できる。

Mount Srdj Ropeway (トリップアドバイザー提供)

山頂には砦が築かれ、ドゥブロヴニク防御の要として街を見下ろしていたが先の内戦で破壊された。現在その砦跡は独立戦争博物館として公開されている。

Museum of Croatian War of Independence (トリップアドバイザー提供)

旧市街の城壁外、ピレ門近くの海に向かって砦がせりだしている。このロヴリイェナツ要塞は市街や丘陵を違った確度から眺めることのできる穴場スポット。

Lovrijenac (トリップアドバイザー提供)

ロクルム島は旧市街からほど近く、沖合700mに浮かぶ緑の島。日に何便もフェリーが運行している。
砦や修道院などの歴史的な建物からビーチ、植物園まで見どころが多く、ドゥブロヴニクからの気軽な旅先として人気が高い。

Island of Lokrum (トリップアドバイザー提供)

ドゥブロヴニク周辺には伝統的な生活を守る素朴な村々が拡がる。手工芸の店や青空市などもありお土産さがしにもぴったり。現地ツアーもいろいろと用意されているので、せっかくだからのんびりと巡ってみたい。

Cavtat Old Town (トリップアドバイザー提供)

一日歩いてホテルに戻ると窓の外には日暮れの絶景が拡がる。これからまた旧市街のプラツァ通りに戻ってもいい。

Dubrovnik Top Tours (トリップアドバイザー提供)



Lokanda Peskarija (トリップアドバイザー提供)

日本人にあまりなじみのないクロアチア料理。クロアチア産のワインやチーズ、オリーブオイルなどは欧州でも高く評価されており、実は隠れた美食の国である。
複雑な歴史を反映して食文化は地域によりかなり異なる。首都ザグレブなど内陸部はオーストリアやハンガリーの影響を受けており、カツレツやパプリカ煮込みなど肉料理が中心。
一方でドゥブロヴニクの属する沿岸はアドリア海の対岸イタリアの影響が強く新鮮なシーフードが名物で、オリーブオイルやチーズを多用する。パスタやリゾットなどのイタリア料理の他、シーフードのグリルやフライなどもレベルが高い。

ストリートフードとしてはピザや濃厚なチーズのサンドイッチ、ジェラートなどがおいしい。


Konoba Dubrava (トリップアドバイザー提供)


日本からの行き方

(空路)
現在日本とクロアチアを結ぶ直行便はない。
オフシーズンの場合はザグレブを経由して訪れるのが基本で、日本→経由地→ザグレブ→ドゥブロヴニクと最低2度の乗り継ぎを必要とする。
オンシーズン(3月~8月)の場合は周辺国から直接ドゥブロヴニク空港に向かう便があり、日本からはフィンエアーのヘルシンキ便、ルフトハンザのフランクフルト便、ブリティッシュ・エアウェイズのロンドン便、オーストリア航空のウィーン便などが利用しやすい。この時期はLCCの運航もあり、イージージェットやノルウェイジアンも乗り入れている。ただしドゥブロヴニクはリゾート。着替えやお土産など荷物が多めになりそうならレガシィキャリアを選んだ方が安くつくかもしれない。
価格はフィンエアー利用オンシーズンの場合で日本から往復12万円~。

(陸路・海路)
ザグレブからドゥブロヴニクまでの長距離バスが一日8便程度、所要は約10時間~12時間で、料金は200~250クーナ程度と安い。
なお、ザグレブまでの国際鉄道はシリア難民問題の影響を受けて運行予定が変わったりスケジュールが乱れたりする可能性がある。
オンシーズンまではアドリア海対岸のイタリア・バーリ(Bari)からドゥブロヴニク行きのフェリーが運行している。所要5時間半、料金は40~120ユーロ程度。

(パッケージツアー)
トルコ航空や中東系のエアラインを使った6日間のツアーでオフシーズン12万円~。オンシーズンはホテルレート高騰のため20万円~と高め。

(空港)
ドゥブロヴニク国際空港(DBV)は市街の南東方面23kmほどの場所にある。国際線の多くはオンシーズンの運行となり、オフシーズンは国内線(ザグレブ便)がほとんど。
空港からはシャトルバスが利用できる。空港-旧市街の西門(Pile)-グルージュ港(Gruz Harbour)間を結んでおり、旧市街まで約30分、40クーナ。
タクシーの場合は旧市街まで250クーナ程度。ホテルの多い西部の半島部分、ラパッド(Lapad)やバビン・クック(Babin Kuk)まで300クーナ程度。


