2a. 連載:「タビノート」 下川裕治  2015/7/14号 Vol.051


2a. 連載:「タビノート」 下川裕治

月に何回か飛行機に乗る。最近はLCCの割合が増えている。そんな体験をメールマガジンの形でお届けする。

Profile
shimokawa

下川裕治(しもかわ・ゆうじ)

1954年、長野県松本市生まれ。旅行作家。新聞社勤務を経てフリーランスに。『12万円で世界を歩く』(朝日文庫)でデビュー。アジアと沖縄、旅に関する著書、編著多数。『南の島の甲子園 八重山商工の夏』(双葉社)で2006年度ミズノスポーツライター賞最優秀賞受賞。近著に『沖縄にとろける』『バンコク迷走』(ともに双葉文庫)、『沖縄通い婚』(編著・徳間文庫)、『香田証生さんはなぜ殺されたか』(新潮社)、『5万4千円でアジア大横断』(新潮文庫)、『週末アジアに行ってきます』(講談社文庫)、『日本を降りる若者たち』(講談社現代新書)がある。

たそがれ色のオデッセイ BY 下川裕治

第3ターミナルは周回遅れ?

 早く使ってみたい……とは思っていた。成田空港の第3ターミナルである。LCC専用ターミナルとして、今年の4月にオープンしていた。
 LCC専用ターミナルといっても、成田空港に乗り入れているLCCのすべてが、この第3ターミナルを使うようになったわけではない。いま、成田空港に乗り入れているLCCは十数社。そのうち、第3ターミナルに移ったのは、ジェットスター・ジャパン、バニラエア、春秋航空日本、ジェットスター、チェジュ航空の5社である。
 クアラルンプールではじめて、LCC専用ターミナルというものを体験したときは新鮮だった。格納庫のような簡素なターミナルで、乗客は飛行機まで歩いた。クアラルンプールは南国だから、ときおり、激しいスコールに見舞われる。それ用に傘が置いてあった。
 とにかく経費を節減すること──。それをアピールするかのようなターミナルだったのだ。その後、シンガポール空港にもLCC専用ターミナルができた。
 しかしそこまでだった。アジアでLCCはその路線を広げていったが、香港、仁川、スワンナプームといった利用客の多い空港は、それまでの施設を使った。香港にはバス便専用ターミナルができたが、LCC専用ではない。 スワンナプームはLCCの一部がドーンムアンに移ったが、古い空港を使っただけのことだ。そうこうしているうちに、シンガポールのLCC専用ターミナルが閉鎖された。LCCは既存のターミナルを使うという流れがアジアではできていた。LCCが特別なものではなくなってきたからだ。
 しかし日本は独自の道を歩む。那覇に続いて成田にもLCC専用ターミナルができた。関西の第2ターミナルもピーチ・アビエーション専用の感がある。
 周回遅れ? そんな気がしてしかたなかった。LCCへの依存度は東南アジアに比べれば低い日本。それなのにLCC専用ターミナルなのである。
 ポイントは離発着にかかる空港利用料である。これが圧倒的に安ければ、LCC各社はこぞって第3ターミナルに移っていく。その金額を運賃に反映すれば、ひとつの競争力にもなる。今後、大幅な値下げはあるのかもしれないが、第3ターミナル利用で航空会社が負担する額は、第1ターミナルや第2ターミナルと大差はない。
 金額的な魅力がなかったら、残るのは第3ターミナルの利便性ということになってくる。なかなか厳しい船出なのだ。
 はたして本当に便利になったのだろうか。そのあたりは次回に。

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第3ターミナルではジェットスターが存在感を発揮している