2b. 連載:「旅のしりとりエッセイ」 吉田友和  2013/08/27号 Vol.005


2b.「旅のしりとりエッセイ」 吉田友和

Profile
プロフィール

吉田友和(よしだともかず)

1976年千葉県生まれ。出版社勤務を経て、2002年、初海外旅行にして夫婦で世界一周旅行を敢行。旅の過程を一冊にまとめた『世界一周デート』で、2005年に旅行作家としてデビュー。「週末海外」というライフスタイルを提唱。国内外を旅をしながら、執筆活動を続けている。その他、『スマートフォン時代のインテリジェント旅行術』(講談社)、『自分を探さない旅』(平凡社)、『LCCで行く! アジア新自由旅行』(幻冬舎)、『めざせプチ秘境!』(角川書店)、『3日もあれば海外旅行』(光文社)など著書多数。
旅行作家★吉田友和 Official Web

しりとりで旅する 第5回 吉田友和

り リピーター

 スタンプラリー的な旅にはそれほど魅力を感じないと前回書いた。今回の話は、その続きになる。特定の渡航先へ繰り返し訪れるような旅。いわゆるリピーターというやつである。スタンプラリーとは対局のスタイルと言えるだろうか。
 たとえば、僕の周りにもいるのがハワイ好きな人たち。日本人にとって定番のリゾート先である同地は、リピート率のとくに高い渡航先の一つらしい。ハワイばかり訪れる、というより、ハワイにしか行かないという強者も珍しくないと聞く。僕自身は友人の結婚式に参列する目的で訪れたきりだが、何度も行くからにはきっとハマる要素があるのだろう。
 さすがにそこしか行かないというレベルではないものの、僕にもお気に入りの土地はあって、どこかというとタイである。
 バンコクで日本を往復するチケットを購入し、行ったり来たりする日々を送ってきた。リピーター的な旅は、見知らぬ土地を旅するのとはまるで別物だ。ガイドブックなんて見ないし、地図もほぼ不要。バンコク市内を走るBTS(モノレールのような乗り物で主要な交通手段)の路線図は頭の中に入っていて、ワンタッチで改札を出入りできるSUICAのようなチャージ式カードも財布に入っている。いまさら観光らしき観光はほとんどしない。ぶらぶら歩いていて、「ああ、こんなところに新しいコンビニができたんだなあ」などと目を見張るような旅。地元を出歩く感覚にも似ている。もはや海外旅行ですらないのでは? という声には反論できない。
 近頃はヨーロッパの旅行記なども書いているが、自分のホームはあくまでもアジアだと自覚している。日本から近く、物価が安くて、季候もいいというスペック面を足繁く通う理由に結びつけがちだが、それらだけでは語れない、もっと本質的な魅力がアジア、とくにタイには詰まっていると思う。リピーター、た、タイ……なんと、またしてもしりとりで繋がった! というわけで、タイについては次回たっぷり書くとして、本来のキーワードをもう少し掘り下げてみたい。
 リピーターというテーマは、「一番は何か?」という問いにも近しいものがあると常々感じていた。何度も行くということは、すなわち自分にとって最高の場所と言っていいだろう。少なくとも、ほかと比較してとりわけ居心地が良いところのはずだ。あちこち行ったけど、一番好きなのはどこか、という話に通ずるものがある気がするのだ。
 これは壮大なテーマだと思う。ある意味、旅人は「一番」を見つけるために旅をしている部分は否めない。どこかを旅して感動を得て、それに飽き足らず再びまた旅へ繰り出す。ここよりも、もっといいところがあるのではないか――そんな好奇心が旅の原動力になっている。
スタンプラリー派にとっても無縁ではないだろう。行ったことのない場所を積極的に選ぶことで、結果、色んなところへ足を運ぶことになる。訪問国数が自然と増えていく中で、リピーターとなり得るお気に入りの旅先も見つかるかもしれない。
 僕自身、現時点ではタイがマイナンバーワンだが、未来永劫ずっとそうなのかは定かではない。旅を止めない限り、「一番」は将来的に更新される可能性があるからだ。だからこそ、旅はキリがないし、おもしろい。もっといい場所を、「一番」を超える素敵スポットを追い求め、旅はいつまでも続いていく。

※リピーター→次回は「た」がつく旅の話です!