地理と気候

クロアチアはイタリアから見てアドリア海を挟んだ東側。スロベニア、ハンガリー、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロと国境を接する。
クロアチアの国土はアドリア海沿いと内陸に分かれた逆U字型になっており、ドゥブロヴニクは海岸沿い最南部。ボスニア・ヘルツェゴビナの都市ネウムによってクロアチア本土と分断されている。
クロアチアの内陸部は寒暖差の大きい大陸性気候だが、ドゥブロヴニクは対岸のイタリアと同じく地中海性気候に属する。7~8月の最高気温は30度程度、最低気温は20度程度となる。日射しは強いが湿度も低く快適。11~3月頃までは最高気温は15度程度、最低気温は7度程度と東京よりもおだやかだが、雨がちの日が多い。5~6月、9~10月頃は暑すぎず寒すぎず過ごしやすい。

旅行のベストシーズンは5~10月頃。特に7~8月はホテルの予約もすぐにうまってしまう。
11月~2月頃まではオフシーズンとなり、大波や強風でフェリーやロープウェイが欠航することも。さらにリゾートホテルやレストランは閉館するところもあるので注意。
2016年のイースターは3月26~28日で、この時期は周辺の村々ふくめ祝祭ムード。

Hotel Kazbek (トリップアドバイザー提供)

クロアチアと日本の時差はマイナス8時間。日本の正午が午前4時。サマータイムは3月最終日曜~10月最終日曜で、この間の時差はマイナス7時間。

Google マップ
(画像:Google提供)


言語と通貨

公用語はクロアチア語であるが、英語の通用度は高い。観光客が行くような場所ではほとんど英語で意思疎通ができる。
通貨はクーナ(HRK)。1ユーロ=17.5円(15年11月時点)。およそ20円弱と覚えておけばよい。

中欧・東欧は物価が安いのではと期待するかもしれないが、ドゥブロヴニクは観光地価格が横行している。特にハイシーズンはホテルが高い。
目安として、3つ星ランクのホテルがオフシーズンで6~7千円、オンシーズンではおよそ倍。タクシーは初乗り500円程度、市街からホテルに戻る10分程度の乗車で1000円程度。
外食は欧州の中ではやや安い方で、日本並みといえる。一品にワインをつけて1500円~3000円程度。カフェでコーヒーとピザをつまんで700円程度。チップはサービス料に含まれており不要なことが多い。

商品代金に対して北欧並みに高い25%の消費税がかかっている。一度に740クーナ以上の買い物で一部が還付される。購入店で免税書類をもらっておき、クロアチアまたはEU圏出国時に税関で手続きをする。

なお、隣接するネウムはボスニア・ヘルツェゴビナ領であり消費税が安い。長期滞在なら買い出しにネウムのスーパーを利用できる。

支払いはクレジットカードを基本とし、いくらかのユーロ現金を手元にもっていけば十分。ホテルやレストランではユーロがそのまま使える場合が多い。
ユーロは日本で両替していくのが鉄則。クロアチア・クーナは日本で両替することができないため、現地で両替屋に行くかクレジットカードのキャッシングを利用する。バスやタクシー、ローカルのお店はクーナ払い。

チップはルームサービスやポーターに1ユーロ程度、タクシーではおつり切り上げ程度で十分。

※クーナ紙幣

(画像:Wikipedia)


治安とビザ

クロアチアの治安は欧州の中でも良好とされるものの、ドゥブロヴニクの場合は観光地であることもあってスリや置き引き被害が多い。ただし他国に比べてひったくりや強盗などの荒っぽい事案は比較的少ない模様。
レストランやカフェはもちろん、バーでも屋内での喫煙は禁止されている。

なお、ドゥブロヴニクを含むクロアチア沿岸南部は旧紛争地域にあたり、地雷撤去活動が続いている。観光客が訪れるようなエリアでは心配ないが、郊外の未舗装地域や山野には立ち入らない方が無難。
また、シリア難民への対応に伴い、ハンガリーやセルビアなどとの国境付近では交通が制限される可能性がある。在クロアチア日本大使館のサイトなどで最新情報を入手しておいた方がよい。

3ヵ月以内の観光滞在はビザ不要。


市内交通

旧市街を散策するだけなら徒歩でOK。
地下鉄やトラムなどはないので、旅行者が使う足としてはバスかタクシーとなる。

(バス)
バスチケットはキオスクか乗車時に運転手から購入。バス料金は市内共通でキオスクの場合12クーナ、運転手から買う場合は15クーナ。バス停ごとのアナウンスはないので、乗車時に運転手に降車希望バス停をつたえるか、Googleマップなどを使って現在地を確認しておこう。

ドゥブロヴニク・カードはさまざまな特典がついたお得なカード。1日券、3日券、1週間券の3種類あり、1日券は公共交通期間無制限乗り放題、3日券は10回乗り放題、1週間券は20枚乗り放題。さらに城壁やギャラリーなど8つの施設がフリーパスとなり、レストランやカフェのディスカウントも付く。1日券が150クーナ、3日券が、1週間券が200クーナ、1週間券が250クーナ。

(タクシー)
メーター制。流しのタクシーは一般的ではなく、タクシースタンドから乗るか(旧市街西門前、グルージュ港、ラパッドのホテル地区などにある)、電話などで配車する。
初乗りが25クーナ、以降1kmごとに8クーナ。荷物1つにつき2クーナ。チップは基本不要で、おつりの切り上げ程度でOK。
グルージュ港から旧市街の西門まで乗った場合70クーナ。


ホテル


The Pucic Palace (トリップアドバイザー提供)

ホテルの多くはラパッド地区やバビン・クック地区に位置している。旧市街城壁内にあるホテルは数件しかなく、すぐに予約も埋まる。
ホテルの価格はシーズンによって値段の変動が激しい。たとえば3つ星ランクのホテルが3月なら7千円程度だが8月にはおよそ倍の1万6千円程度になる。中には3倍近くになるという宿もあるが、それでも予約がすぐに埋まってしまうことも。実際、11月~2月頃まではオフシーズンとなり、閉館しているホテルも多い。ホテル代を考えるならピークを外した4~6月、9~10月あたりがねらいめとなる。

ホステル、ゲストハウスならだいぶ手ごろになり、個室が4~7千円台、ドミトリーなら千円台もある。

個人宅の部屋貸しサービスAirbnbならホテルの半額以下で個室が探せる。レビューや立地をよく見てからにしよう。
なお、クロアチアに48時間以上滞在する場合は警察への滞在届が必要。警察署にある所定の用紙(「フォーム8a」)に記入し提出する。ホテルやホステルの場合は施設側が代行してくれるが、Airbnbの場合は手続きをホストが行ってくれるかどうか確認しておいた方がよい。


ネット・通信環境

(携帯・モバイル)
クロアチアの大手通信事業者はT-mobile(Hrvatski Telekom)、VIP、Tele2、MVNOのbonbonなど。

VIPのSIMはネット上の情報も豊富で、もっとも旅行者にとって手軽なオプションかもしれない。10日間有効のツーリストSIM(SIM card for your tablet)があり、使い放題で11ユーロ。通話可能なSIM(SIM card for your phone)の場合は通話が0.06ユーロ/分、データが0.01ユーロ/MB。データを1ギガ使えば10ユーロ。

bonbonもツーリストSIMを出している。T-Mobileの電波を使用しておりカバレッジもよい。2015年11月現在で5ギガ6ユーロという格安プランがある。

T-mobileの場合、契約義務のない(Bez ugovorne obveze)プランの「NAJBOLJA MOBILE NET」が2Gで月間89ク-ナ(最大21Mbit/s)。7ギガで159クーナ(最大75Mbit/s)。

Tele2の場合、1ギガのSmartプランが35クーナ、1.5ギガのTotalnaが49クーナ。手数料無料の「Revolucija」の場合は従量制で0.6クーナ/MB。

クロアチアは直行便がないこともあり、欧州の他の国とあわせて巡るという場合も多いだろう。クロアチアで長期滞在するのでなければ、欧州で広く使えるSIMを買うか、欧州周遊対応のWiFiルーターを借りていくのも手。

(WiFi)
ドゥブロヴニクは観光都市であるためほとんどのカフェやレストランがWiFiをそなえている。パスワードがいる場合も多いので、店員にネットワークとパスワード情報を尋ねてみよう。

4. 世界あの街この街: ドゥブロヴニク


4.世界あの街この街

このコーナーでは旅行先として人気の様々な都市を詳しく紹介していきます。

第55回 ドゥブロヴニク


Cheap Dubrovnik Tours (トリップアドバイザー提供)

クロアチア共和国・国旗

(画像:Wikipedia)


見どころと特徴

クロアチアは近年そのすばらしい景観が知られるようになりヨーロッパ観光の一大デスティネーションになりつつある。その中でも最大の観光都市が「アドリア海の真珠」と呼ばれるドゥブロヴニク。碧い海岸と中世の街並みがつくりだすコントラストは絵に描いたような絶景。

Pile Gate to Fort Lovrijenac   Google Maps
(画像:Google)


空港からシャトルバスでおよそ30分、旧市街の西にあるピレ門(Pile)に到着する。門の周辺はカフェやレストランでにぎやかな雰囲気。
旧市街は全長2kmほどの城壁に囲まれたコンパクトなエリアだが城壁は威圧的なほど高く、見どころも一日では見きれないほど多い。
ゲートをくぐると中世がそのまま現れたような旧市街の街並みが拡がっている。

Pile Gate (トリップアドバイザー提供)

ピレ門から東にのびるのはプラツァ通り。旧市街きっての目抜き通りで、両側にはカフェやレストラン、お土産屋が並んでおり、旅行者が夜遅くまで行き交う。夜はライトアップされ、石畳や壁面が幻想的な光景をつくりだす。




Placa Thoroughfare (Stradun) (トリップアドバイザー提供)

プラツァ通り沿い、ピレ門を抜けたすぐ左手にある建物はフランシスコ会修道院。院内にはヨーロッパで3番目に古いという薬局(創業1391年!)があり、現在でもスキンケア製品などを販売している(ちなみにヨーロッパ最古の薬局はイタリアのフィレンツェ)。

Franciscan Monastery (トリップアドバイザー提供)

旧市街でも絶好のフォトスポットは城壁の北西にあるミンチェタ要塞。城壁の最高地点となっており、赤い屋根が連なる旧市街全景を見渡せる。市街と海をカメラにおさめようと、一眼片手の観光客が列をなす。



Minceta Fortress (トリップアドバイザー提供)

通りをまっすぐ西に行くと城壁のつきあたり、ルジャ広場へ出る。総督邸や宮殿、ドミニコ会修道院といった古の建物群が並んでいる。総督邸は現在歴史博物館として公開されている。

Rector’s Palace (トリップアドバイザー提供)

城壁の東には旧港があり、碧い海に白い建物やフェリーが映える。ここから市街の丘陵をふりかえると青と緑のコントラストが美しい。このエリアにはレストランも多く、夕方には夕陽やシーフード目当ての客が集まる。


Rector’s Palace (トリップアドバイザー提供)

ドゥブロヴニクの美しい街並みは市民の努力のたまもの。わずか20年ほど前までは内戦が続いており、街は燃えてガレキとなった。旧市街にあるミュージアム、「ウォー・フォト・リミテッド」は往時の様子を写真で生々しくつたえている。

War Photo Limited (トリップアドバイザー提供)


旧市街の北にそびえるのはドゥブロヴニク観光のハイライトである標高412mのスルジ山。城壁の北側にロープウェイ乗り場があるが、時間に余裕があり健脚なら徒歩で登ってみてもいい。
山頂からはアドリア海と空、赤い旧市街を見下ろす絶景を堪能できる。

Mount Srdj Ropeway (トリップアドバイザー提供)

山頂には砦が築かれ、ドゥブロヴニク防御の要として街を見下ろしていたが先の内戦で破壊された。現在その砦跡は独立戦争博物館として公開されている。

Museum of Croatian War of Independence (トリップアドバイザー提供)

旧市街の城壁外、ピレ門近くの海に向かって砦がせりだしている。このロヴリイェナツ要塞は市街や丘陵を違った確度から眺めることのできる穴場スポット。

Lovrijenac (トリップアドバイザー提供)

ロクルム島は旧市街からほど近く、沖合700mに浮かぶ緑の島。日に何便もフェリーが運行している。
砦や修道院などの歴史的な建物からビーチ、植物園まで見どころが多く、ドゥブロヴニクからの気軽な旅先として人気が高い。

Island of Lokrum (トリップアドバイザー提供)

ドゥブロヴニク周辺には伝統的な生活を守る素朴な村々が拡がる。手工芸の店や青空市などもありお土産さがしにもぴったり。現地ツアーもいろいろと用意されているので、せっかくだからのんびりと巡ってみたい。

Cavtat Old Town (トリップアドバイザー提供)

一日歩いてホテルに戻ると窓の外には日暮れの絶景が拡がる。これからまた旧市街のプラツァ通りに戻ってもいい。

Dubrovnik Top Tours (トリップアドバイザー提供)



Lokanda Peskarija (トリップアドバイザー提供)

日本人にあまりなじみのないクロアチア料理。クロアチア産のワインやチーズ、オリーブオイルなどは欧州でも高く評価されており、実は隠れた美食の国である。
複雑な歴史を反映して食文化は地域によりかなり異なる。首都ザグレブなど内陸部はオーストリアやハンガリーの影響を受けており、カツレツやパプリカ煮込みなど肉料理が中心。
一方でドゥブロヴニクの属する沿岸はアドリア海の対岸イタリアの影響が強く新鮮なシーフードが名物で、オリーブオイルやチーズを多用する。パスタやリゾットなどのイタリア料理の他、シーフードのグリルやフライなどもレベルが高い。

ストリートフードとしてはピザや濃厚なチーズのサンドイッチ、ジェラートなどがおいしい。


Konoba Dubrava (トリップアドバイザー提供)


日本からの行き方

(空路)
現在日本とクロアチアを結ぶ直行便はない。
オフシーズンの場合はザグレブを経由して訪れるのが基本で、日本→経由地→ザグレブ→ドゥブロヴニクと最低2度の乗り継ぎを必要とする。
オンシーズン(3月~8月)の場合は周辺国から直接ドゥブロヴニク空港に向かう便があり、日本からはフィンエアーのヘルシンキ便、ルフトハンザのフランクフルト便、ブリティッシュ・エアウェイズのロンドン便、オーストリア航空のウィーン便などが利用しやすい。この時期はLCCの運航もあり、イージージェットやノルウェイジアンも乗り入れている。ただしドゥブロヴニクはリゾート。着替えやお土産など荷物が多めになりそうならレガシィキャリアを選んだ方が安くつくかもしれない。
価格はフィンエアー利用オンシーズンの場合で日本から往復12万円~。

(陸路・海路)
ザグレブからドゥブロヴニクまでの長距離バスが一日8便程度、所要は約10時間~12時間で、料金は200~250クーナ程度と安い。
なお、ザグレブまでの国際鉄道はシリア難民問題の影響を受けて運行予定が変わったりスケジュールが乱れたりする可能性がある。
オンシーズンまではアドリア海対岸のイタリア・バーリ(Bari)からドゥブロヴニク行きのフェリーが運行している。所要5時間半、料金は40~120ユーロ程度。

(パッケージツアー)
トルコ航空や中東系のエアラインを使った6日間のツアーでオフシーズン12万円~。オンシーズンはホテルレート高騰のため20万円~と高め。

(空港)
ドゥブロヴニク国際空港(DBV)は市街の南東方面23kmほどの場所にある。国際線の多くはオンシーズンの運行となり、オフシーズンは国内線(ザグレブ便)がほとんど。
空港からはシャトルバスが利用できる。空港-旧市街の西門(Pile)-グルージュ港(Gruz Harbour)間を結んでおり、旧市街まで約30分、40クーナ。
タクシーの場合は旧市街まで250クーナ程度。ホテルの多い西部の半島部分、ラパッド(Lapad)やバビン・クック(Babin Kuk)まで300クーナ程度。


地理と気候

クロアチアはイタリアから見てアドリア海を挟んだ東側。スロベニア、ハンガリー、セルビア、ボスニア・ヘルツェゴビナ、モンテネグロと国境を接する。
クロアチアの国土はアドリア海沿いと内陸に分かれた逆U字型になっており、ドゥブロヴニクは海岸沿い最南部。ボスニア・ヘルツェゴビナの都市ネウムによってクロアチア本土と分断されている。
クロアチアの内陸部は寒暖差の大きい大陸性気候だが、ドゥブロヴニクは対岸のイタリアと同じく地中海性気候に属する。7~8月の最高気温は30度程度、最低気温は20度程度となる。日射しは強いが湿度も低く快適。11~3月頃までは最高気温は15度程度、最低気温は7度程度と東京よりもおだやかだが、雨がちの日が多い。5~6月、9~10月頃は暑すぎず寒すぎず過ごしやすい。

旅行のベストシーズンは5~10月頃。特に7~8月はホテルの予約もすぐにうまってしまう。
11月~2月頃まではオフシーズンとなり、大波や強風でフェリーやロープウェイが欠航することも。さらにリゾートホテルやレストランは閉館するところもあるので注意。
2016年のイースターは3月26~28日で、この時期は周辺の村々ふくめ祝祭ムード。

Hotel Kazbek (トリップアドバイザー提供)

クロアチアと日本の時差はマイナス8時間。日本の正午が午前4時。サマータイムは3月最終日曜~10月最終日曜で、この間の時差はマイナス7時間。

Google マップ
(画像:Google提供)


言語と通貨

公用語はクロアチア語であるが、英語の通用度は高い。観光客が行くような場所ではほとんど英語で意思疎通ができる。
通貨はクーナ(HRK)。1ユーロ=17.5円(15年11月時点)。およそ20円弱と覚えておけばよい。

中欧・東欧は物価が安いのではと期待するかもしれないが、ドゥブロヴニクは観光地価格が横行している。特にハイシーズンはホテルが高い。
目安として、3つ星ランクのホテルがオフシーズンで6~7千円、オンシーズンではおよそ倍。タクシーは初乗り500円程度、市街からホテルに戻る10分程度の乗車で1000円程度。
外食は欧州の中ではやや安い方で、日本並みといえる。一品にワインをつけて1500円~3000円程度。カフェでコーヒーとピザをつまんで700円程度。チップはサービス料に含まれており不要なことが多い。

商品代金に対して北欧並みに高い25%の消費税がかかっている。一度に740クーナ以上の買い物で一部が還付される。購入店で免税書類をもらっておき、クロアチアまたはEU圏出国時に税関で手続きをする。

なお、隣接するネウムはボスニア・ヘルツェゴビナ領であり消費税が安い。長期滞在なら買い出しにネウムのスーパーを利用できる。

支払いはクレジットカードを基本とし、いくらかのユーロ現金を手元にもっていけば十分。ホテルやレストランではユーロがそのまま使える場合が多い。
ユーロは日本で両替していくのが鉄則。クロアチア・クーナは日本で両替することができないため、現地で両替屋に行くかクレジットカードのキャッシングを利用する。バスやタクシー、ローカルのお店はクーナ払い。

チップはルームサービスやポーターに1ユーロ程度、タクシーではおつり切り上げ程度で十分。

※クーナ紙幣

(画像:Wikipedia)


治安とビザ

クロアチアの治安は欧州の中でも良好とされるものの、ドゥブロヴニクの場合は観光地であることもあってスリや置き引き被害が多い。ただし他国に比べてひったくりや強盗などの荒っぽい事案は比較的少ない模様。
レストランやカフェはもちろん、バーでも屋内での喫煙は禁止されている。

なお、ドゥブロヴニクを含むクロアチア沿岸南部は旧紛争地域にあたり、地雷撤去活動が続いている。観光客が訪れるようなエリアでは心配ないが、郊外の未舗装地域や山野には立ち入らない方が無難。
また、シリア難民への対応に伴い、ハンガリーやセルビアなどとの国境付近では交通が制限される可能性がある。在クロアチア日本大使館のサイトなどで最新情報を入手しておいた方がよい。

3ヵ月以内の観光滞在はビザ不要。


市内交通

旧市街を散策するだけなら徒歩でOK。
地下鉄やトラムなどはないので、旅行者が使う足としてはバスかタクシーとなる。

(バス)
バスチケットはキオスクか乗車時に運転手から購入。バス料金は市内共通でキオスクの場合12クーナ、運転手から買う場合は15クーナ。バス停ごとのアナウンスはないので、乗車時に運転手に降車希望バス停をつたえるか、Googleマップなどを使って現在地を確認しておこう。

ドゥブロヴニク・カードはさまざまな特典がついたお得なカード。1日券、3日券、1週間券の3種類あり、1日券は公共交通期間無制限乗り放題、3日券は10回乗り放題、1週間券は20枚乗り放題。さらに城壁やギャラリーなど8つの施設がフリーパスとなり、レストランやカフェのディスカウントも付く。1日券が150クーナ、3日券が、1週間券が200クーナ、1週間券が250クーナ。

(タクシー)
メーター制。流しのタクシーは一般的ではなく、タクシースタンドから乗るか(旧市街西門前、グルージュ港、ラパッドのホテル地区などにある)、電話などで配車する。
初乗りが25クーナ、以降1kmごとに8クーナ。荷物1つにつき2クーナ。チップは基本不要で、おつりの切り上げ程度でOK。
グルージュ港から旧市街の西門まで乗った場合70クーナ。


ホテル


The Pucic Palace (トリップアドバイザー提供)

ホテルの多くはラパッド地区やバビン・クック地区に位置している。旧市街城壁内にあるホテルは数件しかなく、すぐに予約も埋まる。
ホテルの価格はシーズンによって値段の変動が激しい。たとえば3つ星ランクのホテルが3月なら7千円程度だが8月にはおよそ倍の1万6千円程度になる。中には3倍近くになるという宿もあるが、それでも予約がすぐに埋まってしまうことも。実際、11月~2月頃まではオフシーズンとなり、閉館しているホテルも多い。ホテル代を考えるならピークを外した4~6月、9~10月あたりがねらいめとなる。

ホステル、ゲストハウスならだいぶ手ごろになり、個室が4~7千円台、ドミトリーなら千円台もある。

個人宅の部屋貸しサービスAirbnbならホテルの半額以下で個室が探せる。レビューや立地をよく見てからにしよう。
なお、クロアチアに48時間以上滞在する場合は警察への滞在届が必要。警察署にある所定の用紙(「フォーム8a」)に記入し提出する。ホテルやホステルの場合は施設側が代行してくれるが、Airbnbの場合は手続きをホストが行ってくれるかどうか確認しておいた方がよい。


ネット・通信環境

(携帯・モバイル)
クロアチアの大手通信事業者はT-mobile(Hrvatski Telekom)、VIP、Tele2、MVNOのbonbonなど。

VIPのSIMはネット上の情報も豊富で、もっとも旅行者にとって手軽なオプションかもしれない。10日間有効のツーリストSIM(SIM card for your tablet)があり、使い放題で11ユーロ。通話可能なSIM(SIM card for your phone)の場合は通話が0.06ユーロ/分、データが0.01ユーロ/MB。データを1ギガ使えば10ユーロ。

bonbonもツーリストSIMを出している。T-Mobileの電波を使用しておりカバレッジもよい。2015年11月現在で5ギガ6ユーロという格安プランがある。

T-mobileの場合、契約義務のない(Bez ugovorne obveze)プランの「NAJBOLJA MOBILE NET」が2Gで月間89ク-ナ(最大21Mbit/s)。7ギガで159クーナ(最大75Mbit/s)。

Tele2の場合、1ギガのSmartプランが35クーナ、1.5ギガのTotalnaが49クーナ。手数料無料の「Revolucija」の場合は従量制で0.6クーナ/MB。

クロアチアは直行便がないこともあり、欧州の他の国とあわせて巡るという場合も多いだろう。クロアチアで長期滞在するのでなければ、欧州で広く使えるSIMを買うか、欧州周遊対応のWiFiルーターを借りていくのも手。

(WiFi)
ドゥブロヴニクは観光都市であるためほとんどのカフェやレストランがWiFiをそなえている。パスワードがいる場合も多いので、店員にネットワークとパスワード情報を尋ねてみよう